「今通っている病院のスタッフと気が合わない」「会社や家からもっと近い病院に通いたい」――。
通院しているとこのような思いを抱いたことがある方もいるのではないでしょうか。
本記事では病院を変えたい方に向けて、紹介状なしの転院のデメリットや転院する際のおすすめの伝え方、病院を変える際の注意点などを詳しく解説します。転院を検討されている方はぜひご一読ください。
目次
紹介状なしで転院できる?

紹介状なしでの転院は不可能ではありませんが、おすすめはしません。
それは、紹介状なしに転院をすると多くの場合患者さんが不利益を被ってしまう可能性があるからです。ここでは転院のデメリットについて解説していきましょう。
デメリット1.一から検査を行う必要がある
紹介状なしの転院の最大のデメリットは、治療内容が引き継がれない点です。
紹介状の正式名称は「診療情報提供書」ですが、その名が示すとおり、医師が他の医療機関の医師に患者さんを紹介する際に、その患者さんの基本情報や症状、治療状況や投薬状況などを記載する書類です。
紹介状がなければ転院先の医師はその患者さんの情報を知ることができません。そのため、それまでの治療内容は引き継がれず、一から検査を行う必要があります。
デメリット2.保険金の支給が打ち切られる可能性がある
大病院の混雑緩和などの目的として導入された「令和4年度診療報酬改定」では、2022年(令和4)年10月から初診の場合は7,000円以上(歯科は5,000円以上)、再診の場合は3,000円以上(歯科は1,900円以上)が「特別料金」として徴収されています(※1) 。
なお、この特別料金は、紹介状なしで大病院での受診をなるべく控え、かかりつけ医の活用を促すための措置です。(※2025年3月時点の情報)
なお、初診料や再診料は保険適用ですが、特別料金は保険適用外です。全額自己負担になる点にも注意してください。
デメリット3.治療が遅れる可能性がある
紹介状なしで転院する場合、転院前の病院で行った治療内容は引き継がれず、一から検査が必要です。そのため、治療が遅れてしまう可能性がある点も頭に入れておかなければなりません。
治療が遅れた結果、病状によっては悪化する場合があるでしょう。
デメリット4.受け入れてもらえない可能性がある
患者さんが受け入れられることを前提に独断で手続きを進めてしまうと、病状や転院先の状況次第では転院を断られてどこの病院でも治療してもらえないということも考えられます。そのため、転院先の病院から「受け入れ可能です」といった回答をもらってから転院の手続きを進めましょう。
ただし、医師同士のつながりを考えたうえで、現在の担当医にも状況をきちんと伝え、転院の意向を丁寧に相談するなど、円滑に進めるための配慮が必要です。
病院を変えたいときのおすすめの言い方

紹介状を書いてもらうためには、「転院したい」という旨を医師に伝える必要があります。とはいえ、「面と向かっては伝えづらい」という方もいることでしょう。
そこで、ここでは病院を変えたいときにどう伝えればよいか迷ったときの参考になる考え方をご紹介します。
家から近くの病院に移りたい
「家から近くの病院に移りたい」といった理由は、医師にとっても納得でき、患者さんにとっても比較的伝えやすいでしょう。実際に、転居や通勤・通学の都合で通院先を変えたいと申し出る方は少なくありません。
かかりつけ医に診てもらいたい
基本的に日本では患者さんがかかりつけ医を自由に決められます。そのため、いつもとは違う病院でかかりつけ医を決めるという例もあるでしょう。そして、違う病院を試した結果「やっぱりいつもの病院のほうが良い」と感じる患者さんも一定数います。
医師にとっても一度診ただけで患者さんの病状を全て把握することは難しいため、「かかりつけ医に診てもらいたい」という言い方は比較的受け入れやすいでしょう。
セカンドオピニオン=転院ではない
治療の最中に他の医師の意見も聞いてみたいと思う方もいることでしょう。
他の医師の意見も聞いたうえでどのように治療していくか、どこで治療していくかを決めていく方法としてセカンドオピニオンというものがあります。ここで注意していただきたいのが、セカンドオピニオン=転院ではないという点です。
セカンドオピニオンは直訳すれば「第二の意見」です。病院を変えることを前提としたものではなく、あくまでほかの医師の見解を聞くものです。セカンドオピニオンを受けたからと言って、必ずしもその病院に転院することにはならない点には注意してください。
病院を変えるときの注意点

ここでは、病院を変えるときの注意点を解説します。知っていないと思わぬ不利益を被ってしまう可能性があるため、必ず確認しましょう。
転院は繰り返さない
まずは、転院は何度も繰り返さないようにしましょう。
紹介状に病状や治療内容が書かれていたとしても転院を繰り返すことで、転院先の医師はその患者さんの症状や治療の経過を完全に把握するのが難しくなります。そのため、適切なケアを受けにくくなるでしょう。
転院の回数は最小限に留め、治療の経過や病状を熟知している医師のもと、治療にあたりましょう。それが回復への一番の近道です。
転院先が決まったらすぐ保険会社に連絡をする
転院先が決まったらすぐ保険会社に連絡しましょう。保険会社に連絡をせず、大きな病院から小さな病院に移ってしまうと症状固定(※今以上の治療効果が期待できなくなった状態)と判断されてしまう可能性があるからです。
症状固定と判断された場合、継続した治療費の受け取りができない場合があります。
保険会社には、「紹介状を書いてもらっての転院であること」「転院先の病院の名前と連絡先」の2点を必ず伝えましょう。
転院をするなら十分な準備を
病院を転院したいと思う方も少なくありませんが、これまでお世話になった医師に対し本音を伝えることをためらう方もいることでしょう。とはいえ、担当医に一言も伝えず、紹介状も書いてもらっていない状態での転院はおすすめできません。
紹介状なしの転院には、治療が継続されない、特別料金を支払う必要がある、治療が遅れ病状がより深刻になる可能性がある、必ずしも受け入れられるとは限らないといったデメリットがあります。そのため。転院の希望がある場合は、必ずその旨を担当医に伝え、紹介状を書いてもらうなど所定の手続きをしたうえで転院するようにしましょう。
(※1)政府広報オンライン|紹介状なしで大病院を受診すると特別の料金がかかります。診療所や病院を適切に使い分けましょう。