皮膚にできものが発生し、不安になった経験はないでしょうか。このまま放置しても問題ないか不安に思う方がいるかもしれません。
また、正しいセルフチェック方法がわからず、自身でなかなか判断できない方もいることでしょう。
本記事では、皮膚がんのセルフチェック方法や病気の種類ごとの症状を解説します。皮膚がんの主な症状に該当する場合は、放置することなく速やかに皮膚科を受診し、医師に診断してもらいましょう。
目次
皮膚がんにおけるセルフチェックの重要性

皮膚がんは早期発見し、適切な治療を受けることで完治できるといわれていますが、放置すると徐々にがん細胞が増える可能性が高くなります。また、切除する範囲が広がることで、場合によっては転移につながり、手術や治療が困難になることもあります。
皮膚がんの治療で最も大切なことは、皮膚のできものを発見した際に速やかに皮膚科を受診することです。
一方で、なかには皮膚に異常を感じても「仕事で忙しい」「時間がない」といった理由で医療機関を受診しない方もいます。皮膚がんを早期発見し治療するためにも、皮膚に異変を感じた場合は、皮膚科を受診する時間を設けましょう 。
皮膚がんの詳しい概要や原因などを詳しく知りたい方は、以下の記事を参照してください。
皮膚がんのセルフチェックをするときに確認すべき症状
皮膚がんのセルフチェックをしたい場合は、以下の項目で該当する症状がないかをチェックしてください。該当するものがある場合は、なるべく早いタイミングで皮膚科を受診しましょう。
- 硬いできものがある
- いびつな形のできものがある
- サイズが大きめなできものがある
- 徐々に大きくなるできものがある
- 黒いできものがある
- 目の周り・鼻の周りにできものがある
- なかなか治らない傷や腫瘍がある
- 爪に黒色・茶色のしみがついている
- やけどなどの傷の跡に新しい傷(ケロイド)がある
皮膚がんの初期症状や詳しい検査方法を知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
皮膚がんのセルフチェック方法

皮膚がんをセルフチェックする際は、鏡に体全体を映した状態で細かく観察することが大切です。首や頭の後ろ側をチェックする際は、鏡を上手に活用し向きを調整しながらチェックします。髪の分け目や頭皮、背中やお尻なども確認しておきましょう。
また、肘から先や手のひら、足の指の間・足の裏なども確認しておくことが重要です。それと同時に自身のリンパ節(わきの下や太ももの付け根)にしこりの有無をチェックしておきましょう 。
皮膚がんにおけるセルフチェックをするときのポイント

皮膚がんのセルフチェックをするときには、押さえておくべきポイントがあります。以下の種類ごとの皮膚がんの特徴を知り、早期発見につなげましょう。
基底細胞がん
基底細胞がんは、表皮の一番下にある基底細胞や毛包(毛根を包み込む組織)を構成する細胞から生じる隆起性の腫瘍です。主な発生要因としては、紫外線や放射線などが関係すると考えられています 。
基底細胞がんは顔に発生することが多く、鼻の周辺やまぶた、頬に見られます。腫瘍は黒色調の点で1mmから2mm程度の大きさが存在することもあるため、注意深くチェックしましょう(※1) 。
また、基底細胞がんのなかには、あまり隆起せずに中央部分がくぼみ、そこから潰瘍を形成することがあるため、特に血がにじんでいる場合は注意が必要です。
良性腫瘍と見分けるのが困難な場合があるため、皮膚生検(皮膚を一部切り取って診断する検査)を実施し、診断する必要があります 。
有棘細胞がん
有棘(ゆうきょく)細胞がんとは、表皮の層である有棘層の細胞が悪性化して生じる腫瘍です。主な発生要因として、やけどの跡や紫外線、放射線や化学物質、ウイルスなどが挙げられます。
紅色もしくは通常の肌の色に変化し、まだらに盛り上がっている、もしくはしこりになっていることが特徴です。また、皮膚表面がかさつくことで硬くなる、ただれや潰瘍になることもあります。症状が進行すると、腫瘍から悪臭や体液が生じるでしょう 。
治療が遅れるにつれて顔面に巨大な腫瘍ができる、傷が治りにくくなるといった可能性があるため、異変を感じる方はなるべく早く皮膚科を受診 してください。
メラノーマ(悪性黒色腫)
メラノーマ(悪性黒色腫)とは、メラノサイト(皮膚の色と関係するメラニン色素を産生する細胞)ががん化する腫瘍です。メラノーマの多くは、褐色もしくは黒色のしみ(色素斑)やこぶとして皮膚の表面に現れます。
一般的なメラノーマは、形が左右非対称であり、ギザギザした輪郭が特徴です。大きさは6mm以上あり、色や形、硬さが変化していきます(※2) 。日本人の場合は、メラノーマを発症する約半数の方が手足に生じます。小さい病変の場合は、良性腫瘍との違いを見分けるのが困難です。
とはいえ、症状が進行すると転移するリスクがあるため、早期発見が求められます 。
乳房外パジェット病
乳房外パジェット病は、アポクリン腺(においのする汗を生成する部位)の細胞が変化して生じると考えられています。皮膚がんの一種であり、肛門の周りや外陰部、脇の下に生じた数年間は表皮内で大きく広がるのが特徴です。特に70歳代から80歳代の高齢者に多い病気であり、60歳代以下の方が発症する場合はリンパ節転移を起こしやすいとされています (※3) 。
乳房外パジェット病を発症すると、かゆみを伴うだけでなく、患部が盛り上がる、またはただれるということもあるでしょう。また、湿疹や真菌症と間違われることがあり、外用薬を使用しても改善しない場合は、速やかに適切な治療を受けることが必要です 。
日光角化症
日光角化症は、日光に当たる耳や頭、頬や手の甲などに生じる腫瘍です。主な発生要因としては、紫外線が挙げられます。高齢者に多く発生し、発症当初は皮膚の浅い場所に留まるものの、進行すると深い層まで増殖します。
日光角化症を発症すると、数mmから1cmを超える薄い赤色もしくは褐色の腫瘍が現れるのが特徴です(※3)。 腫瘍はただれる、または突起状に変化するといった場合があるため、触れると指に引っかかる場合があります 。
ボーエン病
ボーエン病は、湿疹と間違われやすい腫瘍です。一般的には日光に当たらない胸や腹、背中などに発生します。形が整っていないまだらになっているものや、軽く盛り上がったものなどが現れるのが特徴です。紅色でかさぶたがついていることもあるため、一部にただれることがあります 。
ボーエン病のサイズは、米粒大のものもあれば、手のひらぐらいものもあり、さまざまです。他の皮膚病と見分けるのは困難であり、進行するとリンパ節転移や内臓転移などを起こし、命に関わるケースもあるでしょう 。
セルフチェックで気になったら皮膚科を受診しよう

皮膚がんは、早期発見の段階で適切な治療を受けることによって、高い確率で完治するといわれています。一方で、放置するとがん細胞が増えるため、場合によっては転移につながり、手術や治療が困難になり命に関わることがあるでしょう。
皮膚がんの早期発見のためには、日頃からセルフチェックをしておくことが大切です。今まで見たことのないような色や形をしたできものがある場合は、皮膚科を受診し、医師に適切な診断してもらいましょう。
(※1)国立がん研究センター|基底細胞がん
(※2)国立研究開発法人国立がん研究センター|メラノーマ(悪性黒色腫)について
(※3)国立がん研究センター希少がんセンター|乳房外パジェット病(にゅうぼうがいぱじぇっとびょう)