今回は、三大治療の捉え方や知っておきたいこと、検査や用語など治療においてよく耳にすることをご説明します。
目次
がんの原因
がんは、毎日5000個から10000個生まれる遺伝子の中に異常な遺伝子が発生しその蓄積によって生じ、私たちの体では髪の毛以外はがんになると言われています。
がんの誘発因子として代表的なものは、発がん物質、放射線、紫外線、慢性の炎症が挙げられます。
がん治療までの流れ
1.自覚症状、検診などから「がん疑い」あり
↓
2.病理医による病理検査(細胞をスライスして顕微鏡)
↓
3.がん確定
↓
4.だいたいPET、CTで全身を撮る(転移の有無を確認)
①転移あり→抗がん剤
②転移なし→手術
およそ半数が5年以内に再発
再発なし=完治
がんの種類や状況により多少異なりますが、おおまかにこのような流れになります。
がんの検査
スクリーニング検査
まだ何も症状がない段階でがんの可能性があるか調べる検査です。代表的なものにがん検診があります。
細胞診・組織診
病理医という専門医が行う詳細な検査です。
細胞診は細胞一個をそのまま見る検査で、組織診は生検ともよばれ、がんの確定診断を下すための検査であり疑いのある細胞を固まりごとに直接針やメスで採取します。
画像診断
がんの広がりや性質を調べるために画像による検査を基に行う診断です。
画像に映し出す検査をまとめて画像検査といい、超音波検査、X線検査(レントゲン)、CT、MRI、PET(ペット)などがあります。
なお、CT、MRIの違いは撮影方法であり、CTは放射線、MRIは磁力を使います。
MRIは水分の多い臓器の撮影が得意で、一方、CTは空気の多い臓器は苦手としますので、骨や肺を撮影するときはCTを用いるなど、用途により使いわけます。
腫瘍マーカー
がんがあると、血中や尿中の特定の物質が変動することがあります。
このような物質を腫瘍マーカーと言い、がん確定のための検査の一つとして行います。
がんがあれば必ず増えるわけではなく、またがんがなくても産出されることがあるため、この検査だけで確定診断は出ません。病理医が行う確定診断の補助的な検査という位置づけです。
グレード
がんの「悪性度」といわれるものです。
がんを構成している細胞がどの程度、分化しているかを表しています。
分化とは細胞の成長スピードのことで、スピードが速いほど質が悪いがんと言えます。
グレードは1から4まであり、4が最も悪い状態です。
がんの治療
ガイドライン
がん治療における教科書のようなものです。
全てのがんには臓器ごとにガイドラインがあり、各学会が作成しています。
ガイドラインには最新の科学的根拠(エビデンス)に基づいた治療方法が掲載されています。
医師はガイドラインを参考に治療方針を決定します。患者の状態に合わせて治療をアレンジすることもあります。
現在がん治療の現場では、ガイドライン順守が当然の約束事ですので、基本的には病院や医師ごとに治療が異なるということはありません。
全身治療と局所治療
がん治療の三大治療と呼ばれるものは「手術」「放射線」「抗がん剤」です。
この3種のうち、いずれか、または複数を組み合わせて治療を行います。
ガイドラインにはこれらの治療の順番、方法、組み合わせなどが記載されています。
手術と放射線と抗がん剤はその性質ごとにわけることができます。
手術と放射線→「局所治療」
抗がん剤→「全身治療」
局所治療は特定の一カ所に対する治療、全身治療は体全体に影響を及ぼす治療です。
手術(外科療法)
がんを物理的に切除する治療法です。
初回の治療時においては、多くのがんで「手術ができるならまず手術」というのがきまりごとです。
手術は局所治療ですので、基本的にがんが一カ所にとどまっている場合に有効な治療法です。ゆえに手術は多くの場合、がんを完全に切除し完治を見込めるときに行うことが多いといえます。
がんの部位と同時に周辺のリンパも切除することもあり、切除したリンパは転移の有無の診断に使用します。
放射線
放射線も、ある一カ所のがんに対する局所治療です。
放射線は、X線などを体外から細胞に照射することによってがん細胞を死滅させたり、細胞分裂の能力をなくしたりすることができます。
手術と異なる点は、臓器を摘出する必要がないところです。
臓器をもとのまま温存できるため比較的負担が少なく、高齢者や合併疾患がある人、体力がない人でも放射線によって治療できることがあります。
しかし、副作用がないわけではありません。放射線を照射する場所に副作用が出ることもしばしばです。
放射線は痛みの緩和や症状を和らげる目的で行うこともあります。
抗がん剤
薬物治療ともよばれ、言葉通り薬での治療です。
飲み薬、点滴、貼り薬などの形態があります。
抗がん剤は体の中に薬をいれることによって全身的に効果を及ぼすことを期待される治療ですので、転移したがんやあらかじめ転移を予防する目的で使用します。
抗がん剤が体内をめぐるときにがん以外の細胞も傷つけることから、副作用が出やすく患者の負担が大きいため、抗がん剤の使用は慎重に行われます。
抗がん剤という言葉は「化学療法」「分子標的薬」、「ホルモン剤」といった意味が含まれます。
がんの種類や性質によって使用する抗がん剤は決まっていて、それらを単独、あるいは複数を併用してゆきます。
抗がん剤のデメリットとして、使用できるものが限られるということが挙げられます。
セカンドオピニオン
担当医とは別の医師に治療方針や診断の意見を聞くことです。
セカンドオピニオンを受けることで別の医師からアドバイスを受けることができるため、納得、安心して治療に臨むことができるところがメリットです。
セカンドオピニオンを受けるには紹介状や検査データが必要になります。
セカンドオピニオンは転院とは異なり、現在の担当医のところで治療を受けることを前提に別の医師、別の病院に意見を聞くことになります。
しかし、別の意見を聞き現在の担当医と話し合った結果転院することになる場合もあります。
再発と転移
再発
再発とは初回の治療時に発見することができなかった小さながんが、数か月後から数年後に再燃することをいいます。
再発がみつかる場所は初回の治療時と同じ臓器内(周辺)の場合もあれば別の箇所のこともあります。前者を「局所再発」、後者を「遠隔転移」をいいます。
再発の場合、がんの根治を目指して治療することもありますが、困難な場合はがんの進行を抑えたり、がんによる辛い症状を和らげることが治療の目標になります。
再発の治療も初回と同様に手術、放射線、抗がん剤のなかからがんの状態に合わせて選択しますが、緩和ケアなど積極的な治療を行わないこともあります。
転移
がんが発生した場所から他の場所へ移ること転移といいます。
転移は、肺、肝臓、脳、骨などさまざまな臓器に起こります。
発生した場所を原発巣と呼び、例えば大腸から肺に転移したときには大腸がんの肺転移といういい方をし、肺にあるがんは大腸がんの性質を有しています。
がんは、リンパ管や血管の中に入り込み血流やリンパ液の流れに乗って転移します。そのためリンパ管や血管、あるいは全身にがん細胞が潜んでいることを前提とした治療を行う必要があるため、全身に効果が見込める抗がん剤治療が標準的な治療となります。
腹膜播種
転移の一種で、播種(はしゅ)とは種が播かれるように体の中に1㎜程度の小さいがんがパラパラと広がることをいいます。
腹膜播種は腹膜にこのようながんの広がりが見られる状態を言い、散らばったがん細胞が徐々に進行するとお腹全体に広がり、炎症を起こすことで腹膜を破り腹水が発生したり、発熱、嘔吐などの症状が見られます。
程度にもよりますが、腹膜播種が広がっているということはかなりがんが進行していることを意味します。
おわりに
がん治療において状況を理解するのは大切です。
担当医が言った言葉が理解できないとき、ご自身のがんの状況がどのようなものなのか知りたいときにお役立てください。