腹水や胸水というのは日常生活で馴染みのない言葉です。
しかし、がん治療においては珍しくないことで、だからでしょうか、主治医が詳しく説明してくれないという声も聞きます。
そこで今回は腹水や胸水についての基本的なことをご説明してゆきたいと思います。治療にお役立てください。
目次
腹水・胸水とは
腹水・胸水というのは何らかの原因により、肺などを包んでいる「胸腔」や、腹部の内臓が入っている「腹腔」の中に過剰に水が溜まってしまった状態です。
そもそも、胸腔や腹腔には通常でも少量の腹水や胸水が存在しています。
胸水には、肺が呼吸によって伸縮しやすいようにする役割があり、腹水は腸をスムーズに動かすために存在しています。
それぞれ潤滑油のような働きをしていて、体にとって大切な役割を果たしているのです。
しかし、がんなどが原因で、正常なコントロールができなくなったとき異常な量の水が溜まってしまう状態を引き起こします。
腹水や胸水の原因となるがん
がんが原因の腹水や胸水の場合、おおむね「横隔膜より上」で発生したがんは胸水が溜まりやすく「横隔膜から下」で発生したがんは腹水が溜まりやすいと言われています。
胸水の原因:肺、中皮腫、乳がんなど
腹水の原因:肝臓、すい臓、卵巣がんなど
また、それ自体では胸水や腹水を引き起こさないがんでも、他の臓器に転移し、それが原因で腹水や胸水が発生することがあります。
腹水・胸水の溜まる原因
がんによる腹水や胸水の原因は以下のことが挙げられます。
①がんが腹膜(内臓を包む膜)や胸膜(肺を包む膜)に飛び散り炎症を起こすことによって穴があき、そこから水分やたんぱく質が漏れ出しお腹や胸に水が溜まる。
②抗がん剤の副作用などでアルブミンが低下すると血管の水分が外に漏れだし腹水や胸水として溜まる。
腹水・胸水は苦しい?
腹水・胸水ともに大量の水が溜まるのは異常な状態ですので、それに伴い辛い症状を引き起こします。
例えば、胸水が多くなれば肺が膨らむスペースが減りますので、呼吸が苦しくなる・胸に痛みが生じる・胸が重く苦しい・咳が出る・体重減少などの症状が起こります。
腹水の場合、お腹が張る感じが強くなり胃や腸を圧迫するため食欲が落ちてしまいます。大腸がんや卵巣がんなど骨盤内で発生したがんは足のリンパの流れが悪くなるので足に浮腫が起こりやすく、足がパンパンに腫れて足を動かすたびに重いなどの症状が出ます。
水が少量(1リットル程度)だと本人も気づかない程度ですが、がんが進行し、大量に溜まりだすと、最終的に臨月の妊婦さんのようにお腹が大きく膨らんだ状態になります。
重症になると、腹水・胸水ともに抜いても抜いても際限なく水が溜まってしまうことが普通であり、そうなると上記に加えて、夜眠れない・食事が摂れないといった状態が加速し、それらが原因で治療をあきらめる人もいるほど辛いと言われています。
大量の腹水や胸水は、がんの進行や末期状態を示していることが多く、亡くなるサインと捉えられる傾向もあります。
腹水・胸水の治療方法
排水という点では以下の方法があります
- 単純に水を抜く
- 利尿剤
- CART(腹水ろ過濃縮再静注療法)で水を抜く
針やチューブで、単純に水を抜くという方法があります。これは抜いた水を検査することでがん細胞の有無などを確認するときにも用いられます。
次に利尿剤により血液中の水分を尿として排泄し、水分のコントロールをすることがあります。
腹水や胸水の中にはアルブミンなどたんぱく質が存在しているので抜きすぎると栄養失調になります。ですので、医師はなるべく抜きたくないと考えるのですが、抜かないと患者さんは苦しいという問題が生じます。
そこで腹水の場合、CARTという機械を用いることで、排水後、水に漂うがん細胞など不要なものを取り除いて栄養分だけ取り出し体に戻すという処置もあります。
適切な医療行為を受けて腹水・胸水の症状を和らげましょう
腹水や胸水についておわかりいただけたと思います。
腹水や胸水が出ると辛い症状が現れますが、適切な医療行為を受けることで改善されますので、焦らず医師の指示に従って治療を行ってください。