X線検査、CT検査、MRI検査、PET検査などなど、がんを発見するための検査は多岐にわたります。そんな中、最近、注目を浴びている検査のひとつが、マイクロCTC検査です。
本記事では、マイクロCTC検査の概要と、従来の検査方法と比較した際の利点について解説します。がんの新しい検査について詳しく知りたい方はぜひご覧ください。
目次
マイクロCTC検査とは?

マイクロCTC検査の最大の特徴は、1回の検査はわずか5分という短時間であることです(※1)。一度の採血で身体の中にがん細胞があるかどうかが推測できます。
CT検査、MRI検査、PET検査など従来のがん検査と比べて、身体や時間の負担を大幅に減らしながら、全身のがんのリスクを発見できる検査方法です。
CTCとは血中循環がん細胞のこと
マイクロCTC検査の「CTC」は、「Circulating tumor cells」の頭文字を取った略語であり、日本語では「血中循環がん細胞」と訳されます。
「血中循環がん細胞」とは、文字通り、がん細胞が血管内に浸潤し、血液中を循環している状態の細胞のことです。この細胞を検出できれば、体内のどこかにがんが潜んでいる可能性を探る指標となります。
悪性度の高いがん細胞を捉えられる
マイクロCTC検査の利点として、他の検査と比べるとがんの検出精度が高いケースもある点が挙げられます。CT検査やMRI検査の場合、短時間で広範囲の臓器を鮮明な画像として捉えられますが、全てのがんを検出できるわけではありません。初期の膵臓がんなどといった一部のがんは、CT検査やMRI検査では検出が難しいとされています。
一方、マイクロCTC検査は血中のがん細胞の個数を示すことができ、特異度(がんに罹患していない正確性を示す数値)は94.45%に上るという報告もあります(※2025年6月時点)。
従来の検査とは何が違う?

マイクロCTC検査と、MRI検査やCT検査といった従来のがん検査とでは、何がどのように違うのでしょうか。ここでは、検査方法や時間、がんの検出能力の3つのポイントに絞って、従来の検査との違いを見ていきましょう。
検査方法
従来のがん検査方法は、対象となる部位によって大きく異なります。
例えば、乳がん検査ではマンモグラフィー検査やエコー検査、胃がん検査では内視鏡検査、肝臓がんではエコー検査、CT検査、MRI検査が行われるのが一般的です。胃がん検査で乳がんは見つかることはほとんどなく、その逆も同じことがいえます。
一方、マイクロCTC検査はあらゆるがんが検出できるため、検査方法は同じです。10㏄の血液を採取するだけで、血液中に流れ出たがん細胞(CTC)を検出できるといわれています。
時間
従来のがん検査とマイクロCTC検査とでは検査時間も異なります。
従来のPET検査やCT検査での所要時間の目安は3時間ほどであり(※1)、場合によっては1泊2日などのケースもあります(※2)。全身のがんのリスクを把握するためには、複数の部位にわたる検査が必要です。
一方、マイクロCTCの検査方法は採血のみです。採血は1回あたり5分程度で終了するのが一般的です。数日から2週間後に検査結果が通知されます。忙しくてまとまった検査時間が取れない方や、全身のがんのリスクを一度に把握したい方は、マイクロCTC検査がおすすめです。
がんの検出能力
PET検査やCT検査は短い時間で広範囲を検査可能な検査方法ですが、全てのがんを検出できるわけではありません。部位によってはがんの検出が困難なケースもあります。特に、胃の裏側にある膵臓は、撮影が困難な場所に位置するため、膵臓がんの早期発見は難しいといわれています。
マイクロCTC検査では、転移や浸潤する可能性の高い悪性度の高いがんの個数を検出することが可能とされています。
ただし、一部の上皮性のがん細胞などは検出できない可能性がある点には注意が必要です。全種類のがんで血中循環がん細胞(CTC)が血液中を流れるわけではないからです。
また、早期がんではCTC陽性率が低く感度不足が指摘されているケースもあります。そのため、がんの早期発見には画像診断や従来の腫瘍マーカーと組み合わせた総合評価が必要です。
マイクロCTC検査の費用
マイクロCTC検査を受けたい方にとって、気になるのが費用のことでしょう。従来のがん検査と比較してマイクロCTC検査費用は高いというイメージを抱く方もいるかもしれませんが、実際のところ、従来の検査よりマイクロCTC検査の費用は比較的安価です。
マイクロCTC検査の費用相場は、19万8,000円(税込)ほど(※施設や検査方法で費用が異なります)とされています。一方、PET検査やCT検査の費用相場は約28万円とされているため、マイクロCTC検査は従来の検査より費用がかからない検査といえるでしょう。
(※2025年6月25日時点の情報)
マイクロCTC検査の流れ

マイクロCTC検査はどのような流れで受け、検査結果の報告はどのように行われるのでしょうか。ここでは、マイクロCTC検査の流れを検査日までと、結果報告日の2つに分けて解説します。
検査日まで
マイクロCTC検査は全国の医療機関やクリニックで受けることができますが、全ての医療機関が対応しているわけではありません。希望する医療機関でマイクロCTC検査を実施しているかを確認しましょう。
受診する医療機関が決まったら、その医療機関に直接連絡をし、申し込みましょう。検査当日は、予約時間までに医療機関に足を運び、受付を済ませます。
施術方法などについて詳しい説明を受けた後、血液10ccを採取します。採血自体にかかる時間は5分ほどです。検査終了後、会計となります。
結果報告日
マイクロCTC検査結果は、1週間から2週間ほどで通知されるのが一般的です。医療機関から検査結果に関する連絡が入るため、都合のつく日時を予約します。念のため保険証やお薬手帳などは忘れずに持参しましょう。
検査結果は医師から直接告げられます。今後の治療方法が詳しく説明されるため、少しでも疑問点や要望があれば、遠慮なく伝えましょう。
マイクロCTC検査でがんのリスクを調べてみよう

マイクロCTC検査は、1回の検査あたりわずか5分、10ccの血液を採取するだけで、全身のがんのリスクを把握できる検査方法といわれています。
従来のがん検査では数時間かかることが一般的で、検査内容によっては1泊以上の入院をする必要がありました。そのため、仕事が忙しいなどといったスケジュール上の都合でがん検査を受けることをためらっていた方もいることでしょう。そうした方でも時間の負担を少なくがんのリスクを知ることができるのが、マイクロCTC検査の大きなメリットといえるでしょう。
現在のところ、がんから確実に命を守る方法は確立されていません。しかし、発見が早ければ早いほど、がんで命を落とすリスクを下げられるのは事実です。費用的にも従来の検査よりも費用の負担が少ないマイクロCTC検査を有効活用して、がんのリスクを調べてみてはいかがでしょうか。がんの早期発見によって、より適切なケアが受けられる可能性が高まります。
(※1)国立国府台医療センター|PET/CT 検査紹介状(診療情報提供書)
(※2)日本赤十字社医療センター(渋谷区)|人間ドックについて