ステージ3のがんと診断されたら。生存率はどれくらい?治療法や進行を防ぐためにできることは?

ステージ3のがんと診断されたら。生存率はどれくらい?治療法や進行を防ぐためにできることは?

がんは進行度合い(ステージ)によって、予後や治療難易度が大きく異なります。どのような種類のがんであっても初期段階であれば、多くの患者さんは命を落とす可能性は低いでしょう。

しかし、ステージ3、ステージ4とがんの進行が進めば進むほど、命を落としてしまうリスクは高まってしまいます。

それでは、ステージ3のがんとはどれくらい進行したがんのことを指すのでしょうか。そして、生存率はどれくらいなのでしょうか。ステージ3のがんの治療法やステージ4への進行を防ぐためにできることとともに詳しく見ていきましょう。

受付中がんの臨床試験、研究・治験広告のご案内

製薬企業や医療機関、研究グループから依頼を受け、治験審査委員会の審議で承認された臨床試験、治験を掲載しています。

がんワクチン療法がんワクチン療法

目次

ステージ3のがんとは?

がんの進行度合いはステージ0~4の5段階で表されます。まずは、ステージ3のがんの特徴を見ていきましょう。

がんのステージ分類について

がんのステージは、0期、1期、2期、3期、4期の5段階で表され、数字が大きくなればなるほど進行したがんであることを示しています。

がんのステージは、TNMの3つの要素で決定されています(※1)

Tとは腫瘍(Tumor)のことで、腫瘍そのものの状態を表した指標です。

Nは節(Node)で、リンパ節への広がり具合を表しています。

Mは転移(Metastasis)のことで、がんがもともと発生した臓器や部位から転移しているかどうかを表しています。

がんのステージ3の特徴

がんのステージ分類の中で、ステージ4に次いで進行している状態がステージ3のがんです。

がんが原発した臓器や部位だけではなく周囲の臓器に浸潤していたり、リンパ節へ転移していたりといった状態のがんがステージ3のがんを指します。

もともと発生した場所から遠く離れた臓器や部位への遠隔転移はないものの、手術ができる限界であるケースも少なくありません。「末期がん=ステージ4」というイメージを持つ方も多いでしょうが、ステージ3の段階でも余命を宣告されることもあります。

気になるステージ3の生存率

ステージ3のがんは、5つあるステージのうち2番目に進行が進んだがんです。そのため、ステージ0やステージ1、2と比べると生存率は下がります。それでは、実際にステージ3のがんの生存率はどれくらいなのでしょうか。

5年生存率が高いがん

ステージ3のがんの5年生存率と一口に言っても、がんの種類によって大きく異なります。

ステージ3という進行が進んだ状態でも5年生存率が80%を超えているがんもあります(※2)

国立がん研究センターが2021年に公表した調査(全がん協加盟がん専門診療施設の5年生存率、10年生存率データ)によると、ステージ3のがんのうち5年生存率が最も高いがんは前立腺がんの100%でした(※2)。次いで、甲状腺がん(99.8%)、大腸がん(85.8%)の順となっています(※2)

5年生存率が低いがん

5年相対生存率が80%を超えるステージ3のがんがある一方で、5年生存率が10%を切っているがんもあります。

前出の国立がん研究センターの調査によると、全てのがんのうち、ステージ3の5年生存率が最も低かったのは膵臓がんの6.9%でした(※2)

ステージ3と診断されたら?考えられる治療法について

がんの標準治療は、手術療法、化学療法、放射線療法の3つですが、ステージ3のがんであってもそれは変わりません。

手術療法、化学療法、放射線療法のいずれかが選択されることが一般的です。それぞれの治療法の特徴について、以下から詳しく見ていきましょう。

手術療法について

手術療法とは、外科的手術によってがんの病巣を切除する治療方法です。

早期のがんであれば、手術療法でがんを全て取り切ることができますが、ステージ3などの進行したがんでも手術が可能であれば手術療法が行われるのが一般的です。

がんを取り除くことができる点が手術療法の最大のメリットです。一方、体にメスを入れるため、患者さんへの負担が大きい点がデメリットとして挙げられます。また、切除する部位によっては臓器を失ってしまう可能性もあります。

化学療法について

化学療法とは、主に抗がん剤を体内に投与してがん細胞を死滅させることを目的とした治療法です。

注射や点滴で投与された抗がん剤は血管を通して全身に運ばれます。そのため、手術療法では取り切れないような、転移したがんでも治療することが可能です。一方で、抗がん剤は患者さんによっては強い副作用が発生してしまう可能性がある点はデメリットと言えます。

放射線治療について

放射線治療とは、がんの病変部に放射線を照射してがんを死滅させる治療法です。

手術療法と異なり、患者さんの体にメスを入れることはないため、患者さんの身体的負担は軽く済み、体の機能を維持できます。また、切除ができないがんや、手術が不可能なほど大きくなってしまったがんに対して、放射線治療を行い、がんを小さくした状態で手術する治療法も行われています。

ステージ3から4への進行を防ぐためにできること

ステージ3からステージ4へと進行してしまうと、命を落としてしまうリスクも高まります。

前出の国立がん研究センターの調査によると、同じ胃がんでもステージ3の5年相対生存率は46.9 %ですが、ステージ4に進むと6.2%にまで落ちてしまいます(※2)。では、ステージ4への進行を防ぐためにできることはあるのでしょうか。

がんの症状としっかり向き合う

がんの治療は、がんの症状を患者さん自身がしっかりと知ることからスタートします。

がんの種類によって進行度も5年生存率も異なります。また、最適な治療方法も一人ひとり異なるでしょう。

がん治療における主役はあくまで患者さん自身です。治療法を決める際も「先生にお任せします」という態度ではなく、わからないことは積極的に医師に聞き、自分の考えをどんどん伝えていきましょう。

医師は患者さんの状態や要望を聞き、診療ガイドラインに沿って治療方針を提示することはできますが、治療方針を最終的に決めるのはあくまで患者さん自身なのです。

納得できる治療法を選択する

患者さんが納得できる治療法を選択するためには、その患者さんがこれからどのように生活していきたいかを医師に伝える必要があります。

例えば、入院はせずに仕事をできる限り続けながら治療したい患者さんもいれば、入院して安心できる環境で治療したいという患者さんもいるでしょう。また、治療にあたって、食事制限はしたくないという患者さんも、できればお酒も楽しみたいという患者さんもいます。

患者さんがこれからどういった生き方をしたいかを医師に伝えたうえで、納得できる治療法を選択しましょう。

家族でがんを受け止める

ステージ3からステージ4への進行を確実に止められる方法は現在のところ確立されていません。ステージ4へ進行してしまった患者さんは、今後のことで苦悩してしまうでしょう。患者さんの家族は、できるだけ孤独を感じさせないようにしましょう。「末期がんである」という患者さんのショックを受け止め、少しでも和らげる場所を作ることは家族の大きな役割です。

ステージ3のがんと診断されたら【まとめ】

ステージ3のがんは、5つあるステージのうち、2番目に進行したがんのことです。ステージ3のがんと告知されたら、多くの患者さんは強いショックを受けることでしょう。中には、積極的に治療していく気持ちになれない患者さんもいると思います。とはいえ、ステージ3のがんと一口に言っても、5年生存率が80%を超えるような予後の良いがんも存在します。(※2)

ステージ3のがんと告知されたからと言って、決して諦めずに、医師からよく話を聞いたうえで患者さん自身が納得できる治療法を選択しましょう。

(※1)国立がん研究センター|がんの病期のことを知る
(※2)国立がん研究センター|表1.全がん協部位別臨床病期別5年生存率
参照日:2023年11月

井林 雄太

医師|日本内科学会認定内科医・日本内分泌内科専門医

福岡ハートネット病院勤務。国立大学医学部卒。日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。
「一般社団法人 正しい医療知識を広める会」所属。総合内科/内分泌代謝/糖尿病の臨床に加え栄養学/アンチエイジング学が専門。
臨床業務をこなしつつ、大手医学出版社の専門書執筆の傍ら、企業コンサルもこなす。「正しい医療知識を広める」医師ライターとして多数の記事作成・監修を行っている。 

プロフィール詳細

受付中がんの臨床試験、研究・治験広告のご案内

製薬企業や医療機関、研究グループから依頼を受け、治験審査委員会の審議で承認された臨床試験、治験を掲載しています。

がんワクチン療法 がんワクチン療法

各がんの解説