転移性肝がんになるとどうなる?余命や治療方法を解説

転移性肝がんになるとどうなる?余命や治療方法を解説

がんとは、全身のさまざまな臓器や器官に転移・再発する可能性がある病気です。「がんが転移した」と聞くと、多くの方が「末期の状態ではないか」と心配になるでしょう。

なお、原発巣にとどまっているがんより、転移したがんの方が治療は難しく、命を落とすリスクが高いことが一般的です。

もともとのがんが肝臓に転移したものを「転移性肝がん」と呼びますが、転移性肝がんとはどのような症状が現れ、どのような治療方法が取られるのでしょうか。また、「転移性肝がんの予後を知りたい」という方もいることでしょう。

この記事では、転移性肝がんについて詳しく解説します。

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目次

転移性肝がんとは

転移性肝がんとは、肝臓以外にできたがんが血液の流れに乗って肝臓に転移してきたものです。さまざまながんが肝臓に転移する可能性がありますが、原発巣で特に多いのが大腸がん、胃がん、膵臓(すいぞう)がん、肺がんです。

また、血液のがんである白血病やリンパ系のがんであるリンパ腫が肝臓に転移することもあります。同じタイミングで発見されることもありますが、最初にできたがんの治療後や治療中に転移性肝がんが見つかることも少なくありません。

転移性肝がんの余命

「がんが転移している」と診断された場合、多くの方は「いつまで生きられるのか」などと心配になるのではないでしょうか。原発巣にとどまっているがんより、転移したがんの方が治療は難しく命を落とすリスクが高いことは事実です。

それでは、転移性肝がんの場合、余命はどれくらいなのでしょうか。

転移性肝がんで最も多い、大腸がんからの転移の場合、転移性肝がんの治療後5年の時点での生存率は30~40%程度と言われています。

転移性肝がんの症状

肝臓は病気になっても症状が現れにくいことから「沈黙の臓器」とも呼ばれています。

症状が出にくい点では転移性肝がんでも同様です。病状がある程度進行し、がんが大きくなるまでは症状が現れないのが一般的であり、初期段階での症状はほとんどありません。ただし、中には初期から体重減少や食欲不振が見られる患者さんもいます。

がんが増殖し、大きくなってくると全身倦怠感や痛みなどの症状が現れます。

がんがさらに進行すると、全身の皮膚や眼が黄色くなる黄疸や腹痛などの症状が出現することもあります。

転移性肝がんの診断

体重の減少や、肝臓の腫れが見られる患者さんや、肝臓に転移しやすいがんの存在が判明している患者さんは、転移性肝臓がんが疑われることがあります。その場合の診断方法は、画像検査と肝生検の2種類です。

ここでは、それぞれどのような検査なのかを見ていきましょう。

肝臓の画像検査

医師が転移性肝がんを疑った場合、まず行うのは肝臓の画像検査です。CT検査あるいはMRI検査を行って、肝臓がどの程度機能しているかを診断します。がんの検出には通常、超音波検査が有効ですが、肝臓のCT検査やMRI検査では、より正確な結果が得られます。

ただし、CT検査やMRI検査で異常な結果が得られた場合でも、肝臓がん以外のさまざまな病気が原因で異常が発生した可能性があります。そのため、画像検査だけでがんの診断を確定することは一般的にはありません。

肝生検

がんの診断の確定や、治療方法を決定するために行うのが肝生検です。肝生検とは、針で肝臓の組織を採取して、病変を顕微鏡で観察する検査です。

多くの場合、皮膚から針を刺す方式で組織を採取する「経皮的肝生検」が行われますが、カテーテルを首の静脈に挿入して肝静脈に到達させる「経静脈的肝生検」と呼ばれる方法もあります。針を刺し入れる際の痛みは軽微で、個人差はありますが我慢できないほどの痛みは非常にまれです。

転移性肝がんの治療方法

がんの標準治療は、「化学療法」「放射線療法」「手術」の3つですが、転移性肝がんの場合もこれらの治療法のいずれか、あるいは組み合わせて治療が行われます。それぞれの治療方法の概要について、以下から見ていきましょう。

化学療法

化学療法とは、抗がん剤などの薬剤を使って、がん細胞を小さくして、延命を図るための治療です。以前は、この療法で治癒することはないと言われていましたが、「分子標的治療薬」と呼ばれる新たな抗がん剤の登場など、医学の進歩によって治療効果が高まってきています。抗がん剤が効いたために、当初は手術不可能とされていた場合でも手術が可能という場合もあるのです。また、手術後の再発防止を目的として化学療法が行われることも少なくありません。

放射線療法

放射線療法とは、X線やガンマ線、粒子線などをがん細胞に照射し、がん細胞の成長や分裂を阻止する治療方法を指します。従来、放射線治療で肝臓がんを治癒させることは難しいと考えられていましたが、医学・医療の発展によって、根治的な治療も可能です。

症例数はまだ少ないですが、放射線治療によって肝細胞がんでは2年で90%程度のがんの進行を抑えるという研究報告も出ています(※1)

手術

転移性肝がんを手術によって切除する治療方法です。手術でがんを全て取り除くことができれば、がんが治癒する可能性があります。そのため、手術は転移性肝がんにおける第一選択肢となるのです。また、がんの個数が多かったり、大きすぎたりして手術で取り除くことが難しい場合でも、先に化学療法を行い、がん細胞を小さくした状態で手術が行われることもあります。

また、転移性肝がんが肝臓の複数の場所に散らばっている場合、手術で全て取り切ってしまうと生じるのが肝不全のリスクです。一般的に、生命を維持するには、肝臓の30%以上を残しておく必要があるとされています。こういった場合でも、肝臓の切除を二段階に分ける「二期的肝切除」を行うことで、手術が可能になるケースもあります。

症状が現れない転移性肝がん、早期発見には定期的な検診を

転移性肝がんは、他の臓器から肝臓へ転移したがんを指し、通常は発見したときにはすでにステージ4となります(※2)

ステージ4のがんと聞くと「末期がんで助からない」とイメージする方も多く、ステージが進むほど治療は困難になり、命を落とすリスクが高まることは事実です。

しかし、新たな抗がん剤や新たな治療方法の確立など、医学の進歩によって以前までは根治が不可能だった転移性肝がんも根治が可能になるケースもあります。また、同じステージ4であっても、発見が早期であればあるほど、治療効果は高くなります。肝臓は「沈黙の臓器」と言われるほど、病気があっても症状がなかなか出現しません。

それは、転移性肝がんであっても同様です。

初期段階の転移性肝がんではほとんど症状は現れないため、自覚症状だけで転移性肝がんを見つけられる可能性は極めて低いでしょう。

そのため、少しでも早く転移性肝がんを見つけるためには、定期的な検査が欠かせません。特に転移性肝がんになりやすいがんに罹患した方は、できるだけこまめに検診を心がけ、早めに転移性肝がんを発見しましょう。

(※1)国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構|肝がん
(※2)兵庫医科大学病院|転移性肝がん(外科治療)
参照日:2024年7月

井林 雄太

医師|日本内科学会認定内科医・日本内分泌内科専門医

福岡ハートネット病院勤務。国立大学医学部卒。日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。
「一般社団法人 正しい医療知識を広める会」所属。総合内科/内分泌代謝/糖尿病の臨床に加え栄養学/アンチエイジング学が専門。
臨床業務をこなしつつ、大手医学出版社の専門書執筆の傍ら、企業コンサルもこなす。「正しい医療知識を広める」医師ライターとして多数の記事作成・監修を行っている。 

プロフィール詳細

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