早期発見のためにがん検診を受けよう!種類と検査内容を詳しく解説

早期発見のためにがん検診を受けよう!種類と検査内容を詳しく解説

2人に1人は罹患するとされるがん。かつては治療が難しい病気のひとつでしたが、現在では、早期発見・早期治療によって治るがんも増えています。

しかし、がんは早期段階では目立った症状が現れないことも多く、発見されたときにはすでに進行していた…というケースも少なくありません。そこで大切なのが「がん検診」です。がん検診はがんの早期発見に役立ち、がんの生命予後を改善することがわかっています。

そこで今回は、がん検診の種類と検査の内容、受けるべき年齢などについて詳しく解説します。

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目次

がん検診はなぜ必要なの?異常があったときの流れは?

がん検診は、がんの早期発見を目的に行われる検査のことです。医学的にさまざまな研究や調査が行われ、科学的根拠に基づく検査の種類や対象年齢が定められています。まずは、がん検診の必要性と異常を指摘されたときの流れについて詳しくみてみましょう。

がんの早期発見が可能になる

がんはかつて「不治の病」と思われがちだった病気ですが、現在では効果的な治療が多く開発されています。そのため、がんを克服して社会復帰している患者さんも少なくありません。しかし、がんを克服できる確率は、早期段階で発見できるほど高いのが現状です。

がんは、早期段階では自覚できる症状は少なく、何らかの症状を自覚して検査をしたらすでに進行しているというケースが多々あります。一方、がん検診は自覚症状がない早期段階でもがんを発見する確率が高いというメリットがあります。また、生活習慣病など、がん以外の病気の発見につながることも少なくありません。

がん検診で異常が発見されたときはどうすればいいの?

がん検診で行われる検査は、がんの確定診断をするための検査ではありません。簡易的に多くの人に行うことができる検査であり、あくまで「がんの可能性があるか否か」を評価する検査です。そのため、がん検診で異常を指摘されたとしても、がんであると確定するわけではないのです。

一方で、がん検診で異常を指摘されるということは、がんの可能性があるということ。精密検査を受けてがんか否かをしっかり調べる必要があります。しかし、がん検診の精密検査受診率は100%ではありません。具体的には、平成30年のデータでは胃がん検診では約8割、大腸がん検診では約7割となっています。

精密検査を受けなければ、せっかくがん検診を受けても意味がありません。異常を指摘された場合は、必ず早い段階で精密検査を受けるようにしましょう。

対策型がん検診とは?種類と検査内容

がん検診にはさまざまな種類がありますが、一般的に広く行われるのは「対策型がん検診」です。

対策型がん検診とは、健康増進法に基づいて市区町村が住民を対象に行うがん検診のことで、公的な補助が出るため、対象年齢の方は無料または少額で検査を受けることができます。

現在、対策型がん検診として行われるのは次の5つです。それぞれの特徴についてみてみましょう。

胃がん検診

50歳以上を対象に、2年に1回行われます。検査内容は、問診・胃X線検査または胃内視鏡検査です。ただし、胃X線検査を行う場合は40歳以上を対象に年に一回受検することができます。

胃がんのリスクとされるヘリコバクターピロリ菌感染の有無を調べる自治体もありますが、現状ではヘリコバクターピロリ菌感染の有無を調べることで胃がんによる死亡率を低減するという科学的な根拠はないため、積極的な推奨はされていません。

大腸がん検診

40歳以上を対象に、年に一回行われます。検査内容は、問診・便潜血検査です。

大腸がんは自覚症状が出にくいがんのひとつですが、便潜血検査では病変部から出た微小な出血が便に混ざっているか調べることができるため、早期発見に役立つと考えられています。

便潜血検査が陽性になった場合は、大腸内視鏡検査での精密検査が必要になります。しかし、便潜血検査では胃がんなどからの出血にも陽性反応が出るため、ほかの病気の有無を調べる必要があることも少なくありません。

肺がん検診

40歳以上を対象に、年に一回行われます。検査内容は、問診・肺X線検査ですが、50歳以上で喫煙指数(一日の喫煙本数×喫煙年数)が600以上の方は、痰を顕微鏡で詳しく調べる「喀痰細胞診」という検査を追加で受ける必要があります。

現在のところ、より鮮明に肺の状態を描出することができるCT検査による検診が実施されるケースは少なく、肺X線検査で異常が発見された場合にCT検査や気管支鏡検査などの精密検査が必要となります。

乳がん検診

40歳以上を対象に、2年に一回行われます。検査内容は、問診・マンモグラフィ検査です。

マンモグラフィ検査は、乳房の病変を描出するためのX線検査ですが、乳腺の密度が高いとがんの病変がはっきり描出されないこともあります。そのため、近年ではより詳細な描出が可能とされる超音波検査を合わせた検診を行う自治体が増えています。また、医師が乳房にしこりがあるか調べるために、触診が行われるケースも少なくありません。

子宮頸がん

20歳以上を対象に、2年に一回行われます。検査内容は、問診・視診・内診・細胞診とされており、異常が発見された場合は子宮頸部を詳細に観察するためのコルポスコープ検査を行います。

子宮頸がんは、若い女性が発症しやすいがんであり、受診率が低いがん検診のひとつとされています。受診率の全国平均は50%未満であり、若い女性のがん死を防ぐためにも普及が進められています。

任意型がん検診とは?種類と検査内容

「任意型がん検診」とは、人間ドックなどによって個人個人ががんの早期発見を目指して行う検査のことです。基本的に検査は、自己負担になるため対策型がん検診よりも高額となりますが、近年では職場の福利厚生として行われるケースも増えています。

任意型がん検診には多くの種類がありますが、代表的なものをみてみましょう。

前立腺がん検診

前立腺がんを発症すると、血液中に「PSA」と呼ばれる特殊なタンパク質が多く検出されるようになります。この特徴を生かして、血液検査でPSA値を調べるのが前立腺がん検診です。

前立腺がんは、近年発症率が急増しており、現在では男性が罹患するがんの第一位となっています。50歳頃から発症率が上がるため、独自に検診を行う自治体も増えているのが現状です。

子宮体がん検診

若い女性に多い子宮頸がんに対し、子宮体がんは中年以降の女性に多いがんです。一般的には、子宮内膜の細胞を採取して顕微鏡で詳しく調べる「子宮内膜細胞診」が行われます。

子宮体がんは、月経異常がある方、妊娠や出産経験がない方、肥満、生活習慣病がある方の発症リスクが高いことがわかっています。特に閉経してから発症しやすいがんであるため、リスクに該当する方は閉経したら定期的に検査を受けるとよいでしょう。

そのほかのがん検診

そのほかにも、がん検診の種類は多岐に渡ります。具体的には、超音波検査を用いた甲状腺がん検診や卵巣がん検診、視診などによる口腔がん検診や皮膚がん検診などが挙げられます。これらのがんは必ずしも発症率が高いわけではありませんが、気になる症状があるときや、近い親族に発症者がいる場合は受診を検討しましょう。

また、近年では全身の検査をすることで身体のどこかにがんがないか調べる検査を行うことも少なくありません。具体的には、次のような検査が挙げられます。

腫瘍マーカー検査とは?

発症すると身体のなかで特殊なタンパク質などの物質の産生を促すがんがあり、それらの物質を「腫瘍マーカー」と呼びます。前立腺がん検診も「PSA」という腫瘍マーカーを活用した検査です。

だたし、腫瘍マーカーはがんを発症していなくても高値になることがあり、逆にがんを発症していても高値にならないこともあります。あくまでほかのがん検診の補助的な位置づけと考えるのがよいでしょう。

PET検査とは?

「PET検査」とは、特殊な放射性物質を利用した検査のことです。

がんの細胞は、ブドウ糖を多く取り込んで増大していきます。そのため、放射性フッ素を付加したブドウ糖を体内に注射し、ブドウ糖が多く取り込まれる部位を画像化することで全身のどの部位にがんがあるのか調べることができます。

小さな病変でも発見することができるため非常に優れた検査とされていますが、検査費用が高額になること、胃がんなど特定のがんの発見には適していないことなどがデメリットがあります。

【まとめ】がん検診ついて

がん検診は、がんの早期発見を目的とした検査です。がんは、早期段階で発見できるほど治る確率が高くなりますが、早期段階では自覚症状がないことが多いため、がん検診は命を守るためにも大切な検査といえます。

現在、日本では健康増進法に基づく5つの対策型がん検診と、各自が自由に受診できる任意型がん検診があります。対策型がん検診は公費負担となるため、無料または低額で受診することが可能です。一方、任意型がん検診は、基本的には自費での受診となります。

対策型がん検診は、対象年齢や頻度などが決まっているため、該当する年齢になったら定められた頻度に従って受診するようにしましょう。また、対策型がん検診ではカバーできない検診を希望の場合は、人間ドックなどでご自身に合った検査を受けてください。

1.公益財団法人 日本対がん協会「がん検診の種類」
https://www.jcancer.jp/about_cancer_and_checkup/%E6%A4%9C%E8%A8%BA%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6/%E3%81%8C%E3%82%93%E6%A4%9C%E8%A8%BA%E3%81%AE%E7%A8%AE%E9%A1%9E
2.厚生労働省「がん検診」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000059490.html
3.がん情報サービス「がん検診受診率(国民生活基礎調査による推計値)」
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/screening/screening.html
4.厚生労働省「がん検診の種類について」
https://www.mhlw.go.jp/content/10901000/000462461.pdf
5.がん情報サービス「PET検査とは」
https://ganjoho.jp/public/dia_tre/inspection/pet.html
参照日:2022年02月

成田 亜希子

医師|内科医・日本内科学会・日本感染症学会・日本公衆衛生学会・日本健康教育学会

2011年医師免許取得。一般内科医として幅広い疾患の患者様の診療を行っている。行政機関に勤務経験もあり、がん対策にも携わってきた。

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