乳がんの初期症状と検査方法、検診に掛かる費用とは

乳がん検診は他の検診と比較してがんの発見が多い検診です。しかし、日本での検診受診率は半分以下とまだまだ低い現状です。その理由の1つとして、乳がん検診ではどんな検査をするのかわからない、といった不安もあるかもしれません。ここでは、乳がん検診はどんな検査なのか、そして検診で乳がんが疑われたとき、その後どのように診断を進めていくのかについて紹介します。

目次

乳がんの主な初期症状

乳がんを疑う症状は以下のようなものがあります。ただしこれらの症状は人によって初期から見られることもあれば、進行するまで現れないものもあり、症状だけで初期かどうかは判断することができません。

・乳房にしこりを触れる:乳房には乳腺があり、がんでなくてもしこりのように触れることがあります。そのためには普段から乳房のセルフチェックを行い、変化に気づけるようにしておくことが重要です。乳がんのしこりは他のしこりと比べて硬く、左右に押してもあまり動かないことが多いです。また、押さえてもあまり痛みはありません。
・乳頭からの分泌物:乳頭から血液の混じった分泌物が出てくることもあります。
・乳房のくびれ:乳房の一部分がへこんだり、凹凸が見られることもあります。
・乳房の赤み:乳房の一部が赤くなったり、皮膚が荒れたり、かさぶたができることもあります。
・乳房の痛み:継続的な痛みが現れることもあります。

乳がんの自己診断チェック

乳がんの早期発見には触診によるセルフチェックが重要ですが、そのほかに自分が乳がんになりやすい体質かどうかということを知っておくことも重要です。以下に記載した多くの項目に当てはまる場合は、早期の検診や病院受診をお勧めします。

血縁者に乳がんや卵巣がんになった人が2人以上いる
乳房を触るとしこりのようなものがある
乳頭から血液の混じった分泌物がある
乳房の皮膚にへこみや凸凹がある
閉経前でBMI30以上ある
11歳以前に初潮を迎えた
閉経が55歳以降だった
出産経験がない
ピルなど女性ホルモンを補う治療を行っている
1年以上乳がん検診を受けていない

検診と検査項目

検診や人間ドックによってどの検査を用いるかが異なります。希望する検査がある場合は事前にチェックしておきましょう。また、女性医師や女性技師による検査を希望する場合には、事前に質問・相談してみましょう。

視触診

医師が乳房を観察し、手で触れてしこりの有無や乳頭からの分泌物を確認します。

マンモグラフィ

マンモグラフィは乳房専用のレントゲン装置を用いて行なう検査です。通常の胸のレントゲンでも撮影範囲に乳房は含まれますが、撮影の方法が違うため、胸部レントゲンでは乳がんの診断はできません。
マンモグラフィは上半身裸になり、片方ずつ乳房を板と板で挟み込んで撮影します。人によっては乳房をはさまれることにより多少痛みを伴います。
マンモグラフィは主に石灰化を伴う病変を検出しますが、乳腺が発達した人では病変を見つけにくいこともあります。また、石灰化は乳がん以外でも出現することがあるので、マンモグラフィで精密検査が必要と診断されても乳がんと確定したわけではありません。
マンモグラフィは毎回同じ方法で撮影するため、乳房の経時的な変化や比較をすることも可能です。
排卵後から生理直前は乳房が硬くなり、痛みが増しやすいので、生理が始まって1週間くらいの時期に受けるのが良いでしょう。
統計学的に乳がんによる死亡率を下げることができると証明された検査です。

超音波検査

乳房にゼリーを塗り、超音波の機械をあてて病変の有無を調べます。狭い範囲しか観察できないため機械を乳房全体に滑らせて観察します。検査の結果をすべて記録することができないため、以前との比較は難しくなります。また異常かどうかの判断は操作する医師や技師が行なうため、検査を行う人の技術に依存する検査です。放射線を使わない検査なので、妊娠中でも検査が可能であり、検査による痛みもなく、何度も繰り返し行うことができる検査です。

乳がんに関連した腫瘍マーカー

乳がんの腫瘍マーカーは病気の発見のためというよりは、治療の効果判定や再発のチェックなど、病気の経過を見るために行われる検査です。疑陽性(乳がんではないのに、数字が高くなること)もあるため、腫瘍マーカーのみで乳がんだと確定診断することはありません。
乳がんに関連して用いられるのはCEA、CA15-3、BCA225、NCC-ST-439などがありますが、CEAとCA15-3が一般的に用いられています。

厚生労働省の指針では乳がん検診は40歳以上を対象に2年に1回、問診とマンモグラフィが勧められています。市町村の検診では画像検査としてはマンモグラフィだけが行われていますが、マンモグラフィでは見つけられない乳がんもあります。超音波検査はそれだけでは乳がんの死亡率を改善できるという証明はされていませんが、マンモグラフィだけを受けた人とマンモグラフィと超音波検査、両方を行った人を比較した場合、がんの発見率は2つの検査を受けた人の方で1.5倍高かったという報告もあります。

乳がんの疑いから確定診断まで

ファーストステップ(乳がんの可能性があるかどうかを見る検査)

・マンモグラフィ
・乳房超音波検査
・視触診
・乳房専用PET(マンモPET・PEM)
人間ドックのオプションとして行われている検査です。放射性物質を注射して画像検査を行います。この検査は細胞の活動が活発かどうかを調べてがんの可能性を判定します。理論上はしこりとして触れることができない4mmの小さな病変から見つけることができます。また、検査の特性としてマンモグラフィで病変を見つけにくい乳腺の発達した人や豊胸手術後の人でも問題がないことや、生理の影響を受けない検査です。

セカンドステップ(乳がんかどうか確定診断する検査)

細胞診・組織診

病変の一部を採り、顕微鏡でがん細胞の有無を判断する検査です。採取の方法は細い針を刺す方法やメスで切り取る方法があります。採取できる病変が大きければ大きいほど確実な診断につながり、場合によってはがんの種類まで判断することができます。

サードステップ(乳がんのひろがり具合を見る検査)

転移の可能性がある場合は、各種の画像検査を行って、病変のひろがりをチェックします。

単純/造影CT検査

放射線を用いた検査です。転移の疑われる部位を撮影します。血管や病変を見やすくするために血管から造影剤を注入する造影CTが行われることもあります。

単純/造影MRI

磁気を用いた検査です。検査部位は状況により頭部、胸部、腹部などに対して行います。場合によっては血管を見やすくするために造影剤を用いた造影MRIが行われることもあります。

CTとMRIは見やすい臓器が異なるので、同じ部位にCTとMRI両方の検査を行うこともあります。

PET検査

がん細胞が取り込みやすい物質に放射線物質をくっつけた検査薬を体内に注射して、その分布を調べる検査です。全身を一度に調べることができます。糖尿病で血糖値のコントロールが不安定な人はこの検査で正しい結果が出ないことがあります。

骨シンチグラフィ

骨は乳がんの転移先として多い臓器です。放射性物質を注射し、骨への取り込み具合を撮影して、骨への転移の有無を調べます。

検診にかかる平均費用

セカンドステップ以降の検査は通常保険診療で受けることができます。

健康診断・人間ドックで受ける検査(相場)

・マンモグラフィ 5000円
・乳房超音波検査(エコー検査) 4000円
・乳房専用PET 40000円

保険適応で受ける検査(目安)

・マンモグラフィ 3割負担 4000円、1割負担 1000円
・乳房超音波検査 3割負担 3000円、1割負担 1000円
・単純CT検査(1部位) 3割負担 4000円、1割負担 1500円
・造影CT検査(1部位) 3割負担 9000円、1割負担 3000円
・単純MRI検査(1部位) 3割負担 9000円、1割負担 3000円
・造影MRI検査(1部位) 3割負担 16000円、1割負担 5000円
・細胞診・組織診 3割負担 3300~8000円、1割負担 1100~2600円
・PET検査 3割負担 30000円、1割負担 10000円
・骨シンチグラフィ 3割負担 17000円、1割負担 6000円

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参照日:2020年11月

春田 萌

日本内科学会総合内科専門医・日本消化器内視鏡学会専門医