警察の科学捜査で、髪の毛一本や微量な唾液から犯人を特定するなどと言ったことが行われますが、これを可能にしているのが遺伝子検査です。
がん医療の分野でも遺伝子検査は研究がすすめられ、今後大きく治療に貢献することが期待されています。今回のテーマはそんな「遺伝子検査」についてです。
目次
がん遺伝子検査とは
がんの遺伝子検査とは、血液やがん細胞の一部を用いて、下記1~3の項目を判断するための検査です。
- がんの有無
- 治療法の決定
- 治療の効果を決定、予測
体を設計図とも言われるDNAを調べ、その異常を発見することでこれらのことがより早期に、また確実にわかるようになるというメリットがあります。
それぞれの内容をさらに詳しく見ていきましょう。
がんの有無を判定する
がんは体内で遺伝子変異が起こることによって引き起こされます。各種血液がんの診断において、がんの原因となっている遺伝子を調べて特定することによりがんの確定診断を行います。
症状や画像検査ではこのようなことはできず、最終的に血液中の遺伝子の種類や分量を判定することでがんの病名が確定するのです。さらに、その遺伝子の量で治療効果を判定することにも利用されます。
治療の効果を高める
一部のがんでは、より効率的な治療法を選ぶために遺伝子検査を行うことがあります。
以前、がんの抗がん剤治療と言えば、がんの種類別に決まっていましたが、遺伝子検査をすることで遺伝子変異を特定し、結果「遺伝子の変異別」に抗がん剤を使用することができるようになりました。
それによって、あらかじめ効果が出やすいと判断される抗がん剤を用いて効果的にがんを叩くことができるので、遺伝子検査は患者さんの体の負担を減らすことに大きく貢献します。
治療の悪影響を避ける
また、主に抗がん剤による副作用を予測することもできます。
一部のがんでは抗がん剤の前に血液検査をします。これはその後使用する抗がん剤による副作用を個人レベルで判別するためで、体質的に重い副作用が出やすいと判断される場合には、抗がん剤の種類を変更、あるいは減量します。
遺伝子検査には国民健康保険が適用となるのか
一部のがんにおいて、遺伝子検査は医師が必要と判断した場合に保険適用となります。
また、2019年には「遺伝子パネル検査」という遺伝子検査が保険適用となりました。これは、がんの遺伝子変異をより大量に検出できる方法として期待されていますが、一方ですべてのがん患者さんに適用されるわけではないということに加え、有効と判断された治療法が見つからない、あるいはその有効とされた治療が先進医療など保険が効かないもので高額になる、などのデメリットもあります。
さらに現段階において遺伝子パネル検査を受けることができるのは一部の厚生労働省に指定された医療機関のみとされています。
このように、たとえ検査自体が可能になっても、受けることができる人できない人の線引きができてしまったり、新たな治療法に期待を寄せるもそれが叶わないなどということが起こり得るのは大きなデメリットだと言えるでしょう。
がんの遺伝子検査にはまだまだ課題がある
がんになっても遺伝子検査を受けることができる患者さんは限られていることを考えると遺伝子検査はまだまだ、身近な検査とは言えません。
課題は多い遺伝子検査ですが、今後適用範囲が広がることで、これまで治療の先行きが見えなかった患者さんの新たな希望につながることを期待したいと思います。