tepotinib(Tepmetko, EMD Serono Inc.)を承認について。

tepotinib(Tepmetko, EMD Serono Inc.)を承認について。

こんにちは、川森です。FDAから新しい薬の承認メールが届きましたので、共有します。

Food and Drug Administration granted accelerated approval to tepotinib (Tepmetko, EMD Serono Inc.) for adult patients with metastatic non-small cell lung cancer (NSCLC) harboring mesenchymal-epithelial transition (MET) exon 14 skipping alterations. More Information. February 3, 2021
https://www.fda.gov/drugs/drug-approvals-and-databases/fda-grants-accelerated-approval-tepotinib-metastatic-non-small-cell-lung-cancer

FDAは、2月3日付で、MET遺伝子のエクソン14スキッピング変異を有する転移を有する非小細胞肺癌に対する治療薬としてtepotinib(Tepmetko, EMD Serono Inc.)を承認しました。

MET遺伝子のエクソン14スキッピング変異は、非小細胞肺癌の3〜4%に認める。Tepotinibは、MET受容体チロシンキナーゼ(c-MET)に高い選択性を有するMET-TKI(MET-tyrosine kinase inhibitor)です。

本承認は、152人の進行性または転移性のMET遺伝子のエクソン14スキッピング変異を有する非小細胞肺癌が参加した多施設、オープンラベル臨床試験、VISION trial (NCT02864992)の結果に基づきます。患者は、tepotinib 450mgを毎日1回内服を病状の進行または耐えきれない副作用発現まで続けた。

効果は、全奏功率(overall response rate, ORR)とその期間を盲検下中央解析により判定した。69人の未治療患者のORRは、43%で、効果持続期間は、中央値で10.8ヶ月。83人の治療経験者のORRは、43%で、効果持続期間は、中央値で11.1ヶ月でした。

20%以上の患者が経験した副作用の主なものは、下肢の浮腫、全身倦怠感、悪心、下痢、筋肉痛などであった。

Tepotinibは、我が国でも現在非小細胞肺癌に対する先駆け審査指定制度対象品目に指定されているそうで、今後、承認される可能性が高くなると思います。ただ、実際にこのお薬の恩恵を受ける患者は、非小細胞肺癌の3〜4%とのことで、それほどたくさんの患者様が対象になるわけではないですね。

川森 俊人

医師 | 日本病理学会病理専門医/日本臨床細胞学会細胞診指導医|日本癌学会

三重県生まれ。1987年(昭和62年)岐阜大学医学部卒業。医師免許取得後、岐阜大学医学部第一内科入局。

5年間、大学及び関連病院で内科、消化器内科を研修。1992年岐阜大学大学院医学研究科に進学し、病理の勉強をしつつ、癌研究を始める。動物実験を用いて、がんの発生から予防に関して、特に大腸がん、舌がん、肝臓がん、膵癌、膀胱癌、前立腺癌などを研究。

成果をCancer Researchなど一流がん専門誌に多数掲載され、学位取得後米国健康財団へResearch Fellowとして2年間留学。留学中、COX-2阻害剤の大腸発癌に対する抑制効果を世界で初めて動物実験で証明した。1998年帰国し、国立がんセンター研究所がん予防研究部室長として研究を進め、京都大学、小野薬品などと共同研究を行い、COX-2の下流にあるプロスタグランジンの大腸発癌における役割をその細胞膜にあるレセプターのノックアウトマウスを用いて検討した。ピロリ菌の胃発癌における役割なども研究した。国立がんセンター中央病院病理部も併任し、病理専門医、細胞診指導医として臨床病理診断、病理解剖業務に従事した。

2002年に再渡米し、サウス キャロライナ州チャールストンにあるMedical University of South CarolinaにAssistant Professorとして赴任しアメリカでの研究を再開。NIHからR01 grant取得し、共同研究としてP01 grantにも参加し、自身の研究室を主宰し、COX-2の上流と考えられるスフィンゴ脂質代謝の大腸がん、乳がん、舌がんの発生と予防における役割を研究した。2010年には、ハワイ大学がんセンターにAssociate Professorとして移動し、研究を続けた。2014年帰国し、一宮西病院病理部勤務。湘南メディカルクリニックでがん免疫療法部統括部長としてがん免疫療法を推進。2019年よりまれケアクリニック院長として訪問診療、特にがん末期の患者様の緩和ケアを行っている。

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