FDAが新たに2つの薬を承認しました。

FDAが新たに2つの薬を承認しました。

川森 俊人

元ハワイ大学准教授、元国立がんセンター研究所室長

こんにちは。川森です。

FDAから薬の承認について速報が届いたのでお伝えします。

You are subscribed to Oncology Drugs for Hematology/Oncology (Cancer) Approvals & Safety Notifications. This information has recently been updated, and is now available.
• Food and Drug Administration approved the first oral gonadotropin-releasing hormone (GnRH) receptor antagonist, relugolix, (ORGOVYX, Myovant Sciences, Inc.) for adult patients with advanced prostate cancer. More information. December 18, 2020
• Food and Drug Administration approved selinexor (XPOVIO, Karyopharm Therapeutics Inc.) in combination with bortezomib and dexamethasone for the treatment of adult patients with multiple myeloma who have received at least one prior therapy. More information. December 18, 2020

2020年12月18日付けで、FDAは、2つのお薬を承認しました。

1つ目は、初の経口内服薬の性腺刺激ホルモン放出ホルモンレセプター拮抗剤relugolix (ORGOVYX, Myovant Sciences, Inc)が、進行性前立腺癌の治療薬として承認されました。

進行性前立腺癌のホルモン療法として、経口のrelugolixが承認されました。これは、HERO (NCT03085095)という無作為オープンラベル治験で、放射線治療後か手術後に少なくとも一年以上アンドロゲン抑制療法(androgen deprivation therapy, ADT)を受けた患者または新たに診断された去勢感受性の進行性前立腺癌の患者が対象。934人の患者は無作為にrelugolix群とleuprolide群に振り分けられ、relugolix群は、初日にrelugolixを経口で360mg内服し、翌日から毎日120mg内服を48週間、leuprolide群は、leuprolide (リュープリン) 22.5mgを3ヶ月毎に皮下注射し48週間続けた。

効果判定は、血清中のテストステロン量を計測し、去勢と同レベル(50ng/dL以下)まで低下した割合を検討した。Relugolix群は96.7%であった。副作用もリュープリン投与群とほぼ同等。これらの結果から、成人進行性前立腺癌の経口の治療薬としてrelugolixが承認されました。経口薬で、去勢することと同レベルにホルモンを低下させることが出来ることで、患者の負担が軽減できるというメリットがあります。治療法の選択肢が増えることは素晴らしいことだと思います。

2つ目は、selinexor (XPOVIO, Karyopharm Therapeutics Inc.)が、1回以上治療を受けた成人多発性骨髄腫の患者に対する治療としてbortezomib (ベルケイド)とデキサメタゾンとの併用で承認されました。

Selinexorは、2019年に4回以上の治療歴があり、2剤以上のプロテアソーム阻害剤、2剤以上の免疫調整剤および抗CD-38モノクローナル抗体の治療に抵抗性が認められた再発または難治性多発骨髄腫に対する治療薬として承認されています。
今回は、多施設、無作為化第III相BOSTON (KCP-330-023, NCT03110562)の結果を受けて追加承認となっています。

Selinexor (XPOVIO)は、経口核外輸送タンパク質阻害剤と呼ばれる薬剤です。聞き慣れない難しいお薬です。腫瘍は、自分が‘増殖していくために障害になる腫瘍抑制因子、成長制御および抗炎症タンパク質を核外に放出するそうです。その放出する時に使う核外輸送タンパク質の1つがXPO1 (nuclear export protein, exportin 1, also called CRM1)で、XPOVIOは、このXPO1に選択的に結合し、これらのタンパク質が格外に輸送されるのを阻害するそうです。これらのタンパク質が核内に止まることにより、腫瘍の増殖を抑制することが出来るはずというシナリオです。

BOSTON trialでは、1週間に1回経口内服のselinexorと1週間に1回bortezomib (ベルケイド)皮下注射、低容量デキサメタゾンを1週間に2回内服投与群とbortezomib (ベルケイド)と低容量デキサメタゾンの標準治療群を比較検討した。結果は、無増悪生存期間(progression free survival, PFS)が、それぞれ13.9ヶ月と9.5ヶ月と有意にselinexor追加群でPFSの延長効果を認めたということでした。

今回は、前回の承認に比べ、対象が広がったこととbortezomib (ベルケイド)とデキサメタゾンとの併用での承認となっています。このお薬は、日本では、小野薬品がライセンス契約を締結しており、臨床試験中とのことです。

また、速報が届き次第皆様にお伝えしたいと思います。

川森 俊人

元ハワイ大学准教授、元国立がんセンター研究所室長

三重県生まれ。1987年(昭和62年)岐阜大学医学部卒業。医師免許取得後、岐阜大学医学部第一内科入局。

5年間、大学及び関連病院で内科、消化器内科を研修。1992年岐阜大学大学院医学研究科に進学し、病理の勉強をしつつ、癌研究を始める。動物実験を用いて、がんの発生から予防に関して、特に大腸がん、舌がん、肝臓がん、膵癌、膀胱癌、前立腺癌などを研究。

成果をCancer Researchなど一流がん専門誌に多数掲載され、学位取得後米国健康財団へResearch Fellowとして2年間留学。留学中、COX-2阻害剤の大腸発癌に対する抑制効果を世界で初めて動物実験で証明した。1998年帰国し、国立がんセンター研究所がん予防研究部室長として研究を進め、京都大学、小野薬品などと共同研究を行い、COX-2の下流にあるプロスタグランジンの大腸発癌における役割をその細胞膜にあるレセプターのノックアウトマウスを用いて検討した。ピロリ菌の胃発癌における役割なども研究した。国立がんセンター中央病院病理部も併任し、病理専門医、細胞診指導医として臨床病理診断、病理解剖業務に従事した。

2002年に再渡米し、サウス キャロライナ州チャールストンにあるMedical University of South CarolinaにAssistant Professorとして赴任しアメリカでの研究を再開。NIHからR01 grant取得し、共同研究としてP01 grantにも参加し、自身の研究室を主宰し、COX-2の上流と考えられるスフィンゴ脂質代謝の大腸がん、乳がん、舌がんの発生と予防における役割を研究した。2010年には、ハワイ大学がんセンターにAssociate Professorとして移動し、研究を続けた。2014年帰国し、一宮西病院病理部勤務。湘南メディカルクリニックでがん免疫療法部統括部長としてがん免疫療法を推進。2019年よりまれケアクリニック院長として訪問診療、特にがん末期の患者様の緩和ケアを行っている。

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