誰もが医療費で困ったときには制度の活用と家系のやりくりで解決することになると思います。これはがんだけに限ったことではないでしょう。
今回は「制度を活用する」という観点で記事を作りました。
がんに特化した制度は今のところありませんので「がんで、〇〇の状況だから困っている」という具体的な理由を考えながら皆様の置かれている現状に役立つ制度があればぜひ活用してみてください。
目次
がんの治療費
○○がんではいくらかかるか、という情報はインターネットなどに溢れていますが、がん治療は治療に対する効果の出方や副作用の強さ、進行状況、再発など多くの理由により見通しがつきにくくゴールの設定が難しいため、費用がいくらかかるのかわかりづらいことも多いものです。
もっとかかると思っていたという方から、思ったよりだいぶかかってしまったという方まで人それぞれです。だからこそ、制度を活用し思ってもみなかった出費に備えることが安心につながります。
支援の種類一覧
高額療養費制度
高額療養費制度は医療費の負担が重くならないように配慮した公的サポートです。
医療費の支払いが1か月で上限を超えるとその超えた金額が支給されます。
上限額は年齢と所得によって異なります。月ごと、診療科ごと、入院・外来別での適用になり、さらに薬局で支払う薬代にも適用されます。
ただし、利用できるのは健康保険が効く診療に対してのみです。入院時の差額ベッド代などは適用になりません。利用する際は加入している保険者に申請する必要があります。
限度額認定証
高額療養費制度はいったん通常の医療費の負担額(1~3割)を窓口で支払い、その後上限額との差額が戻ってくる仕組みですが、限度額適用認定証をあらかじめ病院の窓口に提示すれば、自己負担分の限度額だけ支払うことが可能です。
いったん、負担額を支払い、のちほど差額の返金ということでもかまいませんが、3か月以上かかることもあるので、例えば入院などで今月は医療費が高額になりそうだ…ということがわかっている場合はあらかじめ入院中に手続きをしておいたほうが良いでしょう。
多数回該当
診療を受けた月以前の1年間に3回以上、高額療養費の支給を受けた場合に4か月目以降、さらに限度額が軽減される仕組みです。
しかし、加入する保険が変わった場合は適用されません。例えば社会保険から国民健康保険へ変わると多数回該当を引き継ぐことができません。今後の治療費に影響がありますので、退職を考えている方は退職後も健康保険の任意継続を検討しても良いのではないでしょうか。
世帯合算
世帯内で同月内に自己負担額が2万1千円以上の場合、高額療養費の計算を合算して限度内に納めることができる制度です。しかし、同一の世帯であっても同じ医療保険同士でなければ対象になりません。また、入院と外来、医科と歯科はそれぞれ別として計算します。
医療費控除
一定額以上の医療費を年間(1月~12月)で支払った場合に納めた税金の一部が戻ってくる制度。医療機関に支払った健康保険料の他に通院にかかった交通費も含めることができます。医療費控除も自分で手続きする必要があり確定申告が必須です。
厚生労働省が公開している高額療養費制度の資料に詳細があります。
https://www.mhlw.go.jp/content/000333279.pdf
介護保険
介護保険は65歳以上の高齢者だけが利用できるサービスだと思われている方が多いですが、40~64歳でも要件が合えば利用が可能です。
がんの場合は「がん末期」という要件がありますがステージ4や動けない状態でないと申請できないわけではなく「医師が回復の見込みがない状態」と判断したときにはサービスを受けることができます。
抗がん剤の副作用による体力低下や転移による麻痺などで自宅療養を望んでいらっしゃる場合は検討してみてください。
生活福祉資金貸付制度
低所得者世帯や高齢者世帯などに対し、けがや病気で療養中の生活費を無利子、または低金利で借りることができる制度です。
窓口となるのは市区町村の社会福祉協議会です。貸し付けに関しては返せる見込みがあるかどうかの審査があります。貸し付けが可能な場合、連帯保証人がいる場合は原則として無利子、いない場合でも年1.5%と低い利率で貸してもらうことができます。
傷病手当金
会社員が業務外の病気やけがで会社を休み、給料がもらえなくなったり減給されたときに、加入している健康保険からお金が支給される制度です。
最長1年6か月支給されるため、長期的に会社を休まなければならなくなった場合に安心です。給料の3分の2程度の手当てを受け取ることができます。ただし、この制度は健康保険組合の加入者が使える制度ですので国民健康保険の加入者は使うことができません。
参考:協会けんぽホームページ
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/cat310/sb3040/r139
障害年金
障害を持つ状態になったときに生活を支えてくれる年金です。障害者手帳を持っていなくても要件を満たせば受給できます。
上記の傷病手当金はがんが治ったかどうかは関係なく1年6か月で支給停止になりますが、そのあとも思うように働けない場合に利用できる可能性があります。住まいの近くの年金事務所で申請が可能です。
障害年金には「障害基礎年金」「障害厚生年金」があり、病気やケガで初めて医師の診療を受けたときに国民年金に加入していた場合は「障害基礎年金」、厚生年金に加入していた場合は「障害厚生年金」が請求できます。
(日本年金機構ホームページより抜粋)
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/shougainenkin/jukyu-yoken/20150401-02.html
このように退職前にがんが見つかっていたなら障害厚生年金の申請ができます。
障害基礎年金に比べ手厚いので、気になる症状がある方は退職前に検査に行くほうが良いでしょう。日本年金機構のホームページには受給の条件なども載っています。参考にしてみてください。
障害者手帳制度
障害者手帳制度は福祉サービスが受けられる制度です。例えばがんであれば転移による症状や体力低下により、自力で活動するのが困難な場合でそれが永続的だと認められるとき、というのが条件です。
障害年金と同様、所得税、住民税、自動車税などの優遇処置や公共料金の割引サービスなどが期待できることがあります。自治体によって名称や、判定基準が異なりますので各市町村の福祉担当窓口にご確認ください。
ひとり親家庭医療費助成制度
ひとり親家庭に対し、医療費の自己負担額の一部が支払われる制度です。
健康保険に加入していることや所得制限をクリアしていることなど条件を満たせば助成を受けることができ、経済的な負担を減らすことができます。
しかし、高額療養費制度と同じように、保険がきく診療だけが対象です。申請方法は各自治体により異なります。お住まいの市区町村のホームページなどでご確認ください。
終わりに
はじめにお伝えしたように、これだけがんになる人が増えても、がんだから利用できる制度というものはありません。
しかし、がんになったあとも知ってさえいれば利用できる制度があり、お金のことで対処できる手段はたくさんあるということを知っていただきたいと思います。
闘病生活中の経済面での安心は大きいものです。お金がないから治療をあきらめ希望を捨てるのではなく、何かないかと探し、これが使えるかもと気づくことで道が開ける可能性があるのです。
本記事をお読みいただき一つでもその気づきがあれば幸いです。