がん保険は必要?40代・50代女性が知っておきたい「備え」について

がん保険は必要?40代・50代女性が知っておきたい「備え」について

「2人に1人ががんになる時代」といわれるように、がんは誰にとっても身近な病気になっています。特に40代から50代の女性は、乳がんや子宮がん、卵巣がんなど、女性特有のがんのリスクが高まる年代ともされています。

とはいえ、がんにかかったときに必要な治療費や、保険でカバーできるなどについて、具体的なイメージができていない方や、必要性がわからないという方もいるのではないでしょうか。

この記事では、女性向けがん保険の基本から、適切な加入のタイミング、選ぶ際のポイントについて解説します。将来の不安に備えるための第一歩として、ぜひ参考にしてください。

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目次

女性向けがん保険とは?保障内容と一般のがん保険との違い

女性向けがん保険は、一般的ながん保険に含まれる「がん診断一時金」「入院給付金」などの基本的な保障に加え、女性特有のがんに対する保障が備わっている保険のことです。具体的には女性特有のがんとして、乳がんや子宮がん、卵巣がんなどが含まれます。

女性向けがん保険には、大きく2つのタイプがあります。

ひとつは、乳がんや子宮がんなど女性特有のがんに対する保障を組み込んだ「女性専用タイプ」です。多くの場合、その他のがんも保障対象として含まれます。

もうひとつは、一般のがん保険に、必要な女性特有の疾患への保障を特約として付加できる「特約付きタイプ」です。保険会社が用意する特約の中から、自分に適切な保障を選べるのが特徴で、ライフスタイルや予算に合わせて柔軟に設計できます。

さらに、子宮筋腫や卵巣のう腫といった良性の女性特有疾患にも対応した保険や、先進医療の技術料をカバーするもの、再発や長期治療に備えた保障が手厚いものもあります。保険によって内容が異なるため、自分のニーズに合っているかをよく確認しましょう。

女性特定がん診断給付金

女性向けのがん保険では「女性特定がん診断給付金」が保障されていることが少なくありません。

これは、乳がんや子宮がんなどと診断された際に、一時金が上乗せ支給される保障です。保険によっては初期段階のがんである「上皮内新生物」は対象外とされることもあります。

女性特有のがんの治療に関する給付金

女性特有のがんの治療では、乳房の切除や再建、子宮や卵巣の摘出といった手術や、抗がん剤治療が必要になるケースが少なくありません。外見に変化を伴う治療では、女性として身体的にも精神的にも大きなストレスがかかります。

このような治療に対して、女性向けがん保険の中には特定手術給付金や通院給付金、ウィッグの購入費を補助する給付金など、女性特有の治療や生活の負担を踏まえた保障が含まれている商品もあります。また、自治体によっては、女性特有のがん治療の支援を設けている場合もあるため、お住まいの市区町村に直接確認してみるのもよいでしょう。

女性がかかりやすいがんとそのリスク

国立がん研究センターの統計によると、日本人女性のがん罹患率は約48.9%、死亡率は約17.2%とも報告されており、誰もががんになる可能性があることがわかります(※1)

部位別で見た女性のがん罹患率および死亡率は、以下の通り報告されています。

1位2位3位4位5位
罹患率
(2020年)
乳房大腸子宮
死亡率
(2023年)
大腸膵臓乳房

※公益財団法人がん研究振興財団「がんの統計2024」をもとに作成

女性特有のがんの罹患率(2020年)では、乳がんや子宮がんが上位5位以内に入っています(※2)

また、公益財団法人がん研究振興財団が2024年に発表した調査報告では、40代でがんと診断された人のうち約50%が「乳がん」でした。さらに、「子宮がん(頸がん・体がん)」と「卵巣がん」を合わせると、全体の約20%を占めています。つまり、40代女性のがんの約70%は、女性特有のがんであることがわかります(※2)

また、同調査の死亡率では、乳がんでは30代半ば、子宮がんでは40代あたりから上昇傾向です(※2)。これらのデータからもわかるように、女性の場合、40代から50代はがんのリスクが現実味を帯びてくる年代といえるでしょう。そのため、正しい知識と早めの備えが、安心につながる第一歩となります。

女性のがん保険はいつ入るべき?

がん保険は、基本的に「健康なうちでなければ加入できない」ことが前提です。

一度でもがんと診断された経験があると、多くの保険商品で加入が難しくなったり、保障内容に制限がかかったりします。そのため、がんと診断される前に加入しておくことが重要です。

特に女性特有のがんは、30代後半から罹患率が上昇し始め、40代にかけて急増するといわれています(※2)。保険料が年齢とともに上がっていく保険も少なくないため、若いうちに加入しておくほうがよいでしょう。

30代から40代にかけては、仕事・家事・育児など、日々の役割が増えると同時に「今後の自分の身体のことを意識し始める」タイミングです。がん保険の加入を真剣に考える適切な時期といえるでしょう。

後悔しない!女性向けがん保険を選ぶ際の5つのポイント

女性向けのがん保険には、さまざまな種類のものがあります。ここでは、保険を選ぶ際に大切な5つのポイントについて解説します。

通常のがん保険や医療保険でまかなえるものとそうでないものを把握する

がん治療では、高額療養費制度や医療費控除などといった公的制度を利用できる場合があります。

一方、入院中の差額ベッド代、通院時の交通費などにかかる費用は自己負担になることがあるため、このような費用を保険でカバーすると安心です。まずは、公的制度で対応できる部分と、民間保険で備えるべき部分を整理してから、保険の種類を検討しましょう。

外見変化を伴う治療が必要になる可能性を考慮する

乳がんの手術による乳房切除や抗がん剤による脱毛など、女性特有のがん治療では外見の変化を伴うことがあります。

ウィッグや補正下着、乳房再建手術などにかかる費用が保障されるかどうかは、保険によって異なります。外見の変化に対するケアも含めた、心身両方へのサポートが備わっているかどうかも確認しておきましょう。

入院・手術・通院を全体的に保障できるか確認する

がん治療は、入院だけでなく、通院での抗がん剤や放射線治療が中心になるケースも少なくありません。そのため、通院給付金や外来治療に対応した保障を調べることも重要です。

入院・手術・通院の全てをカバーできる保険を選ぶことが、安心して治療を受けるための鍵になります。

保険料をシミュレーションする

保障内容が充実していても、保険料が家計を圧迫してしまっては本末転倒です。

終身型は保険料が一定で一生保障される反面、月額は高めに設定されることがあります。一方、定期型は期間限定の保障は、比較的リーズナブルだとされています。

将来のライフプランや収入の見通しに合わせて、無理のない範囲で続けられる保険プランをシミュレーションし、適切な保険を選びましょう。

疑問や不安を解消しておく

パンフレットや説明文だけでは十分に把握しきれないこともあるため、特約の内容や免責事項、保障の開始時期などは特に丁寧に確認することが大切です。後になって「知らなかった」「聞いていなかった」とならないよう、疑問点は事前にしっかり確認し、クリアにしましょう。

保険ショップやファイナンシャル・プランナー(FP)へ相談することも、保険を安心して選ぶ有効な方法です。

「もしも」に備えて、できることから始めてみよう

40代から50代の女性は、仕事や家庭を支える大切な存在でありながら、女性特有のがんを発症する方が増えていく年代とされています。

女性向けのがん保険は、そうした現実を踏まえ、必要な治療や外見のケア、生活への影響にも備えられる設計になっています。さまざまな種類の保険があるため、自分のライフスタイルや予算に見合った保険に加入することが重要です。

がんへの不安を完全になくすことはできなくても、「もしも」のときに後悔しないための準備は今から始められます。これをきっかけに、女性特有のがんへの備えを考えていきましょう。

(※1)国立がん研究センター|最新がん統計
(※2)公益財団法人がん研究振興財団|がんの統計2024

井林 雄太

医師|日本内科学会認定内科医・日本内分泌内科専門医

福岡ハートネット病院勤務。国立大学医学部卒。日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。
「一般社団法人 正しい医療知識を広める会」所属。総合内科/内分泌代謝/糖尿病の臨床に加え栄養学/アンチエイジング学が専門。
臨床業務をこなしつつ、大手医学出版社の専門書執筆の傍ら、企業コンサルもこなす。「正しい医療知識を広める」医師ライターとして多数の記事作成・監修を行っている。 

プロフィール詳細

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