若年性のがんとは?若い人のがんの原因と治療方法を解説

若年性のがんとは?若い人のがんの原因と治療方法を解説

がんの原因のひとつは老化で、一般的には年齢が高くなればなるほど、がんの発症リスクは高まっていくと考えられています。とはいえ、老人だけではなくどの世代もがんにかかる可能性はあります。10代から30代など若い世代で、がんに罹患する方も少なくありません。本記事では若年性のがんの特徴や治療方法について詳しく解説します。

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目次

若年性のがんとは

若年性がんとは、主にAYA(Adolescent and Young Adult:思春期、若年成人)世代に発生するがんのことを指し、15歳から39歳までがAYA世代に該当します(※1)。15歳未満のがんは小児がんに分類されます(※2)

AYA世代は、全年齢層の中で最もがんの発症率が低いため、これまでがん対策の対象とはなっていませんでした(※3)。しかし、米国では、AYA世代におけるがんの発生率は過去42年間(ここでは1973年から2015年)で29.6%増加しているという研究報告が出ています。そのため、国はもちろん、地方自治体でもAYA世代のがん対策に本格的に乗り出しているところもあります。

若年性のがんの特徴

AYA世代のがんには、小児がんや成人のがんにはない特徴があります。それは、AYA世代に発症するがんは、種類に偏りがある点と発症率が他の年代と比べると低い点です。

小児期に多いのは白血病や脳腫瘍

小児がんやAYA世代のがんの特徴として、成人に多いがんの発症率が少ない点が挙げられます。成人で多いのが、大腸がん、肺がん、胃がんなど臓器にできるがんです。

一方、0歳から14歳までに罹患する小児がんで最も多いのは、白血病です(※4)。次いで、脳腫瘍、リンパ腫、神経芽腫、軟部肉腫という結果となっています(※4)

本記事ではAYA世代のがんと一括りにしていますが、実は同じAYA世代でも細かな年齢層によって発症リスクの高いがんは異なります。

15歳から19歳で多いがんは白血病、脳腫瘍、リンパ腫であり、小児がんとほぼ変わりません(※5)。20歳から29歳の世代になると、性腺腫瘍や甲状腺がんのほうが白血病よりも多くなります(※5)。30歳を超えると乳がん(女性)、子宮頸がん、大腸がん、胃がんなど、成人に発症するがんのリスクが高まる傾向です(※5)

発症率は100人の2人

日本におけるAYA世代のがんの発症率は年間で100人のうち2人程度です(※5)。数にすると毎年約2万人程度のAYA世代ががんに罹患していると推計されています(※5)。細かな年代別に見ていくと、15歳から19歳が約900人、20代は約4,000人、30歳は約1万6,000人です(※5)。(※数値は2017年の情報)

厚生労働省の「令和2年全国がん登録罹患数・率報告」によると、2020年にがんに罹患した人の総数は約94万5,000人でした(※6)

前述の通りAYA世代のがんの罹患数は約2万人という全体でも割合が低いため、診療体制が定まっていない、医療従事者に診療や相談支援の経験が蓄積されにくいなど、患者数が少ないがゆえの課題があります。

原因は不明

若年性のがんの原因は明らかになっていません。ただし、一部遺伝が関係するのではないかと指摘されています。がんの発症リスクを高める要因として、喫煙、飲酒、肥満、感染症、発がん物質、紫外線、食生活などの環境要因のほかに、生まれつき持っている体質である遺伝要因があります。

大阪大学や国立がん研究センターなどが中心となって行った研究では、遺伝的にがんの罹患リスクが高い体質を持つ方は、がんになりやすいだけではなく、若い年齢でのがんの発生リスクが高いことが明らかになっています(※7)

若年性のがんの治療法

若い世代の方ががんと診断された場合、想定外のことにパニックに陥ってしまう方も少なくありません。中には今後の生活や仕事への不安などから絶望的な気持ちになってしまう人もいるでしょう。

しかし、今や多くのがんは治る病気です。AYA世代のがんの生存率は、脳・脊髄腫瘍は5年実測生存率が83.5%、子宮頸部・子宮がんは88.6%と高いものもあります(※8)。

がんになってしまったことを悲観せずに、前向きな気持ちで治療していくことが何よりも重要です。ここでは、がんと診断されてから治療までのプロセスを見ていきましょう。

まずはがんの状態を知るところからスタート

がんの治療は、自分のがんの状態を知るところから始まります。体調に問題はないか、痛いところはないか、体の中で気にかかっているところはないかなど、自覚症状の有無を担当医に伝えましょう。

その後にがんの大きさや性質、広がり、転移などを調べるためにさまざまな検査が行われます。主な検査として挙げられるのが、腫瘍マーカーを含む血液検査、CT検査、MRI検査、PET検査などです。

検査の結果が出たあとに、担当医から詳細な説明があります。検査や診断について、少しでも分からないことや疑問に思う点があったら遠慮せずに担当医に質問しましょう。

それぞれの治療法のメリットとデメリットを把握する

次に、検査結果をもとに治療方針が決定します。がんの標準治療は、手術、放射線治療、薬物療法の3つですが、それぞれに良いところと悪いところがあります(※8)。例えば、手術のメリットは完全に切除できれば体内からがんを消せるため、根治の可能性が高い点です。一方で、体への負担は大きく回復に時間が要します。

薬物療法では、全身のがんを同時に治療できるメリットがありますが、重い副作用が生じる可能性も少なくありません。また、放射線治療には他の治療法よりも体への負担が少ないというメリットがある一方で、照射できる放射線の量や範囲には限界があります。

治療によってどのくらいの効果が期待できるのか、副作用はどれくらいあるのか、回復にはどれくらいかかるかなど、担当医によく聞きましょう。そして、それぞれの治療方法のメリットとデメリットを自分なりに把握することが重要です。

担当医と相談して治療法を決める

がん治療のメインとなるのは、手術、放射線治療、薬物療法の3つです。

手術だけ、薬物療法だけといったように、治療方法がひとつだけというケースもあれば、複数の方法を組み合わせて治療が行われるケースも少なくありません。また、がんの種類や進行度合い、全身状態によっても選択される治療方法は変わってくるでしょう。

いずれにしても、担当医は患者さんの状態やがんの進行度合いに合わせて最適と思われる治療方法を提示し、説明します。その説明を受けて治療方法を決めるのは患者さん自身と家族です。そのため、分からないことや心配なことがあれば納得できるまで担当医に質問しましょう。

定期的に検査を受けることで若年性がんから命を守ろう

がんは老化現象の一種と言われており、年齢を重ねるほど発生リスクが高くなっていくものです。とはいえ、若年性のがんもあり、日本では年間で約2万人のAYA世代ががんに罹患していると言われています。

若年性がんの原因はまだ明確になっておらず、発症を完全に防ぐ方法はありません。しかし、がんから命を守る方法はあります。それは、できるだけ早期にがんを発見することです。ステージが進行してしまうと治療は困難になり、命を落としてしまう確率も高くなります。

定期的にがん検査を受けることで、若年性がんから命を守りましょう。

(※1)国立がん研究センター|AYA(思春期・若年成人:Adolescent and Young Adult)世代に発症するがん
(※2)国立がん研究センター|小児がんについて
(※3)国立がん研究センター|全がん
(※4)国立がん研究センター|小児がんの患者数(がん統計)
(※5)国立がん研究センター|AYA世代のがんについて
(※6)厚生労働省|令和2年全国がん登録罹患数・率報告https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001231386.pdf
(※7)国立がん研究センター|遺伝的がんリスク体質の人は若くしてがんになりやすい~がんの特性をPRSで解明~
(※8)国立がん研究センター|放射線治療

井林 雄太

医師|日本内科学会認定内科医・日本内分泌内科専門医

福岡ハートネット病院勤務。国立大学医学部卒。日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。
「一般社団法人 正しい医療知識を広める会」所属。総合内科/内分泌代謝/糖尿病の臨床に加え栄養学/アンチエイジング学が専門。
臨床業務をこなしつつ、大手医学出版社の専門書執筆の傍ら、企業コンサルもこなす。「正しい医療知識を広める」医師ライターとして多数の記事作成・監修を行っている。 

プロフィール詳細

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