転院の流れと手続きのポイントとは?メリットとリスクも紹介

転院の流れと手続きのポイントとは?メリットとリスクも紹介

入院中の病院の環境や治療内容に不安を感じた場合、転院を考える方も多いと思います。また、退院後の治療を考えて、できるだけ家から近い病院に転院したいという方もいるのではないでしょうか。

とはいえ、いざ転院すると言っても、何から始めればいいかわからない方が多いでしょう。

この記事では、転院の流れを紹介するとともに転院のメリットやリスクをわかりやすくお伝えします。転院を考えている方はぜひ参考にしてください。

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目次

転院とは

転院とは、文字通り、現在治療している病院から別の病院に移ることを指します。

より厳密に言えば、現在の病院で行っている治療に区切りをつけ、新しい医療機関で治療を継続することが転院です。

転院の理由として、治療方針への不満・不信や、医師や看護師などの医療スタッフとの関係が円滑でないこと、就職や転職、進学による引っ越しなど多岐にわたります。また、お見舞いのしやすさを考え、家族との距離が近い病院へ転院することもあります。

転院の流れ

いざ転院しようと決めていても、具体的に何をどのように動いたらよいかわからない方もいることでしょう。ここではスムーズに転院をするための流れを紹介します。

担当医に紹介状を書いてもらう

まずは現在の担当医に転院したい旨を伝えましょう。とはいえ、現在の治療方針に不満がある場合や医療スタッフとの関係不良が原因の転院の場合、その理由を話すことにためらいを覚えてしまう方もいます。

転院の理由は正直に話すことが望ましいですが、どうしても言いづらい場合は「家族が見舞いやすい病院に転院したい」「家族と話し合って決めた」など、角が立たないような理由でも問題ありません。

担当医に転院することを伝えたら、紹介状を書いてもらいます。紹介状の正式名称は「診療情報提供書」で、転院先の病院でスムーズに治療を再開するために必要な書類です。紹介状には次のような情報が記載されます。

  • 氏名や生年月日、住所などの患者の基本情報
  • 傷病名
  • 画像検査や内視鏡検査、血液検査などの結果データ
  • 既往歴や家族歴
  • 症状経過や治療経過

なお、紹介状の作成には1通あたり2,500円がかかります。保険が適用されるため、3割負担の場合の自己負担額は750円です。

転院先に相談

紹介状を書いてもらったら、できるだけ早く転院先に相談しましょう。相談するのが遅くなってしまうと、紹介状に書いてある情報が古くなってしまうからです。

一般的に、紹介状の有効期限は設けられているわけではありませんが、病院によっては特別に有効期限を設けているところもありますので注意してください。

提出した紹介状や相談内容をもとに転院先で受け入れ可能かどうかが審査されます。受け入れ可能となったら、日程調整など転院の手続きを進めていきましょう。

転院のメリット

ここでは、転院のメリットを詳しく見ていきましょう。転院の主なメリットは以下の通りです。

  • 今より良い治療が受けられる可能性がある
  • 医療スタッフとの関係によるストレスが軽減される
  • 通院しやすくなる

今より良い治療が受けられる可能性がある

現在の治療方針に不満や不信感を持っている場合、転院によって今より良い治療が受けられる可能性があります。中には、「自分の病気のスペシャリストがいるからあの病院に転院したい」という方もいるでしょう。そういった名医に病気を診てもらえる可能性があるのは大きなメリットです。

とはいえ、噂話だけを信じて転院することは危険です。噂の真偽をしっかりと確かめたうえで、転院するかどうかは慎重に判断するようにしましょう。

医療スタッフとの関係によるストレスが軽減される

医師や看護師などとの関係が悪化したことを理由に転院する場合、医療スタッフとの関係によるストレスが軽減されます。転院して新しい医療スタッフと出会うことで良好な信頼関係を築ける可能性もあるでしょう。患者はもちろん、家族にとってもそれは非常に喜ばしいことです。

ただし、転院したとしても必ずしも信頼できる医療スタッフに出会えるとは限らない点には注意しましょう。転院先のスタッフとの相性が合わないということも十分考えられます。

通院しやすくなる

自宅から近い病院に転院することで、退院後も通院しやすくなり、家族のお見舞いの負担も軽減されます。特に退院後にも継続して治療することが決まっている場合、自宅と病院の距離は重視すべきポイントです。

転院のリスク

転院にメリットがあることは事実ですが、メリットだけではありません。転院には、次のようなリスクもあるため注意が必要です。

受け入れてもらえない可能性がある

患者さんが転院をしたいと言っても、転院先の病院から必ず受け入れてもらえるとは限りません。病状や病院の状況によっては、受け入れを断られてしまう可能性もあります。

受け入れてもらえることを前提に転院手続きを進めてしまうと、現在入院中の病院を出た後に入院先が見つからないということも考えられます。そのため、必ず、転院先の病院から受け入れ可能の返事があってから転院の手続きを進めましょう。

希望の医師に担当してもらえない可能性がある

「名医」と呼ばれるような有名な医師に診てもらいたいから転院したいという方もいると思います。しかし、必ずしもその医師に担当してもらえるわけではありません。

患者さんの担当の医師は最終的に転院先の病院が決めます。そのため、患者さんの希望が全て通るとは限りません。

転院の理由が「希望の医師に診ていただく」という場合、転院の相談をする際に希望の医師に担当してもらえるかどうかは必ず確認しましょう。

治療が遅れる可能性がある

転院をすることによって、手続きや他の患者さんとの兼ね合いなどの事情で治療開始が遅れてしまう可能性があることは頭に入れておく必要があります。例えば、手術を要する疾患の場合、転院することで手術日が遅れる可能性があります。その間に病状が悪化するリスクもあるでしょう。

転院する場合は適切な手順を踏むことが重要

転院をするには、はじめに担当医に伝え、次に受け入れ先に相談するなど適切な手順を踏むことが重要です。受け入れ可能の返事をもらっていないのに、強引に今の入院先を出てしまうと、新たな入院先が見つからないなどということも考えられるでしょう。

また、転院には治療が遅れてしまう可能性があるなど、いくつかのリスクもあります。現在より良い医療を受けられる可能性があるなど転院にはメリットがある一方で、リスクもあることは事実です。メリットだけではなくリスクも考慮に入れながら、転院するかどうかを慎重に考えましょう。

井林 雄太

医師|日本内科学会認定内科医・日本内分泌内科専門医

福岡ハートネット病院勤務。国立大学医学部卒。日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。
「一般社団法人 正しい医療知識を広める会」所属。総合内科/内分泌代謝/糖尿病の臨床に加え栄養学/アンチエイジング学が専門。
臨床業務をこなしつつ、大手医学出版社の専門書執筆の傍ら、企業コンサルもこなす。「正しい医療知識を広める」医師ライターとして多数の記事作成・監修を行っている。 

プロフィール詳細

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