頭頸部がんとは?特徴や症状、検査方法を解説

頭頸部がんとは?特徴や症状、検査方法を解説

「頭頸部(とうけいぶ)」という言葉は、一般的に日常生活であまり使うことがないだけに、具体的にどの部分を指すのか分からない方もいることでしょう。頭頸部とは、脳と目を除く首から上の領域のことです。そして、この領域にできるがんのことを「頭頸部がん」と言います。

この記事では、希少がんの一つである頭頸部がんの概要や特徴、種類と症状などを詳しく解説しましょう。

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目次

頭頸部がんとは

頭頸部とは、頭蓋骨の下部(頭蓋底部)から下の顔の部分と、鎖骨より上の首の部分、顔の部分を指します。具体的には、副鼻腔、口腔、のど、唾液腺、甲状腺などの領域です。この部分にできるがんを総称して「頭頸部がん」と言います。

なお、脳にできた腫瘍は脳外科、目のがんである眼腫瘍は眼科で診るため頭頸部がんには含まれません。ここではまず、頭頸部がんの特徴やリスク因子といった基本的なところを見ていきましょう。

頭頸部がんの特徴

頭頸部がんの特徴としてまず挙げられるのは、罹患すると生活の質(QOL)を大きく損なう恐れがあることです。

頭頸部には、食事や呼吸といった生命を維持するために欠かせない機能や、発声したり味を感じたりといった日常生活を送るうえで非常に重要な機能が含まれています。この部位にがんの罹患などで障害が起こってしまうと、患者さんの日常生活に支障をきたしてしまうのです。治療を行う際にはQOLをできるだけ低下させない工夫が必要になります。

頭頸部がんのもう一つの大きな特徴は、人口10万人あたりの発症率6人未満の希少がんであることです(※1)。発生頻度の多い胃がん、大腸がん、肺がんなど、他のがんに比べると診断や治療が難しく、患者さん自身が情報を集めにくいなどの課題があるのが現状です。

頭頸部がんのリスク因子

がんは、リスク因子が明らかになっていないものと、ある程度明らかにされているものに分かれます。頭頸部がんは、リスク因子がある程度明らかになっているがんです。

例えば、口腔・咽頭がんのリスク因子としては、喫煙、飲酒、口腔の衛生不良などが挙げられます。また、喉頭がんは喫煙習慣と因果関係が深いことが明らかになっています。そのため、禁煙や節酒、口腔ケアなど、生活習慣の改善により発症リスクを下げることができるのも頭頸部がんの特徴といえるでしょう。

さらに、一部の頭頸部がんの発症と、ウイルスとの関係も明らかになりつつあります。主なものとしては、中咽頭がんとヒト乳頭腫ウイルス、上咽頭がんとEBウイルスなどです。

頭頸部がんの種類と症状

一口に頭頸部がんと言ってもさまざまな種類があり、症状は大きく異なります。ここでは、頭頸部がんの種類ごとの症状を見ていきましょう。

口腔がん(舌がん、口腔底がん、歯肉がんなど)

舌がん、口腔底がん、歯肉がんなど口腔内にできるがんを総称して口腔がんと言います。口腔がんの症状として最も多いのが口腔内、つまり口の中の痛みです。痛みに加えて、しこり、腫れ、ただれ、出血、歯のぐらつき、口臭などの症状が現れることがあります。ただし、初期段階ではほとんど症状が出ない点には注意しましょう。症状が出た場合にはすでにがんが進行しているというケースも少なくありません。

口腔がんの症状や治療方法についてより詳しく知りたい方は、下記の記事をご参照ください。

喉頭がん

咽頭がんとは、一般的に「のど」と言われる部位の鼻から食道にできるがんを指します。がんができた場所によって症状が異なるというのが特徴です。声を出すための器官である声門にできる声門がんの場合、初期段階から声のかすれが現れ、さらに進行するとかすれ声がさらに悪化し、声門が狭くなることにより息苦しさも感じるようになります。また、がんから出血することにより痰に血液が混じることもあります。

声門上部にできる声門上部がんの場合、のどのイガイガ感や異物感、食べ物を飲み込んだ時の違和感などが現れるでしょう。がんが声門まで進行すると声がかすれ、やがて息苦しさを感じるようになります。声門上部がんの初期症状は、風邪の症状と似ているため、発見が遅れてしまうことがある点には注意が必要です。

声門下部にがんができる声門下部がんは、病状が進行するまで症状がほとんど出ません。病状が進行するとかすれ声や息苦しさといった症状が現れるようになります。

喉頭がんの症状や治療方法についてより詳しく知りたい方は、下記の記事をご参照ください。

咽頭がん

咽頭とは、鼻の奥から食道までの食物や空気の通り道のことであり、この部位にできるがんを咽頭がんと言います。咽頭がんの初期症状は、のどの違和感や軽い痛み程度で、強い症状が出ないことも少なくありません。がんが進行すると、食べ物を食べた時の通りにくさ、息苦しさなどが出現するようになります。

咽頭上部にがんができる咽頭上部がんの場合、耳管という耳と鼻をつなぐ管ががんでふさがれることによる耳の閉塞感、鼻づまり、鼻血などの症状が現れる可能性もあるでしょう。なお、中咽頭がんは片側の扁桃腺の腫れ、下咽頭がんは声のかすれなどが現れることもあります。

喉頭がんの症状や治療方法についてより詳しく知りたい方は、下記の記事をご参照ください。

咽頭がんとは

鼻腔・副鼻腔がん

鼻腔にできるがんが鼻腔がん、副鼻腔にできるがんが副鼻腔がんです。鼻腔がん、副鼻腔がんに共通する症状として挙げられるのが、鼻血、頬のしびれ、片側からだけ出る涙などがあります。さらに進行すると眼球が飛び出しているように感じる、歯がぐらつく、ほほが腫れる、口の開けづらさなどの症状が現れる場合もあるでしょう。鼻腔がん、副鼻腔がんともに初期段階では強い症状が現れにくい、少しでも気になる症状を感じたら、できるだけ速やかに医療機関を受診しましょう。

唾液腺がん(耳下腺がん、顎下腺がん)

唾液腺がんは、耳下腺、顎下腺といった部位にできるがんの総称です。痛みを伴わないふくらみ・しこり(腫瘤)が現れるのが、唾液腺がんの症状の特徴として挙げられています。また、がんが進行するとそのしこりが痛み始めます。がんが神経の近くで増殖した場合、顔面のしびれ、ピリピリ感が出現することもあります。

甲状腺がん

甲状腺がんは、のどぼとけのすぐ下にある甲状腺にできるがんであ、、初期段階では自覚症状はありません。がんが進行すると、のどの違和感、声のかすれ、のどの痛み、飲み込みにくさ、血痰、呼吸困難といった症状が出現します。

喉頭がんの症状や治療方法についてより詳しく知りたい方は、下記の記事をご参照ください。

頭頸部がんの検査

頭頸部がんが疑われる場合、まずは問診、視診、触診が行われます。そして、次に行われるのが組織の一部を採取し顕微鏡でがんの有無を調べる内視鏡検査です。

内視鏡検査の結果、頭頸部がんであることが確定された場合、CT、MRI、超音波検査などでがんの広がりや深さ、転移の有無を調べます。さらに、ステージの判定や治療方針の決定のため上部消化管内視鏡検査、いわゆる胃カメラ検査が行われます。

定期的に検査を受けて、頭頸部がんを早めに見つけよう

頭頸部がんは、口腔がん、喉頭がん、咽頭がん、鼻腔・副鼻腔がんなど、複数の種類が存在します。種類によって症状や治療方法は異なりますが、いずれの場合でも早期発見・早期治療を行うことで、命を守れる確率が高くなるでしょう。

また、初期段階では症状が現れにくいのが頭頸部がんの大きな特徴です。気になる症状がある場合は速やかに医療機関を受診することはもちろん、症状がない場合でも定期的に検査を受けることで、頭頸部がんから命を守るように心がけましょう。

(※1)国立がん研究センター|頭頸部の肉腫
参照日:2024年9月

井林 雄太

医師|日本内科学会認定内科医

福岡ハートネット病院勤務。国立大学医学部卒。日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。
「一般社団法人 正しい医療知識を広める会」所属。総合内科/内分泌代謝/糖尿病の臨床に加え栄養学/アンチエイジング学が専門。
臨床業務をこなしつつ、大手医学出版社の専門書執筆の傍ら、企業コンサルもこなす。「正しい医療知識を広める」医師ライターとして多数の記事作成・監修を行っている。 

プロフィール詳細

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