ドナーとは?移植の種類やデメリット・登録条件や手順を解説

ドナーとは?移植の種類やデメリット・登録条件や手順を解説

近年、ニュースやSNSで臓器提供に関する情報を目にする機会が増えています。しかし、臓器提供に関する意思表示が円滑に進んでおらず、移植を希望する数と実際に移植が行われる件数に乖離があるのが現状です。さらに、少子高齢化に伴い、若年層の骨髄バンクドナー登録者の確保が課題となっています。

本記事では、ドナーの概要やデメリット、登録条件・手順について解説します。これからドナーとして登録を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。

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目次

ドナーとは

ドナーとは、臓器や造血幹細胞(血液のもとになる細胞)を患者さんに提供する人のことを指します。

臓器移植では、手術や薬などで治療できなくなった臓器と健康な臓器を交換することで、健康を取り戻すことが可能です。

臓器移植には、死亡したドナーから受け取るものと、生体ドナー(生きているドナー)から提供を受けるものの2種類があります。

死亡したドナーから臓器が提供できるのは、心停止もしくは脳死の場合のみです。心停止の場合は、膵臓・腎臓・眼球の提供が可能です。臓器の摘出に必要な体制が整備されている手術室がある病院であれば移植できます。

脳死の場合は、眼球・小腸・膵臓・腎臓・肝臓(分割可能)・肺・心臓が提供できます。臓器の摘出に必要な体制が整備され、高度な医療を行う大学病院などであれば移植が可能です。

生体ドナーから提供できる臓器は、小腸・腎臓・膵臓・肝臓・肺です。ドナーになれる方は、原則として6親等以内の血族と3親等以内の姻族に絞られています(※親族に該当しなくても事実婚などで可能な場合もある)。また、ドナーの臓器機能や血液型、基礎疾患の有無などを十分に検討したうえで医学的に臓器提供ができるかを判断します。

骨髄バンクドナーとは

骨髄バンクとは、白血病や再生不良性貧血(血液中の白血球・赤血球・血小板の全てが減る疾患)などを治療する必要がある患者さんと、造血幹細胞移植が可能なドナーをつなぐ公的事業を指します。

なお、造血幹細胞移植とは、赤血球・白血球・血小板などの血液細胞のもとになる造血幹細胞を移植し、血液疾患のある患者さんの造血機能を回復させる治療法です。

造血幹細胞移植には、以下の3種類が挙げられます。

骨髄移植腸骨(腰の骨)から注射器で骨液を吸引し、採取する
末梢血幹細胞移植注射によって末梢血内の造血幹細胞を増やし、血液成分を分離する機器で採取する
さい帯血移植出産後、切り離したへその緒(臍帯)や胎盤にある血液を採取する

骨髄移植の際の骨液採取方法については、こちらの記事を参照してください。

上記のいずれかの手段を選択し、採取した血液を点滴で患者さんの静脈から注入します。

骨髄バンクドナーの登録条件は以下の通りです。

• 体重:男性45kg以上、女性40kg以上(※1)
• 年齢:18〜54歳の健康な方(実際に提供可能なのは20〜55歳の健康な方)(※1)
• 骨髄:末梢血幹細胞の提供内容を理解している

一方で、以下に該当する方はドナー登録ができません。

• 体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)が30を超える、過度な肥満の方(※1)
• 食事や薬で発疹や呼吸困難などの既往がある方
• 梅毒・エイズ・ウイルス肝炎・マラリアなどに感染している方
• 輸血を受けたことがある方
• 貧血などの血液疾患がある方
• 最高血圧が151以上、または89以下の方(※1)
• 最低血圧が101以上の方(※1)
• 本人または家族に悪性高熱症の病歴がある方
• 自己免疫疾患・先天性心疾患・心筋梗塞・狭心症・脳卒中悪性腫瘍・膠原病・糖尿病・腎臓病・肝臓病などの病歴がある方

ドナーになるデメリット

ドナーが臓器を提供したあとは、健康上のデメリットが起こる可能性があるでしょう。

例えば、腎臓を提供した場合、健康な方に比べて腎不全に陥る確率や死亡率が高くなることが報告されています。ほとんどの方の場合は健康上に問題ないものの、免疫反応による血圧上昇や蛋白尿が起こるリスクがあるため、年1回程度は医療機関を受診することが重要です。

また、末梢血幹細胞移植では、骨髄採取や麻酔などに伴う合併症として吐き気・嘔吐・頭痛・しびれ・咽頭痛・口内炎・めまい・食欲不振・不眠・疲労などの症状が報告されています。

ドナーを申し出る際は、上記のリスク・副作用を十分理解し、医師の指示に従って臓器や細胞を提供しましょう。

ドナー登録の方法

ドナー登録の方法について、臓器を提供する場合と造血幹細胞を提供する場合に分けて解説します。今後ドナー登録を検討している方は、参考にしてみてください。

臓器提供する際のドナー登録の方法

臓器提供する際のドナー登録の方法には、主に2つの方法があります。

1つ目は、運転免許証や健康保険証、マイナンバーカードに提供したい意思を記入しておく方法です。臓器提供の意思がある場合は、それぞれの裏面を確認し、署名をしておきましょう。

2つ目は、インターネットから登録する方法です。パソコンやスマートフォンから、公益財団法人日本臓器移植ネットワークの「臓器提供意思登録 仮登録」ページより仮登録をしてください。臓器提供をする意思や登録者の情報を入力し、仮登録を完了すると、10日程度で臓器提供意思カードが届きます。(※2)

外部リンク:公益財団法人日本臓器移植ネットワーク|臓器提供意思登録 仮登録

カードが届いたら、カードの裏面にあるQRコードを読み取るか「臓器移植 本登録」と検索し、本登録画面で手続きをおこなってください。意思登録カードに記載されたIDと、仮登録時に設定したパスワードを入力すれば、登録は完了します。

登録後は、自筆で意思登録カードに署名しましょう。また、臓器提供することになった場合、家族の承諾が必要になるため、臓器提供の意思を家族に共有しておくことが大切です。

骨髄バンクドナー登録の方法

骨髄バンクドナーの登録を検討する方は、日本骨髄バンクの「ドナー登録のしおり」を読みましょう。登録の流れが把握できたら、お近くの献血ルームや保健所に行き、登録手続きをします。登録受付窓口を確認する場合はこちらを参照しましょう。

登録完了後、腕の静脈から約2mlを採血し、HLA型(白血球の種類)を調べます(※3)。(無料)後日、日本赤十字社から登録確認書が届いたら手続きは完了です。ドナー登録した方のHLA型と患者さんのHLA型が定期的に適合検索されます。

ドナーに関するよくある質問

ドナーに関するよくある質問をまとめました。これからドナー登録を検討している方は事前に以下の内容を把握しておきましょう。

ドナーに健康上の被害が起きた場合、補償はありますか?

骨髄・末梢血幹細胞の提供の際に健康被害が生じた場合は、最高1億円の補償制度によって補償されます。後遺症が出た場合は、程度によって400万円〜1億円、死亡した場合は一律1億円が支払われる流れです(2024年9月24日時点、日本の骨髄バンクを介した骨髄・末梢血幹細胞採取では、死亡事例は1例もありません)(※3)

ドナー登録後に意思を変えたり、取り下げたりできますか?

可能です。健康保険証や運転免許証、マイナンバーカードの裏面に記入している場合は、取消線で消して新しい意思に書き換えてください。

インターネットによる意思登録でも、本登録完了後に内容の変更・削除は可能です。

ドナーとしての臓器提供にかかる費用負担はありますか?

臓器提供者であるドナーには、臓器提供にかかる費用は発生しません。また、葬儀の費用や謝礼が支払われることもありません。

一人でも多くの命を救うためにドナー登録をしよう

ドナーとして臓器や造血幹細胞を移植することで、手術や薬などで治療できなくなった患者さんの疾患を治療することが可能です。ドナー登録の条件として、臓器機能・血液型・基礎疾患の有無などが判断され、問題ない場合に登録できます。

ドナー登録に興味がある方は、登録手続きをおこない、臓器・血液提供の意思を示しておきましょう。あなたの勇気ある行動が多くの命を救えるかもしれません。難病で苦しむ患者さんを助けるために、1歩踏み出してみてはいかがでしょうか。

(※1)政府広報オンライン|命をつなぐ骨髄バンク あなたのドナー登録を待っている人がいます
(※2)公益社団法人日本臓器移植ネットワーク|意思登録のながれ
(※3)公益財団法人日本骨髄バンク|チャンス-ドナー登録のしおり- 1
参照日:2024年9月

井林 雄太

医師|日本内科学会認定内科医・日本内分泌内科専門医

福岡ハートネット病院勤務。国立大学医学部卒。日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。
「一般社団法人 正しい医療知識を広める会」所属。総合内科/内分泌代謝/糖尿病の臨床に加え栄養学/アンチエイジング学が専門。
臨床業務をこなしつつ、大手医学出版社の専門書執筆の傍ら、企業コンサルもこなす。「正しい医療知識を広める」医師ライターとして多数の記事作成・監修を行っている。 

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