人間ドックは何歳から受けるべき?人間ドックの目的と重要性を解説

人間ドックは何歳から受けるべき?人間ドックの目的と重要性を解説

人間ドックは病気の早期発見に有効です。とはいえ、「人間ドックに行かなければならないけれどおっくうだ」といった方や、「健康診断だけで十分なのでは」と思っている方もいるのではないでしょうか。

そこで本記事では、なぜ人間ドックを受けた方がいいのか、人間ドックを受けるとどのような病気が発見できるのか、どういった基準でクリニックや検査項目を選べばいいのかといった人間ドックの基礎知識を解説します。特にこれまで人間ドックに行ったことのない方のない方は、ぜひ最後までお読みください。

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目次

人間ドックは20代から受診可能

人間ドックに関する質問で多いのが、「何歳から受けられますか?」というもの。人間ドックは20歳以降であれば誰でも受診可能です 。ここではまず、人間ドックの目的と重要性、何歳から受けるべきなのかといった基本的なところを見ていきましょう。

人間ドックの目的と重要性

人間ドックの目的は、病気の早期発見です。「健康診断を毎年受けているから人間ドックまで受けなくて大丈夫」と思っている方もいるのではないでしょうか。

人間ドックと健康診断の一番の違いは検査項目の数です。

健康診断の検査項目は10~15項目なのに対して、人間ドックは50~100項目とより多くの検査が行われます。 そのため、健康診断では見つからなかった小さな病変も人間ドックであれば見つけやすくなります。

人間ドックの適齢期

人間ドックは任意検査のため、「○歳になったら必ず受けなければならない」というものではありません。20歳以降であれば誰でも受けられるものですが、病気のリスクが低い若年層のうちから人間ドックを受診する人は少数派です。

受診を推奨するのは、ライフステージや身体的な変化が起こりやすい30歳以降であり、年に1度など定期的に人間ドックを受けることが病気の早期発見に非常に有効的といえるでしょう。定期的に人間ドックを受け、前回の結果と今回の結果を見比べることで小さな体の変化も見つけやすくなります。

人間ドックの選び方

人間ドックと一口に言っても、多くの医療機関が行っており、検査項目は多岐にわたります。そんな中、どのように自分に最適な医療機関や検査項目を選べばいいのでしょうか。

クリニックの選び方

人間ドックは一度受ければそれで終わりというものではありません。病気を予防していくためには、長期間、定期的に受け続ける必要があるものです。

定期的に受診するために何より重視すべきなのが、人間ドックを受ける医療施設が通いやすいかどうかです。通いにくい医療施設を選んでしまうと、どうしても足が遠のきがちになってしまいます。自宅や職場から通いやすい医療機関を選ぶようにしましょう。

また、忙しくて平日に時間が取れそうもない方は、土日も受診できる医療機関をおすすめします。経過観察ができるよう毎年同じ医療機関を選ぶことが重要です。

検査項目の選び方

検査項目を選ぶ基準は次の3つです。

  • 年齢や性別から選ぶ
  • 近親者がかかったことのある遺伝性疾患に応じた検査を選ぶ
  • 症状の自覚があるなど、気になる部位に応じた検査を選ぶ

例えば、30代女性であれば「初期の乳がんの発見を目的にマンモグラフィ(乳房X線)検査 を選択する」、近親者に脳卒中の既往歴がある方であれば「将来的に脳血管疾患にかかるリスクを判定するために頭部MRI検査 /頭部MRA検査 を選択する」、お腹が張るという自覚症状がある方は「大腸がんの発見を目的に大腸内視鏡検査を選択する」といった具合に、自身に必要と思われる検査を組み合わせていきましょう。

人間ドックの結果で何がわかる?年齢別に紹介

これまで人間ドックを受けたことのない方の中には、「結局、人間ドックで何がわかるの?」といった疑問をお持ちの方もいるのではないでしょうか。そこでここでは、人間ドックの結果でわかることを年代別でお伝えします。人間ドックを受けたことのない方や、はじめて受けようと思っている方はぜひ参考にしてください。

20代・30代の場合

20代・30代の若い世代は、他の世代と比べると病気の発生リスクは高くありません。

食生活や生活習慣、アルコールの摂取量、喫煙習慣などが10代や20代の頃と変わらない方も少なくないでしょう。そういった方は、知らず知らずのうちに生活習慣病の発生リスクが高まっている可能性があります。

生活習慣病は初期段階ではほとんど自覚症状が出現しません。そのため、20代から30代に生活習慣病に関連した検査を受け、予防に努めることが重要です。

また、日本人の死因として上位に位置する胃がんは40代半ばから罹患(りかん)率が高まると報告されています(※1) 。バリウム検査や胃カメラ(上部消化管内視鏡検査) など、胃の疾患を調べる検査も組み合わせることをおすすめします。

女性特有の疾患としては、ヒトパピローマウイルス(HPV) 感染による子宮頸(けい)がんの患者が年々、若年化しつつあり20代や30代の患者も少なくありません。子宮頸がんが心配な方や近親者に婦人科疾患の患者がいる方は、女性のための人間ドックである「レディースドック」を受診することをおすすめします。

40代の場合

40代になると、生活習慣病の自覚症状が出現し始めます。

特に、20代から30代の頃に食生活が乱れていたり、過度な飲酒や喫煙をしていたりといった方は、体への負担が出始める時期です。これまで病気知らずの方でも突然、大きな病にかかってしまう可能性もあります。自覚症状がある方はもちろん、自覚症状がない方でも生活習慣病に関連した検査を受けましょう。

40代になると、肺がんや胃がん、大腸がんなどのがんの発生リスクも高くなります。オプション検査としてこれらのがんの有無を調べる検査も受けることをおすすめします。

女性特有のがんである乳がん、子宮頸がんの発生リスクが高まる年代でもありますので、毎年チェックしましょう。乳がんの検査は、「マンモグラフィ+乳腺エコー」の組み合わせが最もおすすめです。

50代の場合

50代に入ると、それまでよりさらに定期的な検査が欠かせません。

この年代ではがんや心臓病、脳血管疾患が特に高まってきます。これらの疾患は基礎検診だけでは判別できないケースもあります。MRI検査やCT検査といった、より精密な検査を行うようにしてください。

さらにこの世代では、男性は前立腺がんが増えるため(※2) 、PSA(前立腺腫瘍マーカー)検査 をおすすめします。また、女性特有のがんである乳がんの発症ピークは40代後半から50代です(※3) 。2年に1度など定期的に、乳がん検査を受診しましょう。

60代以上の場合

60代以降はあらゆる病気の発症リスクがピークに達する年代です。

自覚症状がなくても、1年に1度は精密検査を受けるようにしましょう。基礎検診ではなく、MRI検査やCT検査など、より精密な検査をおすすめします。

男性の場合は毎年、前立腺がんのチェックをしましょう。また、女性は子宮頸がんより子宮体がんのリスクが高まる年代です。子宮体がんのチェックは毎年するようにしてください。

定期的な人間ドックが早期発見につながる

がんを含むあらゆる病気から命を守るために最も有効なのは、できるだけ早いうちに病気を見つけることです。初期の段階で見つかった病気であればあるほど、症状も軽く、治療効果も高くなります。病気の早期発見におすすめなのが人間ドックです。

人間ドックは一般的な健康診断と比べると、検査項目が多く、より精密な検査が行えます。そのため、健康診断では見つけられなかったような小さな病変でも人間ドックであれば見つけられる可能性があります。体の変化が現れやすい30代になったら定期的に人間ドックを受診して、病気の早期発見につなげましょう。

(※1)国立がんセンター|グラフデータベース(胃がん年齢別罹患率)
(※2)国立がんセンター|グラフデータベース(前立腺がん年齢別罹患率)
(※3)国立がんセンター|グラフデータベース(乳がん年齢別罹患率)
参照日:2024年2月

井林 雄太

医師|日本内科学会認定内科医・日本内分泌内科専門医

福岡ハートネット病院勤務。国立大学医学部卒。日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。
「一般社団法人 正しい医療知識を広める会」所属。総合内科/内分泌代謝/糖尿病の臨床に加え栄養学/アンチエイジング学が専門。
臨床業務をこなしつつ、大手医学出版社の専門書執筆の傍ら、企業コンサルもこなす。「正しい医療知識を広める」医師ライターとして多数の記事作成・監修を行っている。 

プロフィール詳細

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