CTとは、「Computed Tomography」の略称で、日本語では「コンピューター断層撮影」などと訳されます。 一般的によく耳にする言葉のため、「CT検査」という言葉は大半の方が知っているのではないでしょうか。
とはいえ、CT検査がどのような検査なのか、検査をすることでどのような病気が発見できるのかなど、詳細をよく知らないという方も多いと思います。そこで本記事では、CT検査の目的や診断できる病気などを詳しく解説します。CT検査について詳しく知りたい方はぜひ参考にしてください。
目次
CT検査とは?
CT検査とは、X線を用いてコンピューターによって人体の内部を画像化する検査のことです。まずはCT検査とはどのような検査なのか、その目的や方法などを詳しく見ていきましょう。
CT検査の目的
CT検査の目的は、病気の状態の詳しい観察、手術前の精密検査、手術後や抗がん剤治療中の経過観察、肺炎など臓器の炎症の有無の確認など、多岐にわたります。CT検査と一口に言っても、その種類や撮影方法は一つではありません。それぞれの検査目的に応じて、さまざまな撮影方法や画像処理方法の中から最適なものを選択していきます。
CT検査の方法
CT検査の方法は、単純CT検査と造影CT検査の2種類(※1)に分かれます。
単純CT検査
単純CT検査とは、造影剤を使用せずに行うCT検査のことを指します。
脳内出血や組織の浮腫、骨の異常、肺(気管支を含む)の形態などの造影剤を用いなくても、あるいは用いない方がよく観察できる場合に行われる検査です。検査時間は一般的に5分~10分であり、検査前の食事制限はありません(※2)。
造影CT検査
造影CT検査とは、X線を吸収しやすい造影剤と呼ばれる医薬品を静脈から注入した後に撮影する検査が造影CT検査です。
造影剤を注入することで、画像にコントラストがつけやすくなったり、特定の臓器を強調したりできます。検査時間は一般的に10分~20分であり(※2) 、検査前の約3時間は水かお茶の飲水以外、口にすることができません(※3)。
腎機能が悪い場合やアレルギーがある方は検査ができないこともあります。
CT検査の種類と診断できる病気
CT検査は、頭部CT検査、胸部CT検査、腹部CT検査の3種類に分かれており(※4) 、それぞれ診断できる病気が異なります。種類ごとにどのような病気を診断できるかを見ていきましょう。
頭部CT検査
頭部CT検査とは、脳出血や初期の脳梗塞、くも膜下出血など脳の状態を確認することを目的に行われる検査です。
5ミリ~1センチ間隔で脳内を輪切りにした画像を撮影する ことで、脳の疾患や腫瘍の有無を確認します。
CT検査では1ミリ以下の病変を検知 でき、なおかつ脳内を広範囲に検査できるため、主に急性期の脳出血で役立ちます。
頭部CT検査で診断できるのは、脳出血、脳梗塞、くも膜下出血、脳腫瘍、脳浮腫、副鼻腔(びくう)炎、頭蓋骨骨折、眼窩(がんか)底骨折などです。
胸部CT検査
胸部CT検査は、主に肺や心臓の病変を確認することを目的に行われ検査です。
特に肺がんを発見するのに有効で、肺がん検査で主流である胸部X線検査では発見できなかったような小さながんや、臓器や肋骨(ろっこつ)と重なって見えにくいがんを発見することも可能です。
肺がんの発見率は、胸部X線検査の5~10倍と報告されています(※5)。胸部CT検査で診断できる病気は、肺がん、肺結核、胸部大動脈瘤(りゅう)などです。
腹部CT検査
腹部CT検査とは、肝臓や腎臓、膵(すい)臓、胃、大腸、子宮、卵巣、脾(ひ)臓、腎臓といった腹部にある臓器の病変を発見するために行われるCT検査のことです。
超音波(エコー)やX線では見えにくい、内臓の深い部分の状態を確認するのに役立ちます。
腹部CT検査で診断できる主な病気は、肝臓がん、胆のうがん、膵臓がん、腎臓がんなどのがん、肝炎、膵炎、腎炎などの炎症性疾患です。
CT検査についてのよくある質問
ここでは、CT検査についてよくある質問とその回答をお伝えします。CT検査を受けたい、あるいは医師からCT検査をすすめられている方はぜひ参考にしてください。
CT検査の相場費用は?
CT検査の費用相場は、単純CT検査なのか造影CT検査なのかによって異なります。
単純CT検査の費用相場は、1万2,000~2万7,000円です 。医療保険制度による窓口負担の目安は、自己負担割合が3割の場合は6,000~8,000円ほど、1割の場合は目安2,000~2,700円ほどとなります。
造影CTの費用相場は3万~4万円ほどです。健康保険の3割負担の方の窓口負担の目安は9,000~1万2,000円ほど、1割負担の方は3,000~4,000円ほどが目安です。
CT検査で放射線被ばくの可能性があるってほんと?
CT検査では放射線の一種であるX線を使用するため、検査を受けることで放射線に被ばくしてしまうことは避けられません。
「放射線に被ばくするとがんになるリスクが高まる」という話を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。確かに放射線の被ばく線量とがんの相対リスクには関連性があります。
国立がん研究センターの調査によると、放射線の被ばく線量が1,000~2,000ミリシーベルトでがんの相対リスクは1.8倍、500~1,000ミリシーベルトでは1.4倍、200~500ミリシーベルトでは1.19倍、100~200ミリシーベルトでは1.08倍高まると推計されています。
一方、100ミリシーベルト未満の被ばく線量では、発がんリスクが高まることは実証されていません(※6)。
CT検査での被ばく線量は多く見積もっても1回あたり5~30ミリシーベルトです(※7)。
「年に数回CT検査を受ける」という方もいるでしょうが、CT検査で受けた放射線による細胞の損傷は通常数日のうちに修復されます。そのため、「数日間のうちに数回CT検査を受ける」など極端に短い期間に繰り返しCT検査を受けない限り、CT検査の放射線での健康被害は考えづらいと言えるでしょう。
CT検査でがんは発見できる?
CT検査でがんを発見することは可能です。
胃がんや大腸がんは内視鏡検査で発見できますが、肺がんや膵臓がん、腎臓がんなどは超音波検査やX線検査をしても他の臓器に隠れて見えづらいことがあり、なかなか発見できないケースや発見した時には進行しているケースも少なくありません。
特に肺がん、膵臓がん、腎臓がんの早期発見にCT検査は有効です。
CT検査では断層(輪切り)画像が得られるため、X線画像では確認できないようなごく小さながんを発見することもできます。
どのようながんであっても、早期発見・早期治療が最も有効です。少しでも気がかりなことがあった場合は積極的にCT検査を受けましょう。
CT検査を受けて病気を早めに見つけよう
CT検査とは、X線を使って体の断面を撮影する検査のことです。体の内部の各臓器などを輪切りにした画像が得られるため、X線検査と比べると、ごく小さながんでも発見できます。X線検査では発見が難しい肺がんや膵臓がん、腎臓がんの早期発見にCT検査は特に有効です。
また、CT検査はがんだけではなく、さまざまな臓器のわずかな病変も見逃しません。がんはもちろんですが、どのような病気であっても早期発見するに越したことはありません。少しでも体に気になる症状が現れたら、できるだけ早く病院で受診し、CT検査を受けることをおすすめします。
(※1)国立国際医療研究センター病院|CT検査
(※2)北海道大学病院 放射線部|CT
(※3)日本大学医学部附属板橋病院|CT室
(※4)大阪大学医学部附属病院放射線部|代表的な検査について「CT検査」
(※5)聖隷予防検診センター|胸部CT検査について
(※6)環境省|放射線による健康影響等に関する統一的な基礎資料(平成29年度版)第3章 放射線による健康影響
(※7)量子科学技術研究開発機構|CT検査など医療被ばくに関するQ&A
参照日:2024年01月