全日本コーヒー協会の「コーヒーの需要動向に関する基本調査 」によると、2020年日本の1人当たりのコーヒー消費量は1週間で11.53杯 という結果でした(※1)。
日本人の多くが、1日に1杯以上のコーヒーを飲んでいる計算になります。
私たちの生活になじみの深いコーヒーですが、「がん予防に効果がある」と言われていることはご存じでしょうか。この記事では、コーヒーとがん予防の関係や、コーヒーの効能を詳しくお伝えします。
目次
「コーヒーはがん予防に効果がある」は本当?
結論から言えば、「コーヒーはがん予防に効果がある」という話は全く根拠のないものではありません。
コーヒーのがん予防効果はさまざまな研究で科学的に明らかになっています。
コーヒーをよく飲んでいる人は、がんの発生率が低い?
国立がん研究センターがん対策研究所が行った「コーヒー摂取と肝がんの発生率との関係について」という多目的コホート研究(大規模な疫学調査)では、コーヒーをよく飲んでいる人で肝臓がんの発生率が低いことわかっています。
「コーヒーをほとんど飲まない」という人の肝臓がんの発生率を1とした場合、「週に1~2回」コーヒーを飲む人の肝臓がんの発生率は0.75倍、「週に3~4日」では0.79倍、「ほとんど毎日」が0.49倍、「毎日1~2杯」が0.52倍、「毎日3~4杯」が0.48倍、「毎日5杯以上」が0.24倍でした(※2) 。
コーヒーを全く飲まないグループに比べて、よく飲むグループの方が肝臓がんの発生率は有意に下がっています。
また、国立がん研究センターがん対策研究所の「コーヒーと子宮体がんの発生率との関係について」という追跡調査では、コーヒーの消費量が多いほど、子宮がんの発生リスクが低下することも明らかになっています(※3) 。
毎日たくさんのコーヒーを飲めばいいの?
先に紹介した研究では、毎日たくさんのコーヒーを飲めば飲むほど、肝臓がんの発生率が下がっていると言われています(※2) 。
ただし、今より多くのコーヒーを飲めば肝臓がんの発生率が下がるかという点については、さらなる研究が必要であると結論づけられています。
それは、肝臓がんと関係が深い、ウイルス性慢性肝炎や肝硬変などで肝機能が悪い場合、カフェインを代謝する機能が落ち、そもそもコーヒーを飲む量が減るという報告もあるからです(※2) 。
また、体の状態によってはコーヒーを飲むことでの副作用の方が目立つケースもありますが、結果的にコーヒーを多く飲む人が肝臓がんにかかりにくいというだけの可能性もあるのです。
なぜコーヒーを飲む人が肝がんの発生率が低くなるのか?
なぜ、コーヒーを多く飲む人の肝臓がんの発生率が低くなるのかの詳細な機序は明らかになっていません。
コーヒーの持つ慢性的な炎症を抑制する効能により、肝炎の進行を防ぎ、肝臓がんのリスクを低下させるのではとも考えられています(※2) 。
また、コーヒーには老化や、がん、生活習慣病などの予防効果がある抗酸化物質(アンチエイジングに寄与する物質)が含まれていますが、この物質が肝臓がんに予防効果があることがマウスなどの動物実験では明らかになっています(※2) 。
コーヒーに含まれる栄養成分
肝臓がんや子宮がんの予防効果が期待されるコーヒーですが、そもそもコーヒーにはどのような栄養成分が含まれているのでしょうか。コーヒー100mgに含まれる栄養素は、以下の通りです(※4) 。
カロリー:4kcal
水分:98.6g
たんぱく質:0.2g
脂質:微量
炭水化物:0.7g
カルシウム:2mg
リン:7mg
鉄:微量
ナトリウム:1mg
カリウム:65mg
ビタミンB2:0.01mg
ナイアシン:0.8mg
コーヒーのほとんどは水でできており、そのほかの栄養成分はごく微量であることがわかります(※4) 。
コーヒーは1日何杯が適量?
健康効果が期待できるコーヒーですが、いくらでも飲んでいいというものではありません。
ヨーロッパ連合(EU)の欧州食品安全機関(EFSA)は、健康を維持するためのカフェイン摂取量として、1日当たり400mg未満に加えて、1回当たりの摂取量が200mgを超えないようにすることを提言として発表しています。
1杯当たり150mlのコーヒーカップ に換算すると 、1日2~2.5杯までが適量ということになります。
コーヒーの飲みすぎには注意
1日4~5杯(1杯当たり150mlとした場合)のコーヒーを飲みすぎてしまうと、コーヒーに含まれるカフェインを過剰摂取してしまうことになります。このときに過剰摂取することで出現する症状は、めまい、心拍数の増加、興奮、不安、震え、不眠症、下痢、吐き気などです(※5) 。
長期的には、人によって高血圧を発症するリスクが高くなる可能性があることも報告されています(※6)。また、妊婦が高濃度のカフェインを摂取した場合、胎児の発育が阻害されてしまうという報告もあります(※6) 。
適量のコーヒーは健康効果が期待できますが、過剰摂取は反対に健康状態を悪化させてしまうことにつながりかねません。コーヒーの飲みすぎには注意しましょう。
コーヒーの効能
コーヒーを飲むことで、どのような効能を得られるのでしょうか。
ここでは、コーヒーの効能(がん予防以外)を詳しく見ていきましょう。
疲労回復
コーヒーに含まれるカフェインには、疲労回復効果 があります。筋肉や神経を刺激するカフェインの作用が肉体疲労を回復させると言われています。
そのほか、適度なカフェインには集中力を高める効果や、疲労感を減少させ長時間運動を続けられるという効果もあると言われています。
悪玉コレステロール値を下げる
コーヒーには悪玉コレステロール値を改善させる効果もあります。コーヒーに含まれる水溶性のビタミンB群の一種であるニコチン酸には悪玉コレステロール値を下げる効果があるのです。
毎日、ニコチン酸を摂取することで、心筋梗塞などの心疾患の発症リスクを低下させる効果があるとも言われています。
善玉コレステロールの増加
善玉コレステロールは、血液内で増えすぎたコレステロールを回収し、血管内にたまったコレステロールを肝臓に戻す働きをする物質です。
善玉コレステロールが減少してしまうと、血液がスムーズに流れなくなる恐れがあります。適度にコーヒーを飲み続けることで、善玉コレステロールが増加します。
ぜんそくの発作を抑制
副交感神経が緊張しているとき、ぜんそくの発作が起こりやすい とされています。コーヒーに含まれるカフェインには、交換神経を活発にさせる作用があり、これにより副交感神経の働きを抑え、ぜんそくの発作が起こりにくくなる可能性があります。
脂肪を分解する
コーヒーにはダイエット効果があると言われています 。コーヒーに含まれるカフェインには、運動時に脂肪燃焼を促進する効果があります。
ただし、コーヒーに砂糖やクリームを入れてしまうと脂肪燃焼効果が薄れてしまいますので注意しましょう。
消化を促進する
コーヒーに含まれるカフェインが、脳を刺激することで、胃酸の分泌を活発化させ、消化を促進 します。ただし、空腹時にブラックコーヒーを飲むと、胃酸が分泌されすぎて、胃が荒れてしまう原因にもなりかねないため注意してください。
リラックス効果
コーヒーに含まれるカフェインには、自律神経を整える効果があります。交感神経と副交感神経のバランスが取れることでリラックスできるほか、ストレス解消にもつながります。
【まとめ】コーヒーとがん予防について
さまざまな研究結果からコーヒーとがん予防の関係が明らかになってきています。
特に、肝臓がんと子宮がんでは、コーヒーを全く飲まない人よりよく飲む人の方が、発生リスクが有意に低下している可能性があります。
また、コーヒーにはさまざまな健康効果も期待されています。日常生活にコーヒーを上手くう取り入れることで、より健康的に日常生活を過ごせるようになるでしょう。とはいえ、コーヒーの飲みすぎは健康を増進するどころか健康被害をもたらしてしまうリスクがあります。適量を守ってコーヒーを楽しみましょう。
(※1)全日本コーヒー協会|日本のコーヒーの飲用状況
(※2)国立がん研究センターがん対策研究所|コーヒー摂取と肝がんの発生率との関係について
(※3)国立がん研究センターがん対策研究所|コーヒーと子宮体がんの発生率との関係について
(※4)文部科学省 食品成分データベース|し好飲料類/<コーヒー・ココア類>/コーヒー/浸出液 – 01.一般成分表-無機質-ビタミン類
(※5)厚生労働省|食品に含まれるカフェインの過剰摂取についてQ&A ~カフェインの過剰摂取に注意しましょう~
(※6)農林水産省|カフェインの過剰摂取について
参照日:2023年9月