がんは早期発見・早期治療が大切——。
このような話を一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。
医学や医療の進歩により、がんは早期発見できた場合は治る可能性が高く、早期であればあるほど身体的・経済的な負担が軽くて済みます。がんを早期発見できると、治療費はどれくらい抑えられるのでしょうか。がんを早期発見することのメリットとともにお伝えします。
目次
早期発見とはいつまでのこと?
「がんの早期発見」というフレーズはよく聞きますが、がんにおける「早期」とはいつまでのことを指すのでしょうか。
日本人ががんになる確率
まず、日本人ががんになる確率を見てみましょう。
国立がん研究センターの統計(2019年)によると、日本人が生涯で一度でもがんに罹患する確率は、男性が65.5%、女性が51.2% です。
日本人の2人に1人以上の人が、生涯で一度は何らかのがんに罹患する計算になります。また、厚生労働省の人口動態調査(2021年)によると男性の26.2%、女性の17.7% ががんで死亡しています。
がんは見つかるまでに10年以上かかる
発見が遅れるほど、がんの死亡リスクは高くなります。
早期発見できた場合、がんは基本的に発生した臓器だけに留まっています。
国立がん研究センターの「全国がん罹患モニタリング集計」によると、この段階での5年生存率は90%以上。一方でがんが進行し、がんが発生した臓器から遠く離れた臓器まで転移している段階での5年生存率は20%未満です。
がんが発生してから検査などで見つかるようになるまで、どれくらいかかるかご存じでしょうか。実は、がんが発生してから検査などでがんとわかるほど大きくなるまで、10~20年もかかるのです。
早期がんのうち発見できるのは1~2年
早期がんと呼べるのは、発生してから1~2年のがんです。
1~2年で発見できないと、がん細胞は時間の経過とともに増殖し、進行がんと呼ばれる状態になります。
進行がんは早期がんと比べると、生存率が大幅に下がります。早い段階でがんを発見するために、1年に1回のがん検診が呼びかけられているのです。
がんを早期発見することのメリット
1年に1回受けることが推奨されているがん検診ですが、日本のがん検診の受診率は40%ほど。欧米と比べると極端に低い数字で、例えばアメリカの乳がん検診の受診率は80%を超えています。ここで、がん検診を受けてがんを早期発見することのメリットを見てみましょう。
治癒率の向上
がんを早期発見することの最大のメリットは、治癒率の向上です。前述の通り、がんの発見は早期であればあるほど治癒率が向上します。
「がんは不治の病」といわれていたこともありましたが、それは過去の話です。現在、多くの早期がんは治ります。とはいえ、命を守るためにはがんを早期に見つけて治療しなければなりません。そのために行うのが、がん検診なのです。
治療時に身体の負担が少なくて済む
発見が早期であればあるほど治癒率が上がるだけではなく、治療時の経済的・身体的負担も軽くなります。
がんが早期のもので、発生した臓器だけに留まっている場合、身体にメスを入れるのではなく、内視鏡やカメラを使った手術が可能なケースもあります。この場合、手術でがんを切り取るよりも患者さんの身体への負担が軽く、入院日数も短くて済みます。
がんが進行して大きくなった場合は、臓器の一部または全部を切除することもあります。当然ながら、内視鏡やカメラを用いる手術よりも身体への負担は重く、入院も長引くでしょう。
がん以外の病気がわかることも
がん検診はがんを早期に発見するためのものですが、がん以外の病気も発見できます。例えば、子宮がんや食道がんの異型上皮、大腸がんのポリープなど、がんになる前の病変です。こうした病変を見つけられれば、がんになることを防ぐ治療を開始できます。
早期発見できるとどれくらい費用を抑えられる?
がんは早期であればあるほど、治療費の負担が軽いとお伝えしました。
がんの治療には多くのお金が必要になると考えている人が多いと思いますが、早期がんと進行がんでは治療にかかる費用はどれくらい変わるのでしょうか。
がんの治療費は進行度で大きく変わる
がんの治療費は、主に治療内容で決まります。治療内容は早期がん、進行がんで大きく異なります。早期がんの場合、基本となる治療法は手術や放射線治療です。それらの費用に加えて、入院費や検査費用などがかかります。
一方で、進行がんの治療の中心は抗がん剤です。患者さんの状態や症状に応じて抗がん剤を投与し、効果がある限り継続します。効果が見られない場合は、別の抗がん剤を試します。進行がんの治療は数年にわたることもあるため先が読みにくく、費用も高額になることが多いのです。がんの治療費はがんが発生した部位ではなく、進行度合いで大きく変わると考えてください。
早期がんの治療費
早期がんの治療では、手術や放射線治療を中心にがんの根治を目指します。手術や放射線治療にかかる費用のほか、再発防止のための抗がん剤治療の費用や入院費、検査費用などがかかります。
早期がんの場合は、どのタイミングでどのような治療をするのかといったスケジュールを立てやすいため、治療費を予想しやすいといえます。
メットライフ生命のアンケート調査(2018年12月実施)によると、ステージ0(がん細胞が粘膜内に留まっていて、リンパ節に転移していない状態)のがんの治療費の平均は37万円 です。
進行がんの治療費
進行がんの治療の中心は、抗がん剤や分子標的薬です。抗がん剤や分子標的薬の費用のほか、治療中の検査費などがかかります。
抗がん剤の治療は、効果がある限り継続するのが一般的です。抗がん剤治療を続けている間は、その費用がかかります。治療は数年にわたることが多く、そのため治療費の合計を予想するのは非常に難しいといえます。
前出のメットライフ生命のアンケート調査によると、ステージⅣ(全身にがんが広がっている状態)のがんの治療費の平均は108万円 。ステージ0のがんの治療費と比べると、ステージⅣのがんの治療費は約3倍です。
【まとめ】がんの早期発見について
「がんから命を守るには、早期発見・早期治療が重要」というフレーズを一度は聞いたことがあると思いますが、実際に早期がんと進行がんは生存率が大きく異なります。
国立がん研究センターの集計によると、早期がんの5年生存率は90%以上であるのに対し、進行がんの5年生存率は20%以下。さらに早期がんと進行がんは治療費も大きく異なり、ステージⅣの治療費の平均はステージ0の治療費の平均の約3倍です。
がんは10~20年かけて増殖しますが、早期がんとして発見できるのは発生から1~2年のものです。このわずかな期間でがんを発見できるように、定期的にがん検診を受けることをおすすめします。
がん情報サービス|最新がん統計
がん対策推進企業アクション|早期がんを発見できる時間
がん対策推進企業アクション|がんが見つかるまでにかかる時間
おなかの健康ドットコム|早期発見で高まる5年生存率
全国がん罹患モニタリング集計|2015 年罹患数・率報告
公益財団法人日本対がん協会|がん検診のメリット・デメリット
東京都福祉保健局|がん検診の目的とその利益(メリット)・不利益(デメリット)
大阪国際がんセンター|がん検診の受診率向上に向けて!
がん研有明病院|手術療法
八潮市|がん検診のメリット・デメリット
がん治療費.com|がんの治療費
SBI損保|第12話:がんのステージ(病期)で治療費はどう変わるのか?
メットライフ生命|がん経験者の声さらに聴き続けています!
参照日:2023年1月