「がん細胞はブドウ糖をエサにして増殖するので、糖質を摂らないようにしてがんを改善しようという」考え方があります。
糖質制限という一種の栄養管理によってがんが死滅するのであれば、今ある手術や抗がん剤のように痛みも辛さもなさそうですから、今までにない画期的な方法に思えますね。話題にもなった糖質制限によるがん改善法は、はたしてがんに有効なのでしょうか。
目次
がん糖質制限療法とはどんな方法?
糖質制限によってがんを叩くというのはどういうことかというと「がん細胞のエサとなる糖質は、がん患者にとって毒なので糖質制限食やケトン食を取り入れると良い」というものです。
現在、がん細胞はブドウ糖をエサに成長してゆくということがわかっています。がん細胞は正常細胞に比べておよそ8倍ものブドウ糖を必要とし、末期ともなれば正常細胞からブドウ糖を横取りしてでも貪欲に栄養を欲し、半永久的に生き続けることができます。
一方、ブドウ糖は人間のエネルギー源であることは言わずもがなです。そのため、もし体内でブドウ糖が足りなくなると、急遽ブドウ糖に代わるエネルギー生み出されます。
それがケトン体というもので、ブドウ糖と異なる点は、正常細胞はケトン体を栄養にすることができるのに対し、がん細胞はそれができないということです。
このメカニズムを応用し、がんに栄養を与えないようにすることでがんを死滅させるというのがこの方法です。
さらに、ケトン体は
- がんを誘発する酵素の働きを抑える
- がんの発生起源と考えられる乳酸を排除して、ミトコンドリアの活性化を促す「長寿遺伝子」を働かせる
という、それ自体にもがん治療にとって良い作用をもたらすとされています。
これにより、がんを弱らせ正常細胞は元気にするという、いわば良いこと尽くしの方法なのです。
がん細胞に糖質制限は有効か?
実は糖質をコントロールすることでがんを改善するという食事法は以前からあるものです。
しかし、これまでがん治療においてメインとされている手術や抗がん剤といった治療に重きが置かれ、栄養管理によるものは注目されてきませんでした。
さらにブドウ糖を合成するたんぱく質は、周知のとおり3大栄養素として欠くことができないものですので、たんぱく質の摂取を制限することに抵抗があったために糖質制限でがんを改善するという考えは進展しませんでした。
そのため少しずつこの方法をがん治療として取り入れようという動きがあるものの、現在動物実験及び、一部のごく少ない人数のがん患者さんによる臨床試験にとどまっている段階であります。
ですので糖ががんのエサになるという理論はわかっているものの、証拠に乏しく、実際にどれだけこの方法が有効かという点は明らかになっていないと言えます。
今後より多くのがん患者さんによる多方向からの検証によって有効性が明らかになるのを待つのみといったところでしょう。
糖質制限によるがん治療はまだ確立されていない
糖質制限によってがんを死滅させる方法は、現段階では確立された手法ではありません。栄養の管理は栄養士など専門的な知識のもとにコントロールされるべきという点でも、患者さんの一存で安易に取り入れるものではないと思います。
しかし数人とはいえども末期がんの患者さんによる試験で、がんの改善が見られたという報告もあります(下記参考資料にあります)。ぜひとも今後の動向に注視したいと思います。
東洋経済オンラインがん細胞を兵糧攻め!「究極糖質制限」の威力