皆様の主治医はどんな先生でしょうか。主治医への不満はありますか?今回は多くの方が感じる主治医に対する悩みや疑問を挙げてゆきたいと思います。同じことで悩んでいる方の解決の糸口になればと思います。
目次
がんの告知をするのは冷たい医者?
がん治療の現場において以前は医師が、がんであること、病期、検査結果などを患者に伝えるということはしませんでした。そのため、治療は全て医師にお任せというスタイルが当然でした。
しかし、ここ数年の間に患者さんが自分の病気を知り、治療法をはじめ、医師、医療機関までも自由に選択することが当たり前になってきました。患者さんの知る権利、自分で決定する権利、最善の医療を受ける権利が叫ばれるようになってきたのです。
患者さんのご家族の中には、がんであることや再発したことを本人に伝えたくないがゆえ、医師が状況を包み隠さず話してしまうことを冷たいと感じる方もいるようです。命に関することを伝えるという点では医師も伝え方に配慮が必要でしょう。しかし、このような背景を考えると、医師が患者に率直に病状などを話すことはいわば普通のことです。
それに対して主治医に不満を抱き信頼できなくなるのは考え物です。告知は医師にとって大事な務めの一つなのです。あなたの主治医も現状を伝えることで、現実を受け止め、がんと闘ってほしいと願っているかもしれません。それでも、どうしても本人に伝えたくないというのであれば、その旨を主治医や看護師に事前に相談しておくと配慮してくれるはずです。
患者さんの気持ちの移ろい
「意思表示書」や「意思確認書」などといった言葉を聞いたことはありますか?
最近は、患者さんが自らの意思を表明するため、元気なときに終末期のプランを作成しておくことが推奨されています。例えば抗がん剤が効かなくなったとき、それ以上の延命治療はしないといったことや、緊急時に心肺蘇生をしてほしいかどうかなどといった内容です。
あらかじめ希望を周囲に伝えておくことで緊急事態に意識がなくなったり、あるいは認知症になって意思決定ができなくなったときでも医療者や家族が本人の意思に沿って対応できるようになります。
しかし、この文書で悩みを抱えてしまう患者さんがいます。
サインしてから時が経ち、実際にその状況になったとき気持ちが変わる患者さんは少なくありません。文書はいつでもサインを撤回できるとしていますが、決めていたことを変えることで主治医を困らせるのではないかと考えてしまうようです。あるいは露骨に嫌な態度を取られ落ち込んでしまう方もいます。
しかし、まだ元気なときに思ったことと、治療が残りわずかになったときや余命を告げられたときなどに思うことが違うのは、いわば当然とも言えます。死が近くなった時のことを考えたくない、と曖昧にサインする方もいらっしゃるでしょう。ですので、以前と気持ちに変化があったことや気持ちが定まらないことを主治医に告げることに躊躇する必要はありません。きちんとご自身の今の気持ちを伝えましょう。主治医に言いづらい場合は看護師に相談してみましょう。
セカンドオピニオンは主治医を信頼していない?
セカンドオピニオンという言葉はいまや広く認識されていますが、セカンドオピニオンを受けるのはがん治療に限ったことではありません。しかし、どこの病院においてもがんのセカンドオピニオンが多数を占めているようです。
セカンドオピニオンというのは、治療などに関して主治医以外の医師に意見を求めることです。これだけセカンドオピニオンという言葉が浸透しその需要も高まっていることを考えると、そこまでしないと患者さんは納得できず、それががん治療の難しさを物語っているように思います。
注意しなくてはいけないのは、セカンドオピニオンはあくまで参考意見だということです。最初の診断や現在の治療方針の間違いを指摘するものではありません。そして、紹介先の病院にその後の診療を引き継ぐ、転院するということでもありません。
セカンドオピニオンには様々な利点があります。治療の妥当性に疑問を抱きセカンドオピニオンを受けた結果、別の医師から意見を聞くことで、より治療の重要性が認識できたり理解が深まるということ、また稀に医師の見立てに相違がある場合、治療法そのものが変わる場合もあります。セカンドオピニオンを受けたいと思ったらまずは主治医に相談し、紹介状を書いてもらい、検査結果のデータなど揃えてもらう必要があります。
よくある悩みの一つに、セカンドオピニオンを受けたいと言ったら主治医を信頼していないようで言い出しづらいというものがあります。少し前までは他の医師に相談すると言ったら気分を害する医師がいたかもしれませんが、現在ではそのような心配はほぼ無用です。
医療現場ではセカンドオピニオンはとても日常的で紹介状も簡単に書いてもらうことができます。それほどセカンドオピニオンは患者さんの当然の権利であるという認識が広まっていますし、がん診療連携拠点病院ではセカンドオピニオンを推奨しています。
また、患者さんがセカンドオピニオンを受けたいと思う理由の一つに、主治医と折り合いが悪いということがあります。先に述べたようにセカンドオピニオンを受けることは転院とは異なりますが、セカンドオピニオンを受けた結果転院し、紹介先の先生にお世話になるケースはあります。主治医との相性は決して理屈ではありませんので難しい問題です。病院内での担当医の変更ができず解決できないときはセカンドオピニオンという手段を使って転院することも一つの方法と言えます。
医師や看護師に「お礼」はいるの?
入退院や手術の際、医師や看護師に対し、患者さんやその家族から「お礼」として金品を送るという習慣があります。いわゆる心付けです。
現在はだいぶ減ったようですが、ひと昔前まではそのような習慣がありました。院内の張り紙に「お礼禁止」の注意書きをわざわざしている病院もありますので「渡した方が手術をうまくしてくれるのではないか」などと考える方は未だに少なくないのでしょう。
しかし、そのような考えは誤解であり、お礼を渡す必要はありません。医師との信頼関係は敬いや感謝の言葉などの地道な努力で作り上げるべきでしょう。
医師は腕?人柄?
どのような疾病でも言えることですが、良い医者に診てもらいたいというのは患者全員に共通した想いだと思います。では、良い医者とはどんな医者でしょうか。
患者さんや家族の間では主治医のとっつきにくさ、横柄さ、冷たさなどがたびたび不満の種となります。しかし、患者さんが納得のゆく治療を受けるためには医師としての「腕」が大切です。その腕というのは権威や実績だけではありません。そのような熟練した医師はすでに治療の現場から離れている場合もあるからです。
新しい治療法などに関してはむしろ若手の医師のほうが詳しく、積極的であることもあります。主治医の見た目が若そうで頼りないと心配される方もいらっしゃいますが、見た目では判断できません。自分の判断だけで医師を選ぶのではなく、状況やいろいろな意見を見極めて任せる医師を選ぶことが納得のゆく治療を受ける第一歩となるのです。
終わりに
がんとの闘いは長期戦になりますし、命に関わる病気ですから治療にあたって主治医は重要なポイントになると思います。たとえ不満があっても命を預けていると考えると、対等で言いたいことを言える関係を築くというのは理想に過ぎないかもしれません。
自分の気持ち次第で改善できること、家族や看護師、ソーシャルワーカーなど、人に相談すれば気持ちを整理できること、医師を変えることでしか解決しないこと、皆様の悩みの性質はそれぞれだと思います。
良い関係とまではいかずとも、不満や不安を抱かずに主治医と付き合っていけるようこの記事を参考にしてください。