グルテンフリーとは?メリットや注意事項・がんとの関係性を解説

グルテンフリーとは?メリットや注意事項・がんとの関係性を解説

グルテンフリーが体に良いと聞いたものの、がんとの関係性が気になる方がいるのではないでしょうか。

本記事では、グルテンフリーの概要やメリット・注意事項、がんとの関係性について解説します。

グルテンフリーによる食生活を検討する方は、健康上のメリット・デメリットを正しく理解しましょう。

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目次

グルテンフリーとは

グルテンフリーとは、「グルテンを一定以上含まない」ことを意味します。一般的には、グルテンを含む食品を取り入れないことを指します。

グルテンとは、小麦やライ麦、大麦などに含まれるタンパク質の一種です。小麦粉に水を加えて練ると、グルテニンやグリアジンといった2種類のタンパク質が結びつき、グルテンが作られます。

グルテンの特徴は、食品に粘弾性(粘性と弾性の両方を合わせた性質)を持っていることです。この性質を活かしながら、パスタやピザ、パンやケーキなどを作る際に用いられています。

グルテンが体に与える影響

グルテンは身近な食品に含まれる一方で、体に対してさまざまな影響を与える可能性があります。グルテンフリーの知識を深めたい方は、以下の内容を知っておきましょう。

腸に炎症を引き起こす

グルテンには、粘性があるため、腸の粘膜に貼りつき、異物として蓄積されていきます。グルテンが体内に溜まる、腸内粘膜が影響を受け、主に以下の症状が起こります。

  • 下痢
  • 便秘
  • 腹痛
  • 栄失調
  • 片頭痛
  • リウマチ
  • 月経前症候群(PMS)

血糖値を上げる

グルテンを含む小麦には、「アミロペクチンA」と呼ばれる成分が含まれており、血糖値を上昇させる作用があるのが特徴です。

慢性的に血糖値が上昇すると、インスリンが過剰に分泌され、肥満のリスクが高まることがあります。また、急激に血糖値が上がると、イライラや眠気、精神的な不安などを引き起こすことがあります。

依存性を引き起こす

グルテンは、モルヒネに似たアミノ酸配列をしていることから、依存性があるのが特徴です。モルヒネとは、アヘンに含まれる麻薬性の鎮痛薬です。

グルテンを長期的に摂取すると、体がグルテンを含むパンやパスタなどを欲するようになります。

グルテンフリーが注目されている理由

グルテンフリーが注目されている背景には、栄養吸収障害の代表的な病気とされるセリアック病が関係しているケースがあります。

グルテンに対する免疫反応が起こり、小腸における栄養吸収の機能が損なわれ、下痢や腹痛などを引き起こします。

セリアック病の治療法はグルテンフリーです。グルテンを含まない食品を食べることで、腸粘膜が回復し、下痢や栄養失調などの改善が期待できます。

セリアック病はアメリカで113人に1人(約1%)の割合で発症するとされ、問題視されていますが、日本で起こることは極めてまれです。

しかし、グルテンによるリスクが示されるようになり、現在では健康意識の高い方から注目を集め、支持されるようになっています。

グルテンフリーとがんの関係性

グルテンが原因の一つとなるセリアック病にかかると、小腸のリンパ腫や消化管のがんのリスクを高めるとされています。しかし、グルテンの摂取自体ががんのリスクを高めることは示されていません。

約16万人の国民を対象としたイギリスの研究によると、グルテンの摂取がセリアック病のない成人の全死因死亡率およびがん死亡率と有意な関連がないことが報告されています。

また、グルテンの摂取量と消化管のがん発症率の関係性を調査したアメリカの研究によると、グルテンの摂取は消化器系がんのリスク増加と関連がないことが示されました。

上記の通り、セリアック病はがんの発症と関連があるものの、グルテンとは直接関係がないことが報告されています。そのため、グルテンフリーでグルテンの摂取量を減らしたとしてもがんのリスク低下にはつながらないと考えられるでしょう。

グルテンフリーのメリット

グルテンフリーのメリットは、グルテンが引き金になって起こるセリアック病の予防につながる点です。また、グルテンには依存性があるとされているため、摂取しない生活を送ることで食べ過ぎが抑えられ、ダイエット効果が期待できます。さらに、グルテンを摂取しないことで、血糖値の上昇が防止でき、生活習慣病のリスクが下げられます。

パスタやピザ、パンやケーキ、うどんやラーメンといった小麦食品をよく食べており、体型が気になる方はグルテンフリーを試してみてはいかがでしょうか。

グルテンフリーの注意事項

グルテンフリーの生活を実践する際に注意すべき点は、食事の選択肢が少なくなることです。グルテンが含まれる食品は多く存在するため、料理をする際の食材選びや、外食をする際の選択肢に悩まれる方もいます。特に、グルテンが含まれるピザやケーキ、パンやパスタなどを好む方にとっては、悩みの種になるでしょう。

また、小麦にはグルテンが含まれていますが、健康を維持するうえで必要な食物繊維も含まれています。そのため、グルテンフリーの食生活を続けることで食物繊維が不足し、栄養バランスが崩れる可能性もあります。

これからグルテンフリーをスタートする際は、食物繊維を含む食べ物を意識的に採り入れたり、サプリメントで補ったりすることも重要です。

グルテンフリーに関するよくある質問

グルテンフリーに関するよくある質問と回答をご紹介します。これからグルテンフリーを実践してみたい方は、ぜひ参考にしてみてください。

グルテンフリーと糖質制限の違いは何ですか?

グルテンフリーは、グルテンを含む小麦を控える生活です。一方で、糖質制限は、ご飯やパン、麺や芋類などの炭水化物や糖質を含む甘いものなどを控えることを指します。

グルテンフリー食品を見分ける方法はありますか?

「グルテンフリー認証マーク」の有無を確認することで、グルテンフリー食品かどうかが確認できます。グルテンフリー認証マークとは、認証機関であるGFCO(Gluten-Free Certification Organization)の認証基準(グルテンの含有量が10ppm以下)を満たす食品に付与されるマークです(※1)

どうしてもグルテンを含むパンが食べたくなった場合の対処法はありますか?

グルテンフリーの生活でどうしてもパンが食べたくなったら、米粉パンを試してみるのをおすすめします。米粉を使用したパンは、おいしい味わいやパンらしい食感も楽しめます。パンが食べたくなったら、グルテンフリーの米粉パンをぜひ検討してみてくださいね。

グルテンフリーを検討するときはメリット・デメリットを踏まえよう

グルテンフリーとは、グルテンを一定以上含まない食品を摂取する、もしくはグルテンを含む食品を避けるライフスタイルことです。グルテンを過剰に摂取すると、セリアック病を発症するリスクが高まると言われています。セリアック病は消化管のがんのリスクが高まることが報告されています。また、グルテンは、腸に炎症を引き起こしたり、血糖値を急激に上昇させたりすることも分かっています。

このような背景から、グルテンフリーによる食生活が注目されています。しかし、グルテンフリーを続けると、小麦に含まれる食物繊維が摂取できなくなり、栄養バランスが崩れるリスクがあります。日常生活でグルテンフリーを実践する心がける際は、食物繊維を含む食べ物を意識的に食べたり、サプリメントで補ったりすることが重要です。

グルテンフリーを検討する場合は、メリット・デメリットを踏まえ、健康リスクに注意して決断しましょう。

(※1)Gluten-Free Certification Organization|Home
参照日:2025年1月

井林 雄太

医師|日本内科学会認定内科医・日本内分泌内科専門医

福岡ハートネット病院勤務。国立大学医学部卒。日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。
「一般社団法人 正しい医療知識を広める会」所属。総合内科/内分泌代謝/糖尿病の臨床に加え栄養学/アンチエイジング学が専門。
臨床業務をこなしつつ、大手医学出版社の専門書執筆の傍ら、企業コンサルもこなす。「正しい医療知識を広める」医師ライターとして多数の記事作成・監修を行っている。 

プロフィール詳細

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