CT検査とMRI検査の違いはなに?それぞれの特徴とメリット・デメリットを解説

CT検査とMRI検査の違いはなに?それぞれの特徴とメリット・デメリットを解説

CT検査とMRI検査は、いずれも健康診断や人間ドックで行われることの多い検査です。一般的によく行われる検査だけに、その存在を全く知らないという方も少ないのではないでしょうか。とはいえ、それぞれどこがどのように違うのかを詳しく説明できる方は少ないでしょう。

そこで本記事では、CT検査とMRI検査の違いやメリット・デメリットを解説します。どちらの検査を受けるべきか迷っている方はぜひ参考にしてください。

受付中がんの臨床試験、研究・治験広告のご案内

製薬企業や医療機関、研究グループから依頼を受け、治験審査委員会の審議で承認された臨床試験、治験を掲載しています。

がんワクチン療法がんワクチン療法

目次

CT検査とMRI検査は何が違うの?

CT検査とMRI検査は、どちらも円筒状の機械に横たわった状態で検査をするため、その違いがよく分からないという方も多いのではないでしょうか。

検査に使う機械の見た目はよく似ていますが、CT検査とMRI検査とでは、検査の仕組みが全く異なります。

X線を用いて検査を行うのがCT検査 で、MRI検査は強い磁場と電波を使って 検査を行います。それぞれの検査の仕組みを以下から詳しく見ていきましょう。

X線を使うCT検査

CT検査ではX線を用いて体の内部の状態を画像化します。機械に入った人体に全方位からX線を照射および撮影し、人体を通過したX線量のデータを収集します。収集したデータをコンピューターで処理し、人体の断層画像として描写する仕組みです。

磁場と電磁波を使うMRI検査

X線ではなく、非常に強力な磁石による磁場と電磁波を用いて人体の断面画像を撮影するのがMRI検査です。人体は水素原子の塊でできていますが、強い磁場を帯びた装置の内部に入った人体に外部から電磁波を与えると水素原子が振動し、微弱な電磁波が発生します。この電磁波データを電気信号に変換することで、断層画像を描出する仕組みです。

CT検査とMRI検査、それぞれの特徴

お伝えしたようにCT検査とMRI検査は、検査を行う機械は似ているものの、人体の断層画像を得る仕組みは全く異なります。ここでは、CT検査とMRI検査のそれぞれのメリットとデメリットを見ていきましょう。

CT検査のメリット

CT検査のメリットとしてまず挙げられるのは、空間分解能に優れて いるため、微細なものまでよく見える点です。

特に骨の内部構造を描出するのが得意で、骨の詳細な情報まで得ることができます。また、解像力に優れているため、非常に小さな病変も確認できます。さらに、広範囲を短時間に撮影できる点もメリットです。

MRI検査の場合は、ステントなど体内に金属 が入っている場合は、検査ができない可能性 がありますが、CT検査では体内に金属が入っていても検査可能です。

CT検査のデメリット

CT検査のデメリットは、放射線の一種であるX線を使うことから、放射線の被ばく のリスクがある点です。ただし、1回あたりのCT検査による被ばく線 量は健康に影響を与えるような量ではありません。過度に心配する必要はないでしょう。

また、筋肉や皮膚、皮下組織、血管、末梢(まっしょう)神経といった軟部組織の変化がMRIと比べるとわかりにくい点も デメリットとして挙げられます。さらに、骨に囲まれている箇所を撮影する際に画像の乱れが生じやすい点もデメリットの一つです。

MRI検査のメリット

MRI検査の一番のメリットは、組織分解能に優れているため、正常な組織や病変部分とのコントラストが明瞭に描出できる点です 。

筋肉や靭帯(じんたい)、半月板といった軟部組織構造の描出に特に優れています。骨に囲まれている箇所を撮影する際に画像の乱れが生じにくい点もメリットとして挙げられます。また、放射線の被ばく がない点も被ばく が気になる方にとってはメリットでしょう。

MRI検査のデメリット

MRI検査の最大のデメリットは、心臓ペースメーカーなど磁気に反応する機器を体に埋め込んでいる場合、検査ができないことがある点です。さらに、MRI装置の内部は非常に狭いため、閉所恐怖症に悩ませている方も検査を受けることは難しいでしょう。

骨などの石灰化病変の精査がしづらい点もデメリット として押さえておかなければなりません。

CT検査とMRI検査はどちらが優れているの?

「CT検査とMRI検査の仕組みが違うことはわかったけれど、結局、どちらが優れているの?」と感じる方も多いのではないでしょうか。どちらの検査を受けるべきか迷っている方もいると思います。CT検査とMRI検査を費用や検査時間などで比較していきましょう。

相場費用が安いのはCT検査

CT検査とMRI検査で費用が安いのはCT検査です(※1)

造影剤を使わずに撮影を行う単純CT検査の費用相場は、1万2,000~2万7,000円ほどです。 窓口負担の目安は、健康保険の3割負担の方で6,000~8,000円ほど、1割負担の方で2,000~2,700円ほどとなります。

造影剤を使って撮影を行う造影CT検査の費用相場は3万~4万円ほどであり、窓口負担は健康保険の3割負担の方で9,000~1万2,000円ほど、1割負担の方で3,000円から4,000円ほどとなっています。

一方、造影剤を使わないMRI検査の費用相場は2万7,000~3万4,000円ほど。窓口負担の目安は、健康保険の3割負担の方で8,000~1万円ほど、1割負担の方で2,700~3,400円ほどとなります。

造影剤を使用するMRI検査の費用相場は3万4,000~5万7,000円ほどです。窓口負担の目安は、健康保険の3割負担の方で1万~1万7,000円ほど、1割負担の方で3,400~5,700円ほどとなります。

検査時間が長くかかるのはMRI検査

検査時間が長いのはMRI検査です。MRI検査の検査時間は30分から1時間ほどです(※2)

一つの断面を撮影するのに3~5分 ほどかかるのが一般的で、撮影の最中に動いてしまうと撮影し直さなければならなくなります。

一方、CT検査の検査時間は5分~10分程度であり、短時間に広範囲を撮影できるのがCT検査の特徴の一つです(※3)

脳疾患におけるCTとMRI検査の使い分け

脳の疾患の代表例に、くも膜下出血、脳出血、外傷、脳腫瘍、脳梗塞がありますが、MRIの得意分野は脳梗塞、脳腫瘍、血管病変です。 MRI検査はCT検査より細かく評価ができ、CT検査では発見できないような脳梗塞や動脈瘤、早期の脳腫瘍、血管病変、脳動静脈奇形などを診断できます。

一方、CT検査が得意とするのは、くも膜下出血・脳出血といった出血性病変や外傷 です。小さい脳梗塞や脳腫瘍に関しては、CT検査だけでは熟練していないと診断が難しいでしょう。 また、脳動脈瘤(りゅう)、硬膜動静脈奇形、小さな脳動静脈奇形や急性期脳梗塞はCT検査で診断をつけることは 困難です。

特徴を把握したうえで最適な検査を

CT検査の得意分野は脳出血や肺がん、内臓疾患などです。一方、MRI検査が得意とするのは、早期の脳梗塞や脳腫瘍、血管病変、肝臓や胆嚢(たんのう)など動かない臓器の疾患などです。また、救急時など急いで全身を検査しなければならない場合に向いているのは短時間に広範囲を検査できるCT検査です。

CT検査とMRI検査は、見た目が同じような機械を用いて行うため混同されがちですが、検査の仕組みや得意分野が異なります。それぞれの検査の特徴をきちんと把握したうえで、より適切な検査を選ぶようにしましょう。

(※1)国立国語研究所|56.MRI(エムアールアイ)
(※2)公立学校共済組合 中国中央病院|MRI検査
(※3)公立学校共済組合 中国中央病院|CT検査
参照日:2024年01月

井林 雄太

医師|日本内科学会認定内科医・日本内分泌内科専門医

福岡ハートネット病院勤務。国立大学医学部卒。日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。
「一般社団法人 正しい医療知識を広める会」所属。総合内科/内分泌代謝/糖尿病の臨床に加え栄養学/アンチエイジング学が専門。
臨床業務をこなしつつ、大手医学出版社の専門書執筆の傍ら、企業コンサルもこなす。「正しい医療知識を広める」医師ライターとして多数の記事作成・監修を行っている。 

プロフィール詳細

受付中がんの臨床試験、研究・治験広告のご案内

製薬企業や医療機関、研究グループから依頼を受け、治験審査委員会の審議で承認された臨床試験、治験を掲載しています。

がんワクチン療法 がんワクチン療法

各がんの解説