肺がんで手術できないと言われたら余命はどのくらい?他の治療方法も解説
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肺がんで手術できないと言われたら余命はどのくらい?他の治療方法も解説

日本において肺がんは、男女ともに罹患率が高く、患者数の多いがんの一つです。根治を目指す治療法として手術がありますが、ステージや全身状態などによっては、手術が困難と判断されるケースも少なくありません。

本記事では、「肺がんの手術ができない」と告知された後の治療、余命、および緩和ケアの導入について詳しく解説します

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目次

肺がんで手術できないと言われた時の余命は?で手術できないと言われた時の余命は?

「手術が難しい」と言われると不安になる方もいるかもしれませんが、それにはさまざまな医学的な理由があります。特に、肺がんの手術ができないと言われる主な原因として、がんが見つかるタイミングが大きく関わっています。

肺がんは初期の自覚症状がほとんどないため、診断時にはステージ3に至っているケースが少なくありません。この進行した段階では、がんが大きくなり周囲に広がったり、リンパ節や他の臓器へ転移したりしています。

そのため、がん細胞を切除する手術が適切でないと判断され、手術の適用外になるケースも少なくありません。これは、年齢や持病などで、肺機能が低下していたり、手術に耐えられない体力と判断された場合も同様です。

しかし、「肺がんの手術ができないこと」は「治療できない」というわけではありません。治療が手遅れになったというわけではなく、手術以外にも薬物療法や放射線治療など別の選択肢があります。肺がんの主な治療法は、ステージ分類に基づいて決定されます。

なぜ手術が難しい?理由と判断のポイント

肺がんの治療において「手術をしない」と判断した場合、その基準が気になる方は少なくありません。肺がんの手術が難しい、あるいは不可能と判断される主な理由は、がんの進行度と、患者さんの全身状態(体力の維持や合併症の有無など)が挙げられます。ここで、判断ポイントを詳しく解説していきます。

ステージや転移による制約

肺がんの手術の可否は、がんの進行度で判断されます。がんのステージは、TNM分類に基づいて決められ、腫瘍の大きさや周囲への広がり(T)、リンパ節への転移の有無と範囲(N)、離れた臓器への転移(M)を組み合わせて、1期か4期まで分類されます(※2)

手術が可能なケースは、1期・2期、および3期の一部に限られており、肺がん患者さん全体では2割程度にとどまるとされています(※3)。診断時にどの程度進行しているかどうかが、手術の決め手となるのです。

例えば、他の臓器に肺がんが転移している「ステージ4」と判断された場合、手術での根治は期待できません。そのため、基本的に手術の適用外と判断され、薬物療法や放射線療法が選択されます。

体力や臓器機能も大きな要因

手術の適用は、がんのステージだけでなく、患者さんの体力の状態も考慮して判断されます。麻酔や出血のリスクを伴う手術に耐えられるかが重要な要素となるため、これらの臓器に疾患がある場合や全身状態が優れない場合は、手術が困難と判断されることがあります。

特にステージ3の肺がんの手術の適用は、がんの大きさや転移の範囲に加え、心肺機能、合併症、年齢、喫煙歴などを総合的に評価し、手術可能となるケースは限られます。

また、喫煙歴や高齢により手術後の合併症の発症リスクが高い患者さんは、手術以外の治療が優先されることもあります。したがって、適切な治療方針の決定には、患者さん個々の全身状態を踏まえた慎重な判断が重要です。

手術できない肺がんで選べる主な治療法肺がんで選べる主な治療法

手術が困難な肺がんの主な治療法は、放射線治療と薬物療法の2つです。進行度やがんの種類によっては、2つを組み合わせた化学放射線療法が選択されると考えられます。ほかにも免疫療法や分子標的薬が選択されるケースがあります。

以下でそれぞれの治療法について詳しく解説します。

抗がん剤治療(薬物療法)治療(薬物療法)

肺がんの薬物療法では主に抗がん剤が用いられます。この治療は、がんの治癒を目指すほか、進行抑制や関連する症状の緩和が目的としています。特に、がんが進行し、手術による切除が困難な場合、抗がん剤治療(薬物療法)が治療の中心です。

ただし、抗がん剤を用いる治療は、正常な細胞にも影響を及ぼす点に注意しなくてはなりません。主な副作用は、脱毛、口内炎、吐き気や嘔吐、骨髄抑制(白血球の低下)です。副作用の程度は薬物の種類によっても異なり、個人差があります。

また、複数の薬剤との組み合わせや、術後の再発・転移を予防する目的など、さまざまな方法で用いられます。効果を高めるために放射線治療が併用されることもあります。

放射線治療

放射線治療は、がん細胞に放射線を照射することでがんのDNAを傷つけ、細胞を攻撃する治療法です。この治療は、がんの治癒や進行の抑制、症状の緩和や延命を目的に実施されます。薬物療法や手術と比較すると全身の影響が少ないとされており、がんの病巣に集中して照射できるというメリットがあります。

主な対象は切除困難と判断されたⅢ期の非小細胞肺がんで、全身状態が良い場合は薬物療法も併用して治療を行います。手術や薬物療法ができない方、高齢の患者さんも対象です。

よく起こる放射線治療の主な副作用は以下の通りです。

  • 皮膚炎
  • 食道の炎症
  • 白血球減少
  • 貧血

肺は放射線の影響を受けやすい臓器のため、まれに炎症が起こり重症化するケースがあります。放射線治療後の数カ月間で、発熱や息苦しさ、空咳などの症状がある場合は主治医に相談することが重要です。

免疫療法・分子標的薬

肺がんの治療には、上記のがん治療法に加えて「免疫療法」や「分子標的薬」という新しい治療法も用いられます。これらは保険適用の対象になる場合があり、条件を満たす患者さんにとって有効な選択肢の一つになります。

このうち、免疫療法は、身体の免疫力を高めることでがん細胞への攻撃を促す治療法の一つです。ただし、全ての方に有効であるとは限りません。がんの種類や体質によって、効果の現れ方が異なります。

一方、分子標的薬は、がん細胞に特有の「ドライバー遺伝子変異」を標的とする薬剤で、副作用が少ない点が特徴です。ただし、適用対象はドライバー遺伝子変異を持つ患者さんに限られます。これらの治療を行えるかどうかは、治療開始前に遺伝子検査を行った結果で判断されます。

肺がんのステージ別の余命目安と延命の可能性のステージ別の余命目安と延命の可能性

肺がんの生存率は、がんの種類やステージによっても異なります。一般的によく使われる予後予測は「5年生存率」です。生存率が100%に近いほど治療効果が出やすく、0%に近いほど治療効果が出にくい病気とされています。

がん全体の5年相対生存率は男性で62.0%、女性で66.9%、全体では64.1%です(2009〜2011年のデータ)(※4)

これに対し、肺がんの5年生存率は、同じデータでは男性が29.5%、女性が46.8%、全体では34.9%とされ、がん全体の数値と比較すると低い数値となっています(※4)

また、肺がんのステージ別の平均的な余命は以下の通りです

段階平均的な余命
ステージ1B53カ月
ステージ2A37カ月
ステージ2B〜3B20カ月前後
ステージ411カ月

ここでの平均的な余命とは、実際の寿命の平均ではなく、約半数の方が亡くなる時期の目安です。治療方法や体力によって大きく前後するため、平均寿命よりも5年生存率が、がんでは重要視されます

喫煙歴がある肺がんに罹患者は、脳卒中や心疾患といった命に関わる病気も発症しやすいとされており、これらの病気が平均寿命に影響を与えている可能性も少なくありません

より詳細な予後や平均寿命について知りたい方は、以下の記事も参考にしてみてください。

手術できない肺がんで「治療しない」選択と緩和ケアの考え方肺がんで「治療しない」選択と緩和ケアの考え方

従来の緩和ケアは、終末期の患者さん向けの選択肢というイメージがありました。しかし、近年ではがんの診断が下された時点から緩和ケアが導入されるようになっています。

緩和ケアの目的は、がんそのものの治療に伴う身体的な苦痛だけではなく、仕事や将来への不安といった苦痛の緩和、さらには治療の副作用や合併症の軽減にもあります。

具体的には、手術が難しい肺がんで「治療しない」という選択をした場合、治療よりも症状の緩和とQOL(生活の質)の向上を最優先とした緩和ケア中心の治療を行います

緩和ケアを早期に取り入れるメリット

がんの治療中に、痛みや息苦しさ、吐き気など身体の不調を抱えることになります。また、がんの診断を受けた際には精神的にも不安やストレスを抱え込んでしまう方も少なくありません。

緩和ケアを早期の段階から導入することで、身体的・心理的苦痛を和らげ、がん治療に専念しやすい環境を提供できます。医師や看護師、ソーシャルワーカーなどがチームで患者さんを支えます。治療の初期段階から並行して緩和ケアを実施することで、患者さんの不安を軽減し、QOL(生活の質)を維持しながら、より良い生活を送ることが可能です

また、緩和ケアは患者さんだけでなく、ご家族のサポートも大切にしています。介護や通院の負担、精神的な不安を抱えるご家族は「第二の患者」とも呼ばれており、心理的な支援が必要です。患者さんが肺がんと向き合い、自分らしく生活するために家族の支えは欠かせません。

高齢者や合併症がある場合の治療選び

肺がんの治療は、年齢だけで決まるわけではありません。大切なのは「身体が治療にどれくらい耐えられるか」を判断することです。例えば、普段の生活でどの程度動けるか、肺や心臓などの働き、栄養状態などを丁寧に調べることが求められています。

治療の選択肢には、身体への負担が少なく、治療効果が期待できる「定位放射線治療法」や「特定の遺伝子を標的とする分子標的薬」があります

また、体力の維持を重視される方には、免疫療法を選択されるケースも増えています。一方、体力や臓器機能が保たれている場合は、手術や抗がん剤治療なども選択肢として含まれます。

治療方針を決めるうえで重要なのは、「どこまで治療を頑張りたいか」「副作用と効果のバランスをどのように考えるか」といった本人の希望です。また、ご家族と支え合いながら現実的な選択を行うことが求められます。高齢者や持病がある方は、主治医と十分話し合い、納得できる治療を考えていきましょう

肺がんで手術ができないと言われたら専門家へ相談しようで手術ができないと言われたら専門家へ相談しよう

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肺がんは進行してから発見されることが少なくありません。診断時に手術の適用外とみなされたり、患者さんの年齢(高齢)や全身状態により手術が困難と判断されることもあります。

ただし、肺がんの手術ができないと診断された場合でも、放射線治療や薬物治療、免疫療法などの治療の選択肢はあります。重要なのは、患者さん本人とご家族、医療従事者が、どのような治療方針で進めていくかを十分に話し合って決めることです。

肺がんの治療法や手術ができない時の治療方針についてお悩みの方は、一人で抱え込まず、専門家に相談しましょう。

(※1)公益財団法人 がん研究振興財団|がんの統計2025
(※2)国立研究開発法人国立がん研究センター|肺がん 非小細胞肺がん 治療
(※3)国立研究開発法人国立がん研究センター|院内がん登録 2023 年全国集計
(※4)国立研究開発法人国立がん研究センター|最新がん統計

井林 雄太

医師|日本内科学会認定内科医・日本内分泌内科専門医

福岡ハートネット病院勤務。国立大学医学部卒。日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。
「一般社団法人 正しい医療知識を広める会」所属。総合内科/内分泌代謝/糖尿病の臨床に加え栄養学/アンチエイジング学が専門。
臨床業務をこなしつつ、大手医学出版社の専門書執筆の傍ら、企業コンサルもこなす。「正しい医療知識を広める」医師ライターとして多数の記事作成・監修を行っている。 

プロフィール詳細

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