卵巣がんは再発しやすいって本当?再発した卵巣がんの治療法

卵巣がんは再発しやすいって本当?再発した卵巣がんの治療法

年間で約1万3,000人の方が診断され、約5,000人の方が命を落とす卵巣がん(※1)

初期症状はほとんどなく、見つかったときには進行している状態が多い卵巣がんは、再発しやすいがんとしても知られています。

どのようながんでも、原発がん より再発がんの方が、治療が難しくなるという特徴があります。そのため、再発のリスクに不安を抱えながら生活している卵巣がんの経験者も多いでしょう。

卵巣がんの再発率はどれくらいなのでしょうか。そして、万が一、再発してしまったらどのような治療法が取られるのでしょうか。

この記事では卵巣がんの再発について詳しく解説します。

受付中がんの臨床試験、研究・治験広告のご案内

製薬企業や医療機関、研究グループから依頼を受け、治験審査委員会の審議で承認された臨床試験、治験を掲載しています。

がんワクチン療法がんワクチン療法

目次

卵巣がん再発率

大半のがんは再発のリスクがあります。そして、原発がんよりも再発がんの方が、治療が難しくなってしまうことも共通しています。

そうした中、卵巣がんを克服した方が次に気になるのは卵巣がんの再発リスクではないでしょうか。卵巣がんはどれくらいの割合で再発してしまうものなのでしょうか。

卵巣がんは再発しやすいがん

再発率は、がんの種類によって異なります。再発しやすく命を落としやすいがんもあれば、再発しにくく大半の人が完治するがんも少なくありません。

では、卵巣がんは再発しやすいのでしょうか。結論から言えば、卵巣がんは再発しやすいがんの一つです。

特にIII期、IV期の進行がんは再発しやすく、治療後2年以内に55%、5年以内に70%以上が再発するというデータもあります(※2)

卵巣がんが再発しやすい理由として、初期症状がほとんどないことが挙げられます。

そのため、早い段階で発見することが難しく、見つかったときには進行して腫瘍が大きくなったときであるケースが多くなります。

どのがんでも言えることですが、初期のがんより進行がんの方が、再発リスクは高くなってしまいます。進行がんの状態で発見されることが多いこと、それが卵巣がんの再発率の高さの理由の一つと言えます。

卵巣がんが再発しやすい部位・臓器

がんの種類によって、どのような部位や臓器に再発するのかは異なります。

では、卵巣がんが転移・再発しやすい部位や臓器はどこなのでしょうか。

卵巣がんの再発で多いのが、がんが腹腔内で散らばるように増殖する播種 (はしゅ)です。また、リンパ節への転移、肺や肝臓などの他の臓器への転移も少なくありません。

卵巣がん再発による症状

卵巣がんの再発で圧倒的に多いのは、腹腔内に散らばって増殖する播種です。

再発時の症状もおなかに出るケースが多いため、経過観察中の問診でもおなかの張りや腹痛・便秘の有無、吐き気や嘔吐の有無が聞かれます。

そのため、こういった症状が出た際にはできるだけ早めに担当医に相談しましょう。

卵巣がん再発の予後

再発したがんの予後も、原発がんの種類によって異なります。数あるがんの中でも、卵巣がんの再発がんは予後が悪いと言われています。再発してから亡くなるまでの中央値はおよそ2年(※2) で す。

卵巣がん再発後の治療

考えたくないことですが、もし卵巣がんが再発してしまったら、どのような治療法が取られるのでしょうか。中には、再発したときのことを考えて、あらかじめ治療法を把握しておきたいという方もいるでしょう。ここでは、卵巣がんの再発時の治療法を詳しく見ていきます。

化学療法

再発した卵巣がんの治療法のメインとなるのは、化学療法です。いわゆる抗がん剤での治療です。

がんの治療法と聞くと、手術を思い浮かべる方が多いでしょう。手術が行われることもありますが、再発した卵巣がんに対して、手術の有効性が十分明らかになっていません。そのため、再発した卵巣がんには、まず化学療法が検討されます。

化学療法に用いられる薬剤は、プラチナ製剤(白金製剤)を使った初回の治療後から再発までの期間によって異なります。初回の治療後から再発までの期間が6カ月未満であれば、「プラチナ製剤抵抗性」と呼ばれるプラチナ製剤(白金製剤)の効果が出にくいがん(※3) であると考えられるため、初回治療時と異なる薬剤が用いられます。

初回治療後から再発までの期間が6カ月以上の場合は「プラチナ製剤感受性」と呼ばれプラチナ製剤が効きやすいがんであることが考えられるため、プラチナ製剤を含む複数の抗がん剤を組み合わせて治療が行われるのが一般的です。

放射線治療

他のがんと違い、卵巣がんでは最初の治療で放射線治療が用いられることはありません。

しかし、再発した卵巣がんに対しては、痛みなどの症状緩和のために、放射線治療が用いられることがあります。再発した卵巣がんでは、疼痛(とうつう)や出血などの症状が出ることも少なくないため、そういった症状の緩和に放射線治療が用いられるのです。

また、脳に転移した場合は症状緩和のためだけではなく、予後の改善のためにも放射線治療が用いられることもあります。

卵巣がん治療後の経過観察

どのがんにも言えることですが、ほとんどのがんは再発リスクがあるため、決められた期間、しっかりと経過観察していくことが重要です。がんの種類によって、経過観察の期間は異なりますが、治療後5年が目安とされている胃がん(※4) などと違って、卵巣がんの経過観察期間はいつまでと決められているわけではありません。

2年以内の再発が多いため(※2) 、治療後1~2年目は1〜3カ月に一度、通院して問診や各種検査が行われます。治療後3~5年目は3〜6カ月に一度、治療後6年目以降は1年に一度、検査を行うことが推奨されています (※5)

卵巣がんは初回治療後の経過観察が大切

再発した卵巣がんは、再発がんの中でも予後が悪いという特徴があります。それは、卵巣がんは初期症状がほとんどなく、見つかったときには進行しているケースが多いから です。

どのがんにも共通していることですが、見つけるのが早ければ早いほど、がんから命を守れる確率は高くなります。そのため、がんは早期発見・早期治療が重要と言われているのです。

卵巣がんを含むほとんどのがんには再発リスクがあり、残念ながら再発リスクをゼロにできる方法はいまだ見つかっていません。

そのため、再発したときにどれだけ早く見つけられるかが、とても大切になります。

再発した卵巣がんは他の再発がんと比較しても予後が悪いだけに、早期発見の重要性はより高まります。早期発見のために重要なのが、定期的な検査です。特に治療後1~2年間は1~3カ月(※5) に一度、通院しなければならならないため、負担は大きくなりますが、医師の指導を守ってきちんと通院し、定期的に検査を行いましょう。

卵巣がんの再発について【まとめ】

再発したがんの予後は、原発がんの種類によって異なります。10年生存率が90%を超える予後の良いがんもあれば、10年生存率が10%を切るような予後の悪いがんも少なくありません。そうした中、予後の悪い部類に数えられるのが卵巣がんです。卵巣がんは初期症状がほとんどなく、がんが見つかったときにはⅢ期やⅣ期とステージが進行してしまっていることが多いことから、予後も悪くなってしまいます。

また、進行がんの状態で発見されるがんは再発リスクも高くなります。予後が悪く、再発リスクも高い卵巣がんから命を守るために重要なのは、できるだけ早く見つけることです。医師の指導を守り、決められた期間は必ず定期的に通院し、検査を行うようにしましょう。数カ月に一度、通院することは身体的負担も大きくなってしまいますが、命に代えることはできません。

(※1)国立がん研究センター|卵巣
(※2)公益社団法人 日本婦人科腫瘍学会|第4章 再発卵巣癌
(※3)国立がん研究センター|卵巣がん・卵管がん 治療
(※4)奈良県|病気と向き合うサイトなら
(※5)国立がん研究センター|卵巣がん・卵管がん 療養

吉村 友希

医薬品開発者

神戸大学大学院医学研究科バイオメディカルサイエンス専攻 薬物動態学分野。分子標的薬の副作用に関係する研究について、研究・ディスカッションに参加。大手グローバルCROにて医薬品開発職に従事。

プロフィール詳細

受付中がんの臨床試験、研究・治験広告のご案内

製薬企業や医療機関、研究グループから依頼を受け、治験審査委員会の審議で承認された臨床試験、治験を掲載しています。

がんワクチン療法 がんワクチン療法

各がんの解説