乳がんを再発させないためにはどうすればいい?再発率と再発防止法を解説

乳がんを再発させないためにはどうすればいい?再発率と再発防止法を解説

がん治療を終えた患者さんの多くが心配されるのが、「再発しないか」ということではないでしょうか。

再発のリスクにおびえながら暮すことはとてもつらいことです。乳がんの再発率はどれくらいなのでしょうか。そして、もし再発したらどのような治療が行われるのでしょうか。乳がんの再発予防法とともに、詳しく見ていきましょう。

受付中がんの臨床試験、研究・治験広告のご案内

製薬企業や医療機関、研究グループから依頼を受け、治験審査委員会の審議で承認された臨床試験、治験を掲載しています。

がんワクチン療法がんワクチン療法

目次

乳がんの再発率

乳がんに限らず、ほとんどのがんには再発リスクがあります。

再発を繰り返せば当然、死亡率も高まってしまうため、誰しもが再発をすることなくがん治療を終えたいと思うでしょう。まずは、乳がんの再発率がどれくらいなのかを見ていきましょう。

乳がんのタイプによって再発時期は異なる

乳がんはいくつかのサブタイプに分かれています。

乳がん細胞が持つ特徴によって、乳がんはホルモン受容体が陽性の「ルミナルA型」「ルミナルB型」と、細胞増殖に関連しているHER2という遺伝子が陽性の「HER2陽性型」、ホルモン受容体もHER2 も陰性である「トリプルネガティブ型 」に分けられます。

サブタイプによって、推奨される治療方法が異なるのが特徴です。

「ルミナルA型」はホルモン療法と化学療法(=抗がん剤)、「ルミナルB型(HER2陰性)」はホルモン療法と化学療法、「ルミナルB型(HER2陽性型)」はホルモン療法と化学療法に加え、抗HER2療法の3つ、「トリプルネガティブ型」は化学療法が推奨されています 。

進行した乳がんほど再発率は高くなる

乳がんの再発率は、がんが見つかった時 の進行度合いによっても変わります。

がんの病期(ステージ)は、0期、Ⅰ期、Ⅱ期、Ⅲ期、Ⅳ期の5段階に分けられます。Ⅰ期の乳がんの再発率は約10%ですが、Ⅱ期は約15%、Ⅲ期は30~50% とがんが進行すればするほど、再発率も高くなるのが特徴です。

そのため、再発させない、そして再発で命を落とさないためには、がんの早期発見・早期治療が非常に重要となります。

再発の種類

乳がんの再発は、「局所再発」と「遠隔転移」に分けられます。

局所再発とは、初発のがんと同じ場所あるいは、非常に近い場所に再発するがんのことです。乳がんの場合、乳房に再発したがんのことを指します。一方、遠隔転移とは、初発のがんとは全く違う場所に再発するがんのことです。

血管やリンパ管を通してがん細胞が全身に広まり、がんが再発します。乳がん細胞は、血管やリンパ管に入っていきやすい性質を持つため、乳がんの再発は遠隔転移の方が多くなります。

どこに再発する?

公益財団法人がん研究会有明病院 の調査によると、乳がんの再発で最も多かったのは、骨への再発で全体の29.1%でした。次いで、肺が19.2%、局所リンパ節が15.2%、局所皮膚が12.1% といった順で多くなっています。

再発した乳がんの治療方法

乳がんが再発してしまった場合、どのような方法で治療が行われるのでしょうか。

治療方法を事前に知っておきたいという方も多いことでしょう。再発乳がんの治療方法は、再発したがんが局所再発なのか、遠隔転移なのかによって異なります。それぞれの治療方法の概要を以下から見ていきましょう。

局所再発の治療

手術を再度行い、がん細胞を取りきることが、局所再発の治療の第一選択肢となります。乳房の全摘手術を、まず検討されるのが一般的です。

乳房の全摘手術を行った後に、薬物療法や放射線療法が行われます。ただし、最初のがん治療の際に放射線療法が行われている場合は、再発時の治療では放射線療法は選択されません。

遠隔転移の治療

再発したがんが胸壁やわきの下のリンパ節にとどまらずに、骨や肺、肝臓、脳などに転移している場合は、外科手術は行われないことが一般的です。

乳がんで遠隔転移がある場合は、微小ながんが全身にあることが考えられます。

全身に転移したがんを手術で取り切るのは困難であり、かつ患者さんの体にかかる負担が大きすぎるため、薬物療法が選ばれることになるのです。

効果が出ているうちは、その薬剤をそのまま継続し、効果が認められなくなったら別の薬剤を試すという流れです。画像検査や腫瘍マーカー検査を繰り返して薬剤の効果をみていきます。

また、骨や脳に転移したがんの痛みなど、症状緩和のために転移した部位に治療を行うこともあります。

乳がんの再発予防法

乳がんの再発のリスクを少しでも低減するためにはどのように生活していけばよいのでしょうか。ここでは、乳がんを再発させないために大切なことや必要な生活習慣について詳しく見ていきましょう。

乳がんの経過観察期間は10年間

再発したがんから命を守るために最も重要なのは、再発したがんをできるだけ早期に発見し治療に進むことです。再発したがんを放置している時間が長ければ長いほど、予後は悪くなってしまいます。治療後も定期的に検査を行い、再発したらすぐに治療に移れるようにしておく必要があります。

「治療後5年間が完治の基準」といった知識を持っている方は多いと思います。確かにがんにおいて「5年生存率」は重要な指標で、治療後5年という期間が完治の目安の期間であることは事実です。大腸がんでは、再発の97%以上 が5年以内に見つかっています。

しかし、乳がんは、再発までの期間が長いという特徴があり、 定期的に診察や検査を受ける期間は10年間とされています。

年数が経過するにつれて検査の感覚は長くなるものの、治療から間もない期間は1週間から2週間に一度の検査、最初の1年間は3カ月から半年に一度、その後は1年に一度ほどの間隔で検査が必要になるでしょう。

再発させないための生活習慣

再発したがんを早期発見し、早めに治療することも重要ですが、再発させないための生活習慣を考えること同じように大切です。がんは生活習慣病という側面を持つ病気であり、生活習慣の改善によって予防が期待できます。

例えば、全てのがんにおいて肥満は罹患(りかん)リスクを高めてしまう要素です。また、運動は乳がんの再発リスクを抑えることが明らかになっています。そのため、適度な運動を生活の中に取り入れ、適正な体重をキープするように心がけましょう。飲酒や喫煙は乳がんの再発リスクとの関係は、明らかになっていませんが、新たながんの発生リスクは高めてしまうため、控えた方がよいでしょう。

乳がんの再発について【まとめ】

がんが再発してしまったら、「せっかくつらい治療を乗り越えてきたのにどうして…」とやり切れない気持ちになってしまうことでしょう。

つらい治療をもう一度乗り切れるか不安と思う方も多いと思います。どんな人であっても、がんは再発させたくないものです。

再発した乳がんから命を守るために大切なのは、再発したがんをすぐに発見してすぐに治療することです。そのためには、定期的な検査が欠かせません。乳がんは一般的ながんと比べると長い経過観察が必要です。ほかの多くのがんの経過観察期間は5年間ですが、乳がんは10年間様子を見なければなりません。

健康的な生活習慣は、がんの再発リスクを低減させます。医師の指導をきちんと守って、再発させないための健康的な生活習慣を取り入れることもとても大切です。

1.Yahoo!ニュース|20代では133%増加!? 「大腸がん」により死亡する若年層が増えていると米研究で明らかに
2.高齢者より発見が遅れがちで悪性度が高い…20代の大腸がんが「25年で3倍に急増」の背景 50歳以上の大腸がんは減っているのに、若者の罹患が増えている | PRESIDENT Online
3.PubMed|Increasing disparities in the age-related incidences of colon and rectal cancers in the United States 1975-2010
4.国立がん研究センター がん情報サービス|大腸がん検診について
5.にしやま消化器内科|大腸がんになりやすい年齢や生活習慣
6.NHK健康チャンネル|大腸がんにつながりやすい病気、なりやすい人とは?20代から発症のケースも
7.イムス総合サービスセンター|大腸がんセルフチェック
8.あなたは大丈夫?大腸がんチェック – カプセル内視鏡と大腸・小腸疾患、クローン病に関するお役立ち情報サイト【飲むだけカプセル内視鏡】|あなたは大丈夫?大腸がんチェック
9.国立がん研究センター 東病院|大腸がんについて
10.日本医師会|大腸がんとは?
11.国立がん研究センター がん統計|最新がん統計
12.地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪国際がんセンター|院内がん登録研修会(大阪府内医療機関対象) ―わが国に多いがん・比較的少ないがんの要点
13.がん再発予防.com|子宮がんにおける再発予防
14.がんと希少な病気の情報サイト|患者さんとご家族の未来のために
15.鶴見はまかぜクリニック||乳がんの術後の経過観察について
16.おしえて 乳がんのコト【中外製薬】|再発・転移を予防したい!
17.日本乳癌学会事務局|患者さんのための乳癌診療ガイドライン2019年版
18.がんプラス|再発・転移乳がんの治療 – 治療法と治療の流れを知る
19.乳がん診療情報サイト|乳癌の再発パターン(時期と部位)について教えてください。

吉村 友希

医薬品開発者

神戸大学大学院医学研究科バイオメディカルサイエンス専攻 薬物動態学分野。分子標的薬の副作用に関係する研究について、研究・ディスカッションに参加。大手グローバルCROにて医薬品開発職に従事。

プロフィール詳細

受付中がんの臨床試験、研究・治験広告のご案内

製薬企業や医療機関、研究グループから依頼を受け、治験審査委員会の審議で承認された臨床試験、治験を掲載しています。

がんワクチン療法 がんワクチン療法

各がんの解説