最新の治療法「がんウイルス療法」とは

最新の治療法「がんウイルス療法」とは

がんの新しい治療法として高い効果が期待される「がんウイルス療法」。新しい 治療方法だけに、「初めて知った」「どのような治療法なのか知らない」という方もいるのではないでしょうか。

がんウイルス療法とは、どのような治療法なのでしょうか。また、どういった効果が期待できて、どのような副作用が出現するのでしょうか。がんウイルス療法にかかる費用と合わせて、詳しく解説します。

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目次

がんウイルス療法とは

まずは、がんウイルス療法とはどのような治療方法なのかを見ていきましょう。

がん細胞をウイルスに感染させる治療法

がんウイルス療法は簡単にいえば、「がん細胞をウイルスに感染させて、がん細胞を死滅させる」という治療方法です。「ウイルスにがん細胞を死滅させる」と聞くと、「そんなこと可能なの?」と思う方もいるのではないでしょうか。

しかし、実は私たちの身近なところでも起こっていることです。それがウイルス感染症です。

ウイルス感染症は、ウイルスに感染し正常な機能を破壊された細胞にダメージが生じる病気のことです。このような細胞とウイルスの性質を利用して、がん細胞を死滅させる治療方法ががんウイルス療法です。

日本では2021年に初めて認可される

ウイルスにがん細胞を攻撃させる治療方法の可能性が初めて注目されたのは半世紀以上前で、1971年に世界的な医学雑誌「Lancet」に掲載された論文がきっかけでした。

この論文の発表以降、世界中で本格的に研究が進められ、アメリカとヨーロッパでは2015年に、がんウイルス治療薬が世界で初めて認可されました。この治療薬は、メラノーマ(悪性黒色種)を対象としたものでした。

日本では、2021年に世界で初めて、脳腫瘍の一種である悪性神経膠腫を対象としたがんウイルス治療薬「G47Δ(国際一般名:テセルパツレブ、日本での商品名:デリタクト注)」が認可されています。

手術などの従来の治療方法と併用も可能

がんウイルス療法は、単独での治療のほか、手術や放射線療法、化学療法、ホルモン療法など従来の治療方法と併用も可能です。たとえば、手術で取り切れなかった部分をがんウイルス療法で治療するということも可能ですし、放射線治療との併用による相乗効果も期待されています。

免疫療法としての効果も期待できる

現在、治験が進められている「テロメライシン®」というがんウイルス治療薬は、アデノウイルスに遺伝子変異を起こして作られた薬剤です。

身体にもともと備わっている免疫を活性化させることも研究の結果、明らかになっています。ウイルス感染でがん細胞が攻撃されると、免疫細胞が活性化。強まった免疫が、がん細胞を攻撃するようになります。

つまり、ウイルスによるがん細胞への攻撃に加えて、強化された免疫細胞もがん細胞を攻撃するようになるわけです。がんウイルス療法は、免疫療法としての効果も期待されています。

がんウイルス療法の効果と気になる副作用

がんの治療法を決める上で重要なのは、効果と副作用です。当たり前のことですが、治療効果が高く、副作用は少ない治療方法を選びたいという方が大半でしょう。そこで、がんウイルス療法の効果と副作用を詳しく見ていきましょう。

治験では従来の治療法の約6倍の生存率を示す

前出の脳腫瘍に対するがんウイルス治療薬「G47Δ」は、治験では1年後の生存率が8割から9割でした。この生存率は、従来の治療法の生存率の約6倍という非常に高い数字です。高い効果が期待できるとして、画期的な新薬候補を優遇して審査する制度「先駆け審査指定制度」の対象となっていました。

脳腫瘍以外のがんへの適応拡大が期待される

国内で唯一、公的医療保険の対象となっているがんウイルス治療薬「G47Δ」は、脳腫瘍を対象にしたものです。しかし、がんウイルス療法は、基本的にはすべての固形がんに同じメカニズムで作用すると考えられています。

現在、大塚製薬、タカラバイオ、中外製薬といったさまざまな製薬会社ががんウイルス治療薬の開発を行っています。将来的には、脳腫瘍だけではなく、あらゆるがんを対象としたがんウイルス治療薬の開発が期待されているのです。実際、前出の「テロメライシン®」は、食道がんを対象とした治験が進められています。

治験で最も多かった副作用は発熱

副作用が心配な方は多いのではないでしょうか。技術の進歩や薬の改良などにより、一昔前よりは副作用は軽くなったとはいえ、化学療法や放射線療法に強い副作用が出てしまう人は少なくありません。

それでは、がんウイルス療法の副作用はどうかといえば、現在のところ、化学療法や放射線療法と比べて副作用は軽微です。前出の「G47Δ」の治験で最も多かった副作用は、発熱でした。そのほか、悪心や嘔吐、リンパ球数の減少などの副作用が認められましたが、いずれも軽度。入院期間が必要だった副作用は、発熱で12.5%の出現率でした。

また、前出の「テロメライシン®」も治験時点では重篤な副作用は認められておらず、吐き気や抜け毛は一例も報告されていません。その一方で、最新の治療方法でいずれの治療薬もまだ治験中のため、長期的な副作用が出てくるかどうかはまだ不透明です。

がんウイルス療法にかかる費用

「最新の治療方法は高額の医療費がかかる」というイメージを持っている方も多いのではないでしょうか。確かに、先端医療の中には、数千万円かかるものもあり、先端医療に備えるための保険も数多く提供されています。ここでは、がんウイルス療法にかかる費用を見ていきましょう。

薬価は143万1918円

現在、国内で唯一、公的医療保険の対象となっているがんウイルス治療薬「G47Δ」の薬価は、143万1918円(1mL、1瓶)です。公的保険(医療費3割負担)を適用した場合でも、1瓶で50万円近くの費用が必要な計算になります。

投与は1回あたり1mL、6回まで

「G47Δ」の用法および容量は、成人には1回あたり1mLで、投与は6回までとされています。つまり、1回の治療で6瓶の「G47Δ」が必要となるわけです。1瓶あたりの薬価は、143万1918円ですので、6回分は約860万円かかる計算になります。3割負担でも、約280万円支払う必要があるわけです。

治験中のため、無償で提供される

3割負担でも、薬価だけで約280万円という金額は、多くの人にとって簡単に払える金額ではありません。しかし、高額療養費制度の対象となりますので、実際にかかる負担は所得に応じて軽減されます。(2022年7月現在)

【まとめ】

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がんウイルス療法は、近い将来がん治療の重要な一翼を担うと期待されている画期的な治療法です。日本ではまだいずれの治療薬も治験段階にありますが、高い治療効果が報告されており、重篤な副作用も出現していません。

高い効果が期待でき、副作用も軽微であれば、「自分もこの治療を受けたい」と思う方も多いのではないでしょうか。ただ、新しい治療方法のため、10年、20年などの長期で副作用が出現するかどうかは不透明なことも事実です。

がんウイルス療法を受けたい方は、まずは主治医に相談してください。その上で、治験担当医から十分な説明を受け、納得してから治療を受けましょう。

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東京大学医学研究科附属病院脳腫瘍外科 ウイルス療法
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投資家説明会ダイジェスト20191213(12分30秒から)
参照日:2022年07月

成田 亜希子

医師|内科医・日本内科学会・日本感染症学会・日本公衆衛生学会・日本健康教育学会

2011年医師免許取得。一般内科医として幅広い疾患の患者様の診療を行っている。行政機関に勤務経験もあり、がん対策にも携わってきた。

プロフィール詳細

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