前立腺がんの新しい治療法「密封小線源療法」。体への負担はある?

前立腺がんの新しい治療法「密封小線源療法」。体への負担はある?

「密封小線源療法」という治療方法をご存じでしょうか。

密封小線源療法は、前立腺がんに用いられる治療方法で、手術療法や通常の放射線療法に比べると、体にかかる負担が小さいのが特徴です。

手術療法や放射線療法は、副作用が出る可能性がある点がネックですが、密封小線源療法はこれらの治療法よりも副作用が少ないとされています。密封小線源療法とはどういった治療方法なのか、密封小線源療法のメリットや注意点とともに詳しくお伝えします。

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目次

密封小線源療法とは

まずは、密封小線源療法はどのような治療方法で、どのようながんに用いられるものなのかをみていきましょう。

前立腺がんに用いられる治療法

手術療法や放射線療法と異なり、密封小線源療法は、どのようながんに対しても行われる治療法ではありません。密封小線源療法が行われるのは、前立腺がんです。

アメリカでは、手術療法や放射線療法と並ぶ前立腺がんの標準治療のひとつとなっており、年間約6万人がこの治療を受けています。

一方、日本では法律上の規制もあり、この治療は20年ほど前までは行われていませんでした。しかし、2003年に日本でも行えるようになり、現在、日本全国で100を超える施設がこの治療を行っています。

カプセルから出る放射線で治療する

密封小線源療法とは、どのような治療方法なのかを具体的にみていきましょう。

密封小線源療法は、放射線を放出する小さなカプセルを前立腺内に埋め込み、少しずつ放出される放射線ががん細胞を攻撃するという治療方法です。

埋め込むカプセルの量は患者さんによって変動し、多くは50~100個ほどとされています。

体への影響が最小で治療効果が高い場所へ

体への影響が最小かつ治療効果が最も高いところをコンピューターで割り出し、最適な位置に体の外から針を差し込んでカプセルを埋め込みます。尿道や直腸などほかの臓器への影響が最小限で、患者さんの身体的負担は最小限に抑えることが可能です。

カプセルは体内に残るが危険性はなし

密封小線源療法で埋め込んだカプセルは、1年ほどで放射線を照射しなくなります。では、体内に埋め込んだカプセルはどうやって取り除くのでしょうか。

実は、治療後にカプセルを取り出すことはなく、体内にとどまり続けます。カプセルは一生、前立腺にとどまることになりますが、健康上、まったく問題がないことは立証されています。

密封小線源療法のメリット

現在、多くの患者さんに密封小線源療法が行われていますが、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。

治療は2時間程度で体への影響が少ない

密封小線源療法の一番のメリットは、体への負担が少ない点でしょう。治療は2時間程度で完了し、手術療法や放射線治療と比べると副作用が少ないのが特徴です。

手術の場合、所要時間は3~5時間、麻酔導入から覚醒までを含めると4~6時間かかり、出血量も多くなります。一方で密封小線源療法は、会陰部に針を刺してカプセルを埋め込むため多くは全身麻酔をした状態で行いますが、出血量は少量で済みます。

入院は4日程度ですぐに社会復帰できる

密封小線源療法は、体の負担が少ないため、入院期間が4日ほどで退院できます。手術療法の場合、入院期間は2週間ほどになることが一般的です。放射線治療の場合も入院期間は短くて済みますが、それでも5日から1週間ほどかかります。入院期間が短く、すぐに社会復帰できる点も密封小線源療法のメリットです。

治療効果は手術や外照射療法と変わらない

体への負担が少なく、入院期間も短いにも関わらず、進行度などによっては手術療法や体の外側から放射線を照射する外照射療法と比べて治療効果はほぼ同じです。

専門医からは、密封小線源療法は「高い治療効果と少ない体への負担を両立された治療法」といわれています。

副作用は手術に比べて少ない

手術療法と比べて、副作用が少ないという点も密封小線源療法のメリットです。前立腺周辺は血流の多い場所のため、手術をすると大量出血を起こす可能性があります。密封小線源療法の出血量は非常に少量です。

さらに、手術をすると細菌などに感染する可能性もあります。また、手術後は一定期間、創部に痛みが生じます。こういった副作用は、密封小線源療法には少ないのもメリットのひとつです。

密封小線源療法の注意点

このように密封小線源療法は、メリットの多い治療法です。

その一方で、注意しなければならない点があることも事実です。

メリットだけでなく、注意点も正確に把握したうえで治療方法を決定することが大切です。具体的にどのようなデメリットがあるのかみていきましょう。

排尿困難、頻尿などの症状が長引く可能性も

前立腺がんの治療では、排尿困難や頻尿、血尿、尿道狭窄、直腸潰瘍といった副作用が出てくる可能性があります。これは、手術療法、放射線療法、密封小線源療法のいずれの治療法にも共通しているものです。

なかでも、密封小線源療法で注意しなければならないのが、こういった合併症や後遺症が長引く可能性があるということです。密封小線源療法は、体内で放射線が照射される期間が長いため、合併症や後遺症が6ヵ月から8ヵ月ほど続いてしまうケースも少なくありません。

3割ほどの確率で性機能が失われる可能性がある

手術療法や外部放射線治療と比べると、可能性は低くなりますが、密封小線源療法で性機能が失われる可能性があることも押さえておかなければなりません。

手術の場合は、多くは勃起障害が起こり年齢によっては完全に性機能を取り戻すことは難しいとされています。

一方、密封小線源療法で性機能が失われる可能性は3割ほどです。ほかの治療法と比べると、性機能が失われる可能性は低くなりますが、性機能が失われてしまう可能性があることは頭に入れておく必要があります。

参照:http://www.uro.med.tohoku.ac.jp/patient_info/ic/tre_p_c_01.html

治療できないケースもある

密封小線源療法は、すべての前立腺がんで適用できる治療方法ではありません。たとえば、前立腺が大きすぎる場合は、技術的に困難になってしまいます。また、過去に前立腺市肥大症の手術を受けるなど、前立腺が大きく削られているような患者さんにも技術的に困難です。

【まとめ】密封小線源療法について

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前立腺がんの治療法として一般的なのは、手術療法と放射線療法です。そのため、これまで密封小線源療法という治療法がどういったものか知らなかったという方も多いのではないでしょうか。

密封小線源療法は、日本ではこれまでメジャーな治療法ではなかったため、知名度は低いですが、メリットがたくさんある治療方法です。たとえば、「体への影響が少ない」「すぐに社会復帰できる」「治療効果は手術や外部放射線療法とほぼ同じ程度に高い」「副作用は少ない」といった点が主なメリットとして挙げられます。

その一方で、副作用が長引く可能性がある点や、性機能が失われる可能性がある点には注意しなければなりません。

メリットと注意点をよく把握したうえで、自分が納得できる治療法を選んでください。

日本メジフィジックス「密封小線源療法とは」
慶應義塾大学病院|KOMPAS「前立腺がんに対する密封小線源療法」
山口県済生会下関総合病院「前立腺密封小線源療法」
日本放射線腫瘍学会・日本泌尿器科学会・日本医学放射線学会「シード線源による前立腺永久挿入密封小線源治療の安全管理に関するガイドライン」
東京医科大学病院「入院から退院までの流れ」
日本メジフィジックス「PSA検診で発見が増える前立腺癌に 小線源療法で高い治癒効果を」
東北大学大学院医学系研究科「(腹腔鏡補助下)小切開前立腺全摘術を受けられる患者様へ」
がん情報サービス「前立腺がん 治療」
参照日:2022年6月

成田 亜希子

内科医

2011年医師免許取得。一般内科医として幅広い疾患の患者様の診療を行っている。行政機関に勤務経験もあり、がん対策にも携わってきた。

プロフィール詳細

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