がん患者が増えたことで、手術や抗がん剤による投薬治療などは日常的に多くの人に行われています。どのような段階で治療を受けるかは人それぞれですが、安全で確実な治療を受けたいという思いはすべての人に共通する願いだと思います。
医療ミスなんて自分や家族に起こるはずもない、そんな風に思っていても「まさか」の事態が起こることはあるのです。そんなとき私たちはどのように対処すれば良いのでしょうか。
今まさに医療ミスを疑う事態に置かれている人はもちろん、医療ミスなど自分には関係ないと思っている人にも読んでいただきたいと思います。
目次
実際に医療ミスは増えている?
医療ミスや医療トラブル、医療事故という言葉は巷にあふれています。皆さまも一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。
それぞれ厳密な定義の違いはなく、広くは「医療関係の事故であり、患者に被害が発生すること」といった意味で同様です。
こういった医療関係のミスや事故の件数は増加傾向にあると言われています。その要因としては、医学の進歩に伴い患者側の安全性への意識が高まったことが一つ挙げられます。手術は成功して当然。だから失敗したら原因を追及すべきという意識です。
また、インターネットなどで患者側が医療の知識を得ることが容易にできるようになり、医療行為に対して疑問が生じる機会が増えたということもあるでしょう。
さらにはインフォームドコンセントという言葉に表されるように、患者側は十分な説明を受け、それに対し同意をすることで初めて医療行為が成り立つという意識が当たり前になってきたこともあります。
いずれも医療は「医師のもの」ではなく患者側に権利があり、それが守られ尊重されるようになったことで、以前であれば泣き寝入りせざるを得なかった被害者側が声をあげることが可能になったことが原因として考えられます。
医師の義務はこんなこと
治療にあたる医師には、そもそも医療行為をするにあたっての義務があります。それは法的な義務であり、医療の専門家として患者に診療内容を説明する義務ということです。
そこには、がんであるという診断、がんの状況、予定される医療行為とその内容、危険性などが含まれます。これを説明義務とよび、これらの行為がなく医療ミスが発生した場合に説明義務違反として責任を負うことになります。
他には正確なカルテの作成と保存や診断書の作成、医師の裁量権の範囲の行為(一般的に認められた原則に従っているか等)などが医師に課せられた義務にあたります。
医療ミスの発生が必ずしも裁判に発展するわけではありませんが、仮に裁判で損害賠償を請求するためには、これらの適切な医療行為がなされていなかったこと(債務不履行)と、損害そのものを与える行為(不法行為)が発生したという事実を証明することが必要です。
要は、裁判を起こす場合、これら債務不履行や不法行為と被害との因果関係があり、かつどれほどの被害(金銭面での損害)が生じたのかという評価が認められる必要があるのです。
医療ミスを疑うときにすること
しかしながら、いくら患者側の意識が高まったといっても、実際に医療ミスが疑われる状況に遭遇したとき、すぐに裁判だと考える人は少ないものです。
多くの人は、まずは正確な状況の把握、それが起こった理由、自分たちと医師や病院側の認識に相違はあるかなどと言ったことを確認しようと考えるでしょう。それは医療ミスを疑う第一段階として当然のことです。
まずは落ち着いて、医師(医療機関)側とコンタクトを取り、状況を把握するために情報開示を求めることが大事になります。もし医療機関から納得のゆく説明が得られた場合には、法的な手続きを取らず深刻な状況に至らないケースも多いといえます。
どこに相談する?
それでも医療機関への不信感がぬぐえない場合にはどうすれば良いでしょうか。
最も一般的な方法として弁護士に相談するということが挙げられます。知り合いに弁護士がいる場合はそちらに相談するのが手っ取り早いのですが、そうでない場合も多いでしょう。実際、身近に弁護士がいないために追及をあきらめてしまうケースが少なくないと言われています。
弁護士を探すには、弁護士会に相談するという方法があります。各都道府県に1か所、あるいは数か所弁護士会というものがあり、そこで実施している法律相談を受けてみることです。そちらに相談することで、その場で解決する、あるいは状況次第で改めて詳しい弁護士を紹介してもらうことができるでしょう。
もし裁判を想定していたとしても、法律の知識、医療の知識など専門的な知識が必要になるため、患者さんだけでことを進めてゆくのは難しいと思います。相談会では、まずは相談ということで解決の糸口を示してくれるでしょう。
「弁護士会 無料(一部有料の場合もあり)相談 (お住まいの地域)」などでインターネット検索してみてください。
また、市区町村で定期的に法律相談を実施しているところがあります。これも一つの方法ですが、こちらの場合、弁護の依頼ができないケースが多く自治体を経由して弁護士会へ紹介してもらうこともあるようです。
弁護士にもそれぞれ専門の分野があります。医療事故に詳しい弁護士に相談したいものです。弁護士会の相談窓口へ行かれた際に医療事故を得意としている弁護士を紹介してもらってください。
不幸な医療事故が起こらないように
不幸にも医療事故を疑う事態に遭遇し何らかの助けが必要な場合には上記のような手段が考えられます。しかし、治療後にこんなはずじゃなかった、こんなことになったのはミスではないのか、という疑問が生じても取り返しがつかないことが多いでしょう。
医療事故はあらかじめ回避するのが一番です。そのために、治療前から医療側と積極的にコミュニケーションを取り、自ら主導で事をはこぶ意識が大事であるように思います。
治療において患者さんが置き去りにされていることはしばしばみられることです。まずは適切な医療行為のもとに安心して治療が受けるために、私たちができることはあるということを知っておいてください。