抗がん剤や放射線治療が引き起こす食事への影響とその対策方法

抗がん剤や放射線治療が引き起こす食事への影響とその対策方法

がん治療を通して、今まで当たり前にしていた日常生活のあらゆることができなくなるということがあります。

食事もその一つです。とりわけ、治療の副作用によって食事を楽しめなくなるということはよくあることですが、これはとても辛いことではないでしょうか。

食事は生活の一部で「食べることができる」ということは生きている証でもあります
今回はそんな食と治療(抗がん剤と放射線)をテーマにお話ししてゆきます。
現在、副作用で悩んでいる方やそのご家族に参考にしていただければと思います。

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目次

治療が「食」に与える影響は大きい

がん治療によって食事がとりづらくなるといったことを聞いたことがある方は多いと思います。
食事をすることもままならず、だんだん痩せてしまう…そんな過酷なイメージはがん治療につきものでしょう。
実際のところ、治療、とりわけ抗がん剤と放射線による影響で食事が進まなくなることは多いものです。

抗がん剤と放射線により食事が進まなくなる理由はいくつかありますが、主に
2つに大別されます。

1.体への負担
消化管や肝臓など内臓への直接的な副作用が食欲を衰退させる。

2.心への負担
精神的なストレスが、脳の食欲中枢や味覚、嗅覚などの異常につながり食欲に影響を与える。

この内のどちらか、もしくは両方を患うことにより食事ができなくなるということが起こります。私たちの生活の基礎である「食べる」ということが、治療により大きく影響を受けるのです。

では、ここから抗がん剤や放射線はどのように食に影響を与えるかご説明します。

抗がん剤と放射線はなぜ食欲を奪うのか?

抗がん剤治療って?

治療の中でも食欲衰退のイメージが強いのが抗がん剤ではないでしょうか。

がんは、がん細胞という異常な変化を起こした細胞が発生、増加、移動してゆくという性質をもつ病です。
抗がん剤はそのようながん細胞を体内から攻撃する薬です。

現在、100種類以上の抗がん剤が使われていますが、がんの種類や進行などに合わせて単独、あるいは複数の抗がん剤が患者さんに処方されます。

抗がん剤の副作用

抗がん剤を使用することで食欲が落ちるという副作用を訴える患者さんは非常に多いものです。
なぜなら抗がん剤は全身にくまなく行きわたらせるように作られた薬ですので、がん細胞だけでなく、正常な細胞まで攻撃してしまうからです。

食べることと密接な関係のある臓器である、消化管の細胞がこの攻撃を受け傷つくことで、食べることに影響が出るのです。

食道、胃、腸に損傷が起こると食欲低下や吐き気、嘔吐につながります。また、栄養素や水分を吸収する腸の機能が低下し下痢を引き起こします。

さらに、抗がん剤は消化管を傷つけるだけではなく、脳にも悪影響を及ぼします。
脳の食欲中枢や嘔吐中枢に直接作用して食欲不振などの原因になるのです。

なお、消化管症状の副作用が現れやすい時期というのはおおむね分かっていて、吐き気や嘔吐は投与中から終了後2日くらいまで、下痢や便秘はその後次の治療までの間と言われています。

放射線の影響

放射線も抗がん剤同様、がん治療の中で大切な役割を担っています。
抗がん剤との大きな違いは、ピンポイントでがんに作用するという点です。
抗がん剤は体内をまわって全身的にがんを攻撃しますが、いっぽう放射線は体外からがんの部位に焦点を当てて照射することでがんを叩きます。

そのため放射線は、照射された場所にのみ影響を与えるので、全身への負担がほとんどありません。
しかし、攻撃力は強いので照射を受けた場所では、重い副作用が生じることがあります。

消化管のがんを対象に放射線を当てる場合、隣接する正常な部分も一部照射を受けてしまいます。また、子宮や前立腺などのがんの場合は周囲の消化管にも悪影響があります。
なるべく、よりピンポイントにがんだけを照射できるよう、放射線の装置も改良を重ねていますが、いまだ食事に悪影響を及ぼすような副作用の発現は多いといえるでしょう。

放射線の副作用

このように、放射線の副作用は照射した部位に現れます。
さまざまながんで放射線治療が用いられますが、例えば、食道がんの場合は食道内の正常な一部分が傷つき炎症や潰瘍を引き起こします。そこに食べ物や飲み物が通過すると違和感や痛みを感じるようになります。

すい臓がんも放射線治療を行うことがあります。
この場合腹部に照射しますので、周辺に存在する腸にも影響を与えます。食欲不振、吐き気、嘔吐、下痢などを引き起こします。

口腔内のがんに放射線を当てる場合は直接的に口の中の粘膜や歯茎などが傷つき痛みの原因となるため食事がとりづらくなります。

心への影響

普段の生活でも、心配事やストレスを感じると食欲がなくなるという人はいます。このことからもわかるように、心が食欲に与える影響は無視できません。
がんに関しては、例えばがんと診断され受け入れられないときに食事が喉を通らないのは当然ですし、がんの痛みによって食欲がなくなることは少なくありません。

食が進まない理由がどのようなものであっても、食べられない原因を明らかにして解決することが大事です。
精神的なことなのか、治療の直接的な原因なのか、またはどちらも関係していることなのか主治医に相談してみてください。
心の問題の場合は、数値化するなど目に見える形であらわすことができませんので、症状をきちんとうったえることが大切です。

症状によっては栄養点滴など医療的な対処が必要となることがありますし、管理栄養士による食事面からのサポートが改善につながることもあるでしょう。

食事に関わる具体的な悩み対策

抗がん剤や放射線が私たちの体の内外から影響を与え、生活の一部である「食べること」に大きく関わることがわかりました。

ここからは食事にまつわる具体的な影響をいくつか挙げてその対策についてご説明します。

食欲不振

「食欲が出ない」「何を食べてもおいしくない」「食べなければいけないと思うとつらい」などの症状です。
がんそのものや治療による影響、病気への不安やうつなど、食欲不振はさまざまな理由から生じます。

食欲不振そのものは命にかかわることはありませんが、体力や気力の低下など、長く続けば治療を続けられなくなることもあります。

患者さん本人でなければ正確な症状が把握しづらいものですので、食欲不振くらい、と我慢したりせず周囲の人に相談することが大切です。
抗がん剤などが原因となっている場合は、治療後時間が経てば自然と回復します。

吐き気、嘔吐

激しい吐き気で何も食べられなくなった、いつも胃がむかむかする、料理の匂いにも敏感になりもどしてしまう、など吐き気や嘔吐はつらい症状の一つです。

抗がん剤の副作用のイメージが強いかもしれませんが、必ずしもそうではなく個人の体質、体調、心理的な要因もありますし、放射線による食道や胃の炎症が原因となることもあります。

吐き気、嘔吐にはそれらを止める制吐剤によって対処が可能です。
吐き気に対する恐怖心が症状を増強してしまうこともありますので、心配な方はあらかじめ医師に相談してみてください。
また、吐き気や嘔吐が続く場合、点滴で水分や栄養を補給するなどの処置が必要になることがあります。

口内炎

おもに抗がん剤と口や喉への放射線により起こります。
普段の生活でも1つ2つ口内炎ができる、ということはありますが、治療の副作用の場合かなり重度で、口の中がボロボロになって食事がつらく食欲不振を招いたり嗅覚や味覚の異常を伴うこともあり、口内炎は強いストレスのもとになります。

荒れた部分に雑菌が入り込み感染を起こしやすくなりますので、もともと虫歯や歯肉炎がある人は口内炎が起こりやすくなります。

治療前に歯医者に行くことをすすめられることもあるでしょう。
治療中も、刺激の少ない歯ブラシなどで口の中を清潔に保ち、雑菌による感染を防ぐよう努めると良いでしょう。

下痢

抗がん剤の治療中、下痢になったり、便秘と下痢を繰り返したりすることがあります。放射線の場合は腹部や骨盤内の照射によりこれらの症状を発症します。

腹痛を伴う激しい下痢に悩まされたり、それが原因で体重が減少したり、食事が制限されることもあります。

下痢、とくに嘔吐を伴う場合は栄養不足や脱水症状を起こし免疫力を低下させることがありますので必ず医師に相談してください。

お腹を冷やすと下痢をしやすくなりますので、冷えを避ける服装を心がけます。
ストレスが胃腸の働きを低下させることにつながりますので、心配しすぎることなくリラックスするよう心がけましょう。

おわりに

美味しいものを食べると元気になる、きれいに器に盛られている料理を見ると気持ちが明るくなる、など食事が心に及ぼす影響は大きいものです。
そのぶん、それができなくなると私たちは想像以上に落ち込んでしまいます。
お伝えしたように、抗がん剤や放射線によって「食事を楽しむ」ことができなくなってしまうことも多いのが現実ですが、対処法もきちんとあるということを忘れないでください。
できることから実践してゆきましょう。

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