子宮頸がんといえば、女性なら一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。
お住まいの自治体から定期的に検診の案内が届いている、という方もいらっしゃるでしょう。でも自分は若いから大丈夫と思っていませんか?
そんなことはありません。
子宮頸がんは他のがんと少し違って、高齢者のがんではないのです。そして、子宮頸がんになる原因もとても身近なところにあります。
今回はそんな子宮頸がんについて、さらにHPVワクチン、子宮頸がん検診という3点についてお話ししたいと思います。
目次
子宮頸がんとは
子宮のがん
子宮にできるがんは発生する場所によって2つに分けられます。
子宮頸がんは子宮の出入り口にある「頸部」にできるものを指します。一方、子宮の「本体部分」に発生する子宮体がんというものもあります。
女性でも子宮頸がんと子宮体がんの違いを明確に知らないという人も多いかもしれませんが、原因や症状、性質、かかる年齢などが異なるため、この2つのがんは全く別物です。
がんの罹患数は増加傾向にあるメカニズム
そもそも子宮のがんに限らず、がんといえばだれもが知っている病気です。
がんの罹患数は増加傾向にありますが、これは日本人が長生きするようになったから、というのが理由の一つです。
以前は感染症やお産など、若くして亡くなる人が多かったため、がんになる年齢まで生きられる人は今ほど多くなかったのですが、医療の発達などによって長生きできるようになった結果、がんで亡くなる人が増えたのです。
私たちの体の細胞に何らかのストレスが加わることで、異常な細胞ができあがり、それが増えてゆく…これが簡単ながんのメカニズムですが、長生きすることに比例して様々なストレスが加わる機会が増えるため、当然がんが発症する機会は増加します。
がんが高齢者の病気と言われるのはまさしくこのためです。
若い女性は子宮頸がんにならないの?
しかし、子宮頸がんは高齢者のがんとは言えません。
子宮頸がんは30代から40代といった、若い女性がかかることが多いがんの代表です。
この世代は出産や子育てをする時期の女性が多くいため、子宮頸がんには「マザーキラー(母親を殺すがん)」の別名もあるほどです。若いからといって無関心ではいられません。
子宮頸がんを予防したい
では、子宮頸がんを予防する方法にはどのようなものがあるのでしょうか。
子宮頸がんの予防には「ワクチンを接種し原因を減らす」、「検診を受けて早期発見をする」ことの2つの方法があります。
HPVワクチンとは?
ワクチン接種ということから見てゆきましょう。
がんを引き起こす原因には、たばこやお酒、栄養の偏りなどが広く知られていますが、ウイルスや細菌の感染もまた、がんの原因となります。
ウイルスや細菌の感染によって発症するがんの代表的なものが子宮頸がんです。
実は、子宮頸がんのほとんどはHPV(ヒトパピローマウイルス)というウイルスの感染が原因です。
これはつまり、HPVに感染しなければ、ほとんどの子宮頸がんの予防ができるということです。
ではHPVの感染原因はというと、それは性交渉です。
性交渉による、皮膚と皮膚(粘膜)の接触で感染するとされています。
そして、その感染はとてもよく起こることです。
性交渉を経験したことのある女性の約8割が生涯に一度は感染をするといわれているほどなのです。
しかし、感染=子宮頸がんとはなりません。
感染しても9割以上は自分自身の免疫により自然消滅しているからです。
しかし、HPVが排除されず約5年から15年くらい感染した状態を継続することで子宮頸がんを発症します。
長年の研究により、このHPVウイルスの感染を予防するワクチン、「HPVワクチン」がすでに発明されていて、これにより子宮頸がんの7割から9割予防できるといわれています。
HPVは感染する前に接種をすることが最も効果的とされていて、性交渉をする前にHPVワクチンを接種することが望ましいとされています。
女性だけじゃない
HPVには100以上の種類(型)があります。
このうち子宮頸がんの原因となるのは約15種類で、中でも16型と18型による感染が最も多いので聞いたことがある人もいるかもしれません。
HPV自体は子宮頸がんだけでなく、咽頭がんや肛門がんなどの原因にもなるため男性にも意味があるワクチンです。「子宮頸がんワクチン」という表記では誤解が生じるためHPVワクチンと呼ばれるようになりました。
HPVワクチンは危険なの?
このようにHPVワクチンは子宮頸がんの大部分を予防する効果的なワクチンですが、日本では2013年に、発熱や接種した部位の痛みや腫れ、注射に対する興奮などをきっかけとした失神、運動障害など大きな副反応が報告されたため、国としては現在「積極的推奨は控える」姿勢を示しています。
そのため、子宮頸がんワクチンに「怖いワクチン」というイメージを持っている人もいるかもしれません。
どのようなワクチンも副反応の割合は一定数ありますが、きちんと理解することが必要です。
数年前にテレビでも報道された「HPVワクチン副反応被害者」というのをご存じでしょうか。
ワクチンを接種後、記憶が続かなくなったり、感覚がマヒするなどした女の子たちは有名ですが、その後の調査により、HPVを打たなかった女の子にも同じような割合で同じような症状の人がいることがわかっています。HPVワクチンを打ったことが原因の症状ではない確率が高いということです。
このように事実を知ることで偏った見方をなくせば、ワクチン接種をやみくもに恐れることはありません。
先ほど述べたように、HPVワクチンの接種は性交渉をする前に接種するのが最も効果的ですので、思春期の女の子がいるお母さんなどは接種を検討するのも良いかもしれません。
国としては「積極的に接種は勧めないが、接種はできる」という姿勢を示していて、これは要するに個人に判断を委ねるという意味です。
接種を考える場合は、しっかりとメリットとデメリットを把握することが大事です。
子宮頸がん検診
HPVワクチンにより、HPVに感染する確率を下げることができて、それにより子宮頸がんの予防になるとお話ししましたが、ワクチンを接種したからといって100%予防できるわけではありません。
さらに、適切な年齢のときにワクチンを接種した女性は決して多くはないでしょう。
万が一子宮頸がんが発症してしまったときには「早期発見」することが大切です。そのために「検診」が必要なのです。
ここでからは、子宮頸がん検診についてお話してゆきます。
検診を受けよう
子宮頸がんを早期発見するためには性交渉を経験したら定期的に子宮頚がん検診を受けることが推奨されています。日本では20歳以上の女性は2年に1回の検診が推奨されています。
子宮体がんの検診もありますが、子宮頸がんの場合は若い世代からの発症が多く、また早期に症状が出づらいため発見が遅れやすいなどの理由で、自治体が費用を助成していることがあります。
ですので、子宮頸がん検診を受ける方法としては、自治体が行う子宮がん検診を活用するか、ご自身で検診を行っている婦人科を探して受診するという方法が一般的です。
自治体が行う検診を利用する場合、無料から2000円くらい。ご自身で産婦人科を探して受ける場合は3000円から10000円くらいが目安です。
自治体が行っている場合は、対象年齢が定められています。
子宮頸がん検診は怖い?恥ずかしい?
子宮がん検診に限らずがんの検査を受けるのはなんとなく「嫌だな」と感じる人も多いと思います。痛みなども気になります。まだ受診したことがない人は具体的に何をするんだろう?と不安な気持ちもあるでしょう。
子宮頸がん検診は、基本的に生理中は受けることができません。
少なくとも生理の5日目以降出血が少なくなってから受診しましょう。
まずは、問診で月経周期や生理痛の有無、妊娠歴や出産歴、閉経している場合は閉経年齢などを確認します。
そして細いカメラで子宮頸部やおりものの状態を確認(視診)し、子宮頸部の細胞をブラシやヘラなどで採取(細胞診)します。所要時間は5~10分ほどで、ほとんどの場合あっけなく終わったと感じるくらいの速さです。
また細胞を採取する際の痛みもほとんどありません。
時間的にも身体的にも負担の軽い検査です。ただし、細胞を採取する際に少しこするので、少量の出血が見られることはあります。
子宮頸がんの検診というと、どうしても内診を恥ずかしいと感じてしまい、受診の機会を失ってしまう女性も多いようですが、子宮頸がんの初期は自分ではわかりません。
がんが進行してしまえば、若くして子宮を摘出せざるを得ない、あるいは放射線や抗がん剤など辛い治療もしなければならなくなるかもしれません。
恥ずかしがらずに検診を受けてみましょう。
終わりに
お伝えしてきたように、子宮頸がんの怖いところは、自覚症状がなくわかったときには進行しているというところだと思います。若くて、体になんの症状もなければ、まさか自分ががんだとは思わないでしょう。しかし、子宮頸がんは身近で他人事ではありません。
ぜひ検診や予防接種について知る機会を作ってみてください。