トラスツズマブデルクステカンがHER-2陽性胃がんの治療薬として承認されました。

トラスツズマブデルクステカンがHER-2陽性胃がんの治療薬として承認されました。

こんにちは。川森です。

FDAからお薬の承認メールが届きましたので、情報をシェアさせていただきます。

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FDA approves fam-trastuzumab deruxtecan-nxki for HER2-positive gastric adenocarcinomas
https://www.fda.gov/drugs/drug-approvals-and-databases/fda-approves-fam-trastuzumab-deruxtecan-nxki-her2-positive-gastric-adenocarcinomas

HER-2陽性の乳がんの治療薬としてすでに認可されているトラスツズマブデルクステカン(fam-trastuzumab deruxtecan-nxki、エンハーツ、第一三共)が、HER-2陽性胃がんの治療薬として承認されました。

どのような患者様かというと、成人でHER-2陽性局所進行胃がんまたは転移のある胃がんですでにハーセプチンの治療歴のある患者様が対象です。

この承認は、多施設、マルチコホート、無作為オープンラベル臨床試験(DESTINY-Gastric01, NCT03329690)の結果に基づきます。126人のHER-2陽性で局所進行の胃がんまたは転移性胃がん患者でこれまでに少なくとも2種類以上の抗がん剤治療、ハーセプチン、fluoropyrimidineを含む抗がん剤かplatinumを含む抗がん剤を行った既往のある患者様を無作為にエンハーツ投与群とイリノテカンかパクリタキセル群に振り分けました。

効果は、全生存期間(overall survival, OS)で判定された。エンハーツ投与群は、12.5ヶ月、対照群は8.4ヶ月でした。エンハーツ投与は有意に生存期間を延長しました。

推奨される投与方法は、6.4mg/kg体重を静脈内注射し、3週間毎に胃がんの増悪または許容できない副作用が出現するまで行います。

ちなみに、エンハーツの構造を上に示します。エンハーツは、抗体―薬物複合体(antibody-drug conjugate, ADC)と呼ばれるお薬です。

3つの構成成分からなり、

1)左のmAbと書いてあるのが、ハーセプチンに当たるHER-2に対する抗体の部分

2)topoisomerase I inhibitor(右側)

3)その2つをリンクしているDeruxtecanと呼ばれるリンカーで構成されています。

最近、このような抗体と抗がん剤、薬物をリンクさせて、抗体で腫瘍細胞を認識させ、抗がん剤で叩くというハイブリッド医薬品が増えています。

腫瘍細胞の特性を利用して腫瘍細胞だけを高濃度の抗がん剤で局所的にやっつけてくれると全身の副作用は軽減でき、効果が期待できるので、良い考えですね。

川森 俊人

医師 | 日本病理学会病理専門医/日本臨床細胞学会細胞診指導医

三重県生まれ。1987年(昭和62年)岐阜大学医学部卒業。医師免許取得後、岐阜大学医学部第一内科入局。

5年間、大学及び関連病院で内科、消化器内科を研修。1992年岐阜大学大学院医学研究科に進学し、病理の勉強をしつつ、癌研究を始める。動物実験を用いて、がんの発生から予防に関して、特に大腸がん、舌がん、肝臓がん、膵癌、膀胱癌、前立腺癌などを研究。

成果をCancer Researchなど一流がん専門誌に多数掲載され、学位取得後米国健康財団へResearch Fellowとして2年間留学。留学中、COX-2阻害剤の大腸発癌に対する抑制効果を世界で初めて動物実験で証明した。1998年帰国し、国立がんセンター研究所がん予防研究部室長として研究を進め、京都大学、小野薬品などと共同研究を行い、COX-2の下流にあるプロスタグランジンの大腸発癌における役割をその細胞膜にあるレセプターのノックアウトマウスを用いて検討した。ピロリ菌の胃発癌における役割なども研究した。国立がんセンター中央病院病理部も併任し、病理専門医、細胞診指導医として臨床病理診断、病理解剖業務に従事した。

2002年に再渡米し、サウス キャロライナ州チャールストンにあるMedical University of South CarolinaにAssistant Professorとして赴任しアメリカでの研究を再開。NIHからR01 grant取得し、共同研究としてP01 grantにも参加し、自身の研究室を主宰し、COX-2の上流と考えられるスフィンゴ脂質代謝の大腸がん、乳がん、舌がんの発生と予防における役割を研究した。2010年には、ハワイ大学がんセンターにAssociate Professorとして移動し、研究を続けた。2014年帰国し、一宮西病院病理部勤務。湘南メディカルクリニックでがん免疫療法部統括部長としてがん免疫療法を推進。2019年よりまれケアクリニック院長として訪問診療、特にがん末期の患者様の緩和ケアを行っている。

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