医師からある日突然、○○がんのステージ4です。余命〇か月です。などと言われて頭が真っ白…ということが本当にあるのが、がんです。
そのような状況で冷静でいられるはずはないのですが、否応なしに治療はスタートします。そして、治療を辞めたくないにもかかわらず辞めざるを得ないときもあります。
この記事をお読みの方の中にはすでに積極的な治療は終わってしまった方がいらっしゃるでしょう。がん治療は治ろうが治るまいが治療法がなくなればそれで終了という冷酷な側面があります。
今回は治療を終了したあとどうすれば良いかということに加え、そもそもがん治療がどのように進められるのか、そしてその限界がどこでやってくるのかということについて記載しましたので、今現在、治療を終えられた方はもちろん、がんではない方もがん治療がどういうものか知っていただけると思います。
目次
医師の教科書、診療ガイドライン
がんの治療を受けることができる医療機関は全国に数多くあります。それらの医療機関を受診し、主治医と言われる医師と相談しながら治療を進めてゆくのが一般的ながん治療の流れです。
現在、がん患者さんががんと診断されてからその後の再発防止の検査を受ける、あるいは再発後の二次的な治療を受けるその全てがマニュアル化されています。このマニュアルのことを「診療ガイドライン」と言います。
診療ガイドラインは各がんごとに作成されていて、その内容はステージ〇ならこの治療、この治療が終わればこの治療、再発時にはこの治療…などといったように細かく定められています。
診療ガイドラインは簡単に申し上げると「医師のための治療の教科書」のようなものです。この教科書にのっとって主治医は各患者さんの治療方針を決めてゆくことになります。
治療方針は、これまで治療を受けた多くの患者さんのデータに基づいた、その時に一番良いとされる治療法を推奨しています。そこに、患者さんのご年齢、体力、今後の希望などを鑑みながら主治医が最終的な治療の方向性を決めるわけです。
このガイドラインがあることで「都会の病院では最新の治療を受けることができるが地方ではできない」などというようなことがなく、日本全国どの医療機関でも同じ水準の治療を施すことがルール化され、全員が平等の治療を受けることができるのです。
ガイドラインは医師のために作成されたものですが、インターネットで閲覧することや書籍として出版されていますので本屋さんで購入することもできます。内容的にボリュームがあり、医療用語も多いため理解することは簡単ではありませんが、わからない用語を調べながら読まれている方もいらっしゃいます。
また、がんによってはQ&A方式で記載されているものもありますので、全てが理解できなくても治療に対する理解を深めたり、医師とのコミュニケーションに役立てることができる場合もあるので目を通しておくと良いでしょう。
標準治療の話
診療ガイドラインに記載されている治療はその時点で一番有効と判断された治療です。
上記でご説明したように、診療ガイドラインでは、これまで多くの患者さんがその治療を行ったことで得ることができた、予後が良い、あるいは体の負担が少ないなどといったデータに基づき治療方針を採用しています。
これをエビデンスと言いますが、このエビデンスに基づいた最善の治療を標準治療と呼び、大きく分けると手術と放射線、抗がん剤の3種で、いわゆる三大標準治療といわれるものです。なお、これらの治療は保険の適用を受けた治療ですので、一般の医療機関で提案される治療は基本的に保険が効くものです。1割から3割負担で治療を受けることができます。
がんは多くの種類がありますが、基本的に治療はこの三大標準治療のいずれかを単独、あるいは組み合わせて行うことは共通しています。診療ガイドラインには、がんの大きさがこれくらいなら手術の術式(どこまで切除するか)はこの範囲とか、このタイプのがんにはこの抗がん剤が有効などと細かく定められているのです。
標準治療が終わるとき
がんの早期とは、がんが小さかったり臓器の浅い部分までしか到達していなかったりすることで、この段階であれば比較的治療は選択肢があり短期間で終了しますし、その時点で命に係わることもありません。
しかし、それ以上にがんが大きくなってしまったり、あるいはがんと診断を受けた時点ですでに体の複数の場所に広がっている場合は標準治療のなかでできることが限られます。ステージでいうと最終段階のステージ4になると、これはがんが転移している状態ですが、一般的に抗がん剤での治療か、がんによって起こる辛い症状の緩和や延命のための緩和処置のみとなります。
早期治療でがんを根絶やしにすることができるのであればそれが最善ですが、がんが目に見えないレベルで成長したり、がんによる症状が現れにくく発見が遅れた場合に命を脅かす段階まで発展してしまうことは稀ではありません。その状態に対して標準治療ができることは多くはないのです。
医師は患者さんの希望を聞きながら診療ガイドラインのなかでできる限りのことをしてくれるでしょう。しかし治療には一度限りで二回目からは有効な効果がでないものも多いため、徐々に手札がなくなってゆきます。
例えば、抗がん剤は一度使用すると、一時的にがんが小さくなっても、効果が出づらくなるタイミングが訪れます。これは時間をおいて再度使用しても同様に効果は出ません。
これは、がんには抗がん剤に対して負けないように変化できる性質があるからで、これを耐性がつくと言います。一度耐性がついた抗がん剤は再度使用することはできないのです。また、放射線はがん以外の正常な部位に照射してしまう負担を考えると複数回の治療はできません。
このように時間が経つにつれ、がんは成長していく半面、治療の手段はなくなってゆくという、圧倒的に不利な状況になってゆくのです。そして最終的に診療ガイドライン上、打つ手がなくなったときに治療が終了するということになります。
標準治療からその先
治療が終了したといってもがんの成長は止まりません。そこで、がんによる症状を緩和するための緩和処置というものがあります。病院によってはホスピスといって専門の病棟があり、入院できるようになっているところもあります。
そこでは症状を和らげ苦痛を減らし、少しでも穏やかに毎日を送れるように処置を施します。標準治療が終わってしまったことに対する精神面などのケアもしてくれます。標準治療が終わった多くの方が利用しているシステムです。
また、自由診療に活路を見出す方もいらっしゃいます。
自由診療は保険の適用を受けておらず、現段階ではどれほど有効かというデータがそれほど揃っていませんので安全に受けられるのかという疑問がありますが、日々進化する医療技術から生まれた新しい治療を施しているものもありますので、標準治療では及ばなかった改善が見られる場合もありますし、体の負担を感じずに治療ができることもあるでしょう。
最近では、免疫細胞療法、遺伝子治療、ビタミンⅭ点滴療法などがあります。自由診療は保険適用の治療を受けている医療機関では受けることができませんので、かかりつけとは別に専門の病院を探す必要があります。
自由診療を受ける期間はかかりつけと自由診療を受ける病院とを併用するケースが多いようです。どのがんに対して有効なのか、どのような効果が出るか、治療期間などきちんと把握したうえでまずは、その医療機関の医師にセカンドオピニオンを申し込んでください。
また費用は自費となりますので、保険が効かない分高額になる場合が多いですが、病院ごとに治療費が異なります。セカンドオピニオンに行った際には治療期間が長くなった際にどうするかなどもあらかじめ相談すると良いでしょう。
終わりに
まだ治療をしたいという希望があるにもかかわらず治療の手段がなくなってしまった方をがん難民と言います。治療が功を奏し、もしかすると治療前よりも元気かもしれないのに治療の手段がなくなることによる辛さは計り知れないと思います。
この記事でお伝えした自由診療というものは玉石混交ですので、治療の手段として有効かどうかの判断は必須です。しかし、治療の効果が出れば希望の光となるのではないでしょうか。
患者さん自身の希望に合うような治療か調べ、話を聞くのが有効的かと思います。ご本人はもちろん、ご家族の皆様にも治療を得ることで前向きな生活を送れることを願っております。