腫瘍と聞くとイコールがんだと思われている方がいらっしゃいますが、そうではありません。良性腫瘍はがんではないのです。では良性腫瘍は悪さをしないのか?放っておいても良いのか?という疑問にお答えしていきたいと思います。
目次
腫瘍とは
腫瘍とは簡単に言うと「できもの」のことです。異常に増えた細胞がかたまりとなってイボやこぶのような形状になったものを総称して腫瘍と言います。腫瘍は性質の違いから「良性」と「悪性」に分かれ、このうち悪性腫瘍のことをがんと言います。
良性腫瘍と悪性腫瘍の違い
SGS総合栄養学院
良性腫瘍と悪性腫瘍の性質の違いについては以下のような点があります。
成長スピード
悪性腫瘍は細胞が増え成長するスピードが速い。それに比べ、良性腫瘍はスピードがゆっくりです。
浸潤
悪性腫瘍の大きな特徴として浸潤が挙げられます。浸潤とは周囲の正常な組織にも入り込んで悪性化することです。良性腫瘍にはその性質がなく、一か所にとどまりながら細胞が増殖します。
転移
浸潤と似ていますが、悪性腫瘍は周囲に広がる性質があり、それが遠くの臓器にまで及ぶことがあります。これを転移と呼んでいます。良性腫瘍の場合は転移せず、発生した場所でのみ成長します。
形
私たちが肉眼で見ることはできませんが、顕微鏡レベルで観察すると悪性腫瘍はギザギザでいびつな形状をしています。がんである部分とその周囲の正常な部分がはっきりせずグレーゾーンのような状態です。対して良性腫瘍は周囲の組織との境目がはっきりしていて明確です。形もほぼ円形で整っています。
このように見ていくと、良性腫瘍はおとなしく基本的に悪さをしないのに対し、悪性腫瘍は周囲を巻き込んで悪影響を及ぼすやっかいな性質があると言えます。脳などのように生命に関わる臓器に発生した場合は別ですが、それ以外は良性腫瘍が体に与える影響は軽いと言えます。
良性か悪性か手術しないとわからない卵巣がん
良性か悪性かを自分で判断することはできません。
医療機関で「できもの」を画像検査をしたり、一部を採取して細胞レベルで調べながら判断します。その結果によって良性腫瘍であれば経過観察や手術、悪性腫瘍であれば進行度に応じた治療を行うことになります。
しかし、例外として卵巣にできた腫瘍は手術をしなければ良性か悪性か判断がつかないことがあります。これは卵巣が水の入った風船のような臓器であるため、器具を刺して検査をしようとすると破れてしまうからです。
したがって卵巣に腫瘍が見つかり悪性の疑いがある場合は、まず手術を行い摘出した腫瘍を詳しく検査することになります。その結果、良性腫瘍であれば、すでに手術によって卵巣や腫瘍を取り除いていますので治療は終了です。
卵巣腫瘍による症状がある場合はもちろんのこと、症状がなく偶然発見された場合でも、ゆくゆく腫瘍が大きくなり症状が出たり、不妊の原因になったり、一部悪性化する場合があります。医師の指示に従い処置を行いましょう。
良性腫瘍の治療法
ここからは、比較的発症することが多い「大腸ポリープ」と「子宮筋腫」の2つの良性腫瘍を例にそれぞれの対処法を見ていきたいと思います。
大腸ポリープ
日本消化器病学会ガイドライン
大腸にできる腫瘍である大腸ポリープは、大腸カメラ(内視鏡)を受けることで見つけることができます。悪性腫瘍である大腸がんを発見する助けとなりますので40代以降の方は一度は受けたほうが良いとされています。
大腸ポリープとは大腸の粘膜から発生した突起物全ての総称です。大きさは1㎜から数㎝で、腫瘍性とそれ以外に分けることができます。
- 腫瘍性(悪性腫瘍/良性腫瘍)
- 成長するといずれ大腸がんになるものがあり質が悪いタイプです。
大腸がんの9割がこのポリープが育ったもので、稀に粘膜から直接育ったがんもあります。 - それ以外(炎症を伴う腸の病気から起こるものや老化現象によって起こるもの)
- 成長すると大腸がんになる可能性はあるものの、ほとんどないと言われている。
大腸ポリープの対処法
ポリープの大きさとがん化する頻度は比例します。ポリープにはがんが含まれているものがあり、そうでなくても放置した場合、増大・がん化するリスクが高いので、5㎜以上のものは切除します。
ポリープが小さい段階では、ポリープを取ったときの出血などデメリットが大きいため、経過観察で様子見となります。ある程度大きかったり、大腸がんの可能性があるポリープが見つかった場合は大腸カメラで切除します。切除したものを詳しい検査にかけ、良性か悪性かの判断をします。
ポリープ切除の費用
ポリープの切除法はポリープの形や大きさによって異なりますが、医療費3割負担の方でおよそ2万円~3万円、大きなポリープを切除する方法だと15万円~17万円(この方法は入院が必要なので入院費を含む)ぐらいです。ポリープが複数ある場合は追加料金がかかることがあります。
子宮筋腫
東京女子医科大学 産婦人科
子宮にできる良性腫瘍の一つである子宮筋腫は、子宮の筋肉の一部にこぶのような腫瘍ができる病気です。子宮筋腫は成人女性の3~4人に1人が発症するとても頻度の高い腫瘍です。発生する場所によって「筋層内筋腫」「漿膜下筋腫」「粘膜下筋腫」「頸部筋腫」に分かれます。
腫瘍は2~3個の場合や小豆大のものが無数にできる場合があり、大きくなると子供の頭大になることもあります。しかし、良性腫瘍なので悪性に変わることはありません。
子宮筋腫が大きくなったり、数が増えるにつれて過多月経、貧血、重い月経痛などの症状が現れる場合があります。
子宮筋腫の対処法
子宮筋腫が5~6㎝以下と小さく、日常生活に支障をきたすような症状がない場合は、一般的に経過観察となります。その場合は、今後の筋腫の変化を見ながら対応を決めることになります。
何も対処をしないということで不安になるかもしれませんが、現時点で子宮筋腫が悪さをすることはありませんので、普段通りの生活を送っても構いません。しかし、筋腫がなくなるわけではありませんので医師の指示通りに定期健診を受けましょう。
貧血、生理痛、過多月経がある場合は、サプリや鎮痛剤、低用量ピルなどが処方されます。筋腫が大きくなり、10㎝近くになったり、症状が重くなった場合は手術で筋腫を取ることがすすめられます。
子宮筋腫の手術費用
子宮筋腫の手術をする場合、いくつか方法があります。
- 単純子宮全摘術
- 子宮ごと筋腫を切除する方法です。卵巣、膣は残りますが切除後、自然妊娠はできなくなります。術後は子宮筋腫の再発や様々な症状に悩まされることがなくなります。手術の費用は3割負担で20~25万くらいです(開腹手術)
- 筋腫核出術
- 子宮を残し、筋腫の部分だけを切除します。筋腫の症状が軽くなり妊娠も可能ですが、子宮を残しているため再発の可能性があります。手術の費用は3割負担で15~20万くらいです(開腹手術)。
終わりに
良性腫瘍ががんではないことはお分かりいただけたと思いますが、良性なのに手術をしなければいけないのか、あるいは早く取ってほしいのに経過観察と言われてしまったなど医師から提案された対処法に疑問を持つ方も多いようです。
この記事を通して少しでも疑問と不安が解消されることを願っています。そして、何はともあれ悪性腫瘍でなくて安心されたと思いますが、今後一層ご自身の体に気を遣いながら健康な生活を送っていただきたいと思います。