がんのリスク検査って何?簡単にがんの可能性が分かる検査とは

がんのリスク検査って何?簡単にがんの可能性が分かる検査とは

2人に1人ががんになるとされる現在、がんは私たちにとって身近な病気のひとつです。

しかし、医療の進歩により、がんの多くは早期に発見して治療を行えば治る見込みが高くなっています。とはいうものの、がんはごく早期の段階では画像検査などで発見することは難しいケースも多く、進行した状態で発見されるケースも少なくありません。

そのため、これまでがんの早期発見を可能とするさまざまな検査方法が開発されていきました。

がんのリスク検査もそのひとつです。そこで今回は、がんのリスク検査の方法やメリット、デメリットなどについて詳しく解説します。

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目次

がんのリスク検査とは

「リスク検査」ってどんな検査?

リスク検査とは、ある病気になりやすい状態かどうかを調べる検査のことです。これまで、がんだけでなく歯周病や脳卒中、糖尿病などの病気に対するリスク検査が広く行われ、病気の予防や早期発見に役立ってきました。

多くのリスク検査は少量の唾液や血液などを採取して含まれる成分を詳しく調べ、病気のリスクを判定することができます。そのため、一般的な血液検査や画像検査よりも簡便に行うことができるのが特徴のひとつです。リスク検査のタイプによっては専用キッドを用いて自宅で検査を行うことができるものもあります。

近年では、特定のがんに対しても血液や唾液に含まれる成分から、発病のしやすさのリスクが分かる検査が開発されています。さらに、同日に複数のがんのリスクを調べることができるキットも販売されており、特にがん家系の方に定期的な検査がすすめられています。

これまでにも、遺伝子検査を行うことで特定のがんになりやすいか否かを判定する検査は行われてきましたが、リスク検査は検査したときに唾液や血液に含まれる代謝物などを元に判定を行います。そのため、がんのリスクをリアルタイムで知ることができ、検査を定期的に行うことでリスクの経時的な変化を把握することが可能です。

なぜ少量の血液や唾液だけでがんのリスクが分かるの?

現在、胃がん・大腸がん・肺がん・肝臓がん・食道がん・すい臓がん・腎臓がん・甲状腺がん・胆のうがん・前立腺がん・乳がん・子宮頸がん・卵巣がん・脳腫瘍など多くのがんに対してのリスク検査が開発されています。

各がんを発症する過程で産生量が増えたり減少したりする代謝物の測定や、遺伝物質の変化などを調べることでがんのリスクを判定することができるのです。また、必要なのは少量の唾液や血液のみであり、通常の画像検査や腫瘍マーカーなどを調べる血液検査では異常を検知できない段階のごく早期のがんも敏感に検知することができるとされています。

通常の検査では早期発見が難しいとされるすい臓がんを例に挙げれば、リスク検査で「高リスク」と判定された方は「低リスク」の方よりも将来的に100倍もすい臓がんになる可能性が高いことが分かっています。

リスク検査のメリットとデメリットとは ?

上述したように、リスク検査は身体に負担をかけることなく、がんのリスクをリアルタイムで把握することができる優れた検査です。しかし、リスク検査にもメリットとデメリットがあります。それぞれどのようなことが挙げられるのか詳しく見てみましょう。

リスク検査のメリットとは

まずは、リスク検査のメリットについて説明します。

簡単にがんのリスクが分かる

リスク検査の最大のメリットは、少量の血液や唾液のみでがんのリスクを判定できることです。身体に負担をかけることなく採取した少量の血液や唾液を検体とし、約2~3週間ほどでがんのリスクを判定することができます。

多くのリスク検査は特定のがんになるリスクを「高リスク・中リスク・低リスク」などいくつかの段階で表示されるため、リスクが高いがんに対して定期的な画像検査などを行うことで早期発見につながるとされています。

さまざまながんのスクリーニングができる

現在、がんに対するリスク検査は開発が進められ、多くのがんに対して行えるようになっています。具体的には、胃がん・大腸がん・食道がん・肝臓がん・すい臓がん・胆のうがんなどの消化器系のがん、肺がん、腎臓がん、甲状腺がん、脳腫瘍、男性に特有の前立腺がん、女性に特有の乳がん、卵巣がん、子宮頸がんなどのリスク検査が開発されています。

リスク検査の種類によっては特定のがんだけでなく、複数のがんのリスクを同時に判定できるものもあり、家系にがん発症者が多い方やがんになりやすい生活習慣の乱れなどがある方の受検がすすめられています。

リスク検査にデメリットはあるの?

がんのリスク検査は非常にメリットが大きい検査ではありますが、少なからずデメリットがあるのも事実です。どのようなデメリットがあるのでしょうか。

採取した唾液の状態によって検査結果に差が出る

がんのリスク検査は血液や唾液を採取して行いますが、唾液を用いる検査では採取した唾液の状態によって正しい判定ができないことがあります。

正確な検査を行うために2日前から特定の成分が含まれるサプリメントなどの摂取は控える必要があること、豆類などの摂取量を制限すること、検査当日は朝食を控えること、検査の1時間前までに歯みがきを済ませることなど決められたルールがあります。また、何らかの体調不良があるときは回復してからの検査が推奨されています。

検査を受けるときは、事前の注意事項をよく確認しておくことが必要です。

検査費用が高い

現在(2022年現在)のところがんのリスク検査は健康保険の適用とはならないため、自費での検査を受ける必要があります。医療機関や受けるリスク検査のタイプによって費用は異なりますが、多くは検査と結果説明などを含めて20,000~30,000円程度となります。

また、医療機関によってはその他にも何らかの検査が必要となる場合は、追加の費用も必要となるケースも少なくありません。

リスク検査は遺伝子検査とは異なり、がんのリスクをリアルタイムで判定する検査であるため、一度だけではなく定期的に受けて経時的なリスクの変化を把握することが推奨されています。そのため、検査を受けるたびに費用が必要となるため負担が大きい検査でもあるのです。

リスク検査の注意点

最後に、がんのリスク検査を受けるときの注意点について詳しく見てみましょう。

検査を受ける前に注意すべきこと

上述したようにがんのリスク検査は、採取した唾液や血液の状態によって正確な判定ができないこともあります。

検査の数日前から当日には食事制限などもあるため、事前に注意点をしっかり把握して正しい検査結果を得られるよう注意しましょう。また、検査当日に発熱や痛みなどの症状があるときは忘れずに医師に申告してください。

がんの確定診断ができるわけではない

がんのリスク検査は、あくまでもがんになりやすい状態か否かを判定するための検査です。がんの確定診断ができるわけではありません。検査で「低リスク」と判定された場合でも定期的な健康診断はかかさず、検査でリスクが高いと判定された場合は精密検査を受けることが大切です。

リスク検査が適さないがんもある

現在、多くのがんに対するリスク検査が開発され、一度に10種類以上のがんのリスク検査を行うことも可能となっています。しかし、リスク検査は全てのがんに適応されるものではありません。

定期的にリスク検査を受けている方も体調不良が続くときや健康診断で異常を指摘されたときなども放置は禁物です。早めに医師に相談して、必要であれば精密検査を受けるようにしましょう。

【まとめ】リスク検査について

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がんのリスク検査は少量の血液や唾液などに含まれる代謝物や遺伝物質などから、リアルタイムにがんになりやすい状態か判定する検査です。従来の血液検査や画像検査などでは発見できないごく早期のがんを検知することも可能であるとされており、がんの早期発見・早期治療につながる検査として注目されています。

現在、多くのがんに対するリスク検査が開発されており、身体に負担をかけることなく検査を受けることが可能です。しかし、リスク検査は費用も高く検査を受けるために守らなければならないルールもあります。がん家系の方やがんになりやすい生活習慣がある方は受検がすすめられていますが、メリットやデメリットなどをしっかり把握して検査を受けるかどうかを決めていきましょう。

また、リスク検査はがんの確定診断をすることはできず、適応とならないがんもあります。検査を受けた方も結果のみにとらわれず、定期的な健康診断を受け、体調不良が続くときは放置しないことが大切です。

東京高輪病院 健康管理センター「血液による「がん」リスク検査」
https://takanawa.jcho.go.jp/kenkan/血液による「がん」リスク検査/
株式会社サリバテック 「サリバチェッカーとは?」
https://salivatech.co.jp/
日本予防医学協会 「歯周病リスク検査」
https://www.jpm1960.org/tob/perica.html

成田 亜希子

医師|内科医・日本内科学会・日本感染症学会・日本公衆衛生学会・日本健康教育学会

2011年医師免許取得。一般内科医として幅広い疾患の患者様の診療を行っている。行政機関に勤務経験もあり、がん対策にも携わってきた。

プロフィール詳細

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