ロボット手術とは?適応疾患、メリット、デメリットを詳しく解説

ロボット手術とは?適応疾患、メリット、デメリットを詳しく解説

成田 亜希子

内科医

ロボット手術とは、お腹のなかにロボットアームに固定された特殊な医療機器を挿入し、医師が別の場所からロボットアームを操作して行う手術のことです。

近年、ロボット手術は急速に広まっており、前立腺がん、腎がん、膀胱がん、肺がん、食道がんなどのほか、弁膜症など心臓の病気にも適応されています。がんの治療法のひとつとしてメジャーになりつつある手術であるといえます。

そこで今回は、ロボット手術の流れからメリット・デメリット、費用などについて詳しく解説します。

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目次

ロボット手術とはどんな治療法?

まずは、ロボット手術とは具体的にどのような治療なのか詳しくみてみましょう。

ロボット手術の歴史

ロボット手術の原点は1995年。患者への身体の負担を最小限に抑えた手術を行う方法を見出すことを目指して、「インテュイティブサージカル」という会社がアメリカで開発されたことに始まります。

そして1999年には、現在のロボット手術の元となる「ダビンチサージカルシステム」の販売が開始され、その後20年にわたってさまざまな改良が加えられながら急速に拡大されていきました。日本では2012年に前立腺がんのロボット手術が初めて保険適応になっています。

近年では、インテュイティブサージカル社以外にもロボット手術の開発を行う企業もあり、今後は人工知能などを応用した技術でさらなる進化が期待されているのが現状です。

ロボット手術の流れ

現在、ロボット手術はさまざまながんなどの病気に行われています。それぞれの病気によって手術の流れは異なりますが、原則的には全身麻酔をしたうえでお腹や胸に医療機器を挿入するための穴を切開します。穴の大きさは5~10mm程度であり、手術によって異なりますが4~6か所ほど設置するのが一般的です。

現在では、この穴のひとつには高解像度の3D内視鏡を挿入し、お腹や胸のなかを非常に鮮明な状態で観察できるだけでなく、細かな拡大機能もあるため、お腹や胸を開いて行う従来の手術方法より手術を行う部位の状態を詳細に捉えることが可能です。

また、お腹や胸に挿入された鉗子などの医療機器は組織をつかんだり、切ったり、縫ったりすることが可能であり、コントローラーによって操作します。コントローラーには、手振れ補正機能もあるため、非常に細かい操作も正確に行うことができます。

このような機器を用いてがん切除などが完了すれば手術は終了です。一般的に、通常の腹腔鏡手術などよりも、手術時間は長めとされています。一方で、従来のどの手術方法よりも傷口が小さいため、術後の回復は早いのが特徴です。

ロボット手術の適応疾患

日本では、2012年に前立腺がんが保険適応となったのを始まりとして、現在では腎臓がん、縦隔がん、肺がん、食道がん、胃がん、直腸がん、膀胱がん、子宮体がん、縦隔良性腫瘍のほか、心臓弁膜症へのロボット手術が保険適応となっています。(2022年現在)

ロボット手術のメリット・デメリット

上述したように、ロボット手術は近年急速に広まっている新たな手術様式であり、日本においても保険適応となる対象疾患は増えています。ロボット手術にはさまざまなメリットがありますが、その一方で従来の手術方法にはなかったデメリットもあります。

ロボット手術のメリットとは?

ロボット手術の最大のメリットは、傷口が小さいため、従来の手術法よりも身体への負担を抑えることができることです。回復までの時間が短く、術後に感染症などの合併症が生じるリスクも少ないとされています。

また、ロボット手術は、手術器具の手振れを補正しながら正確な操作を行うことができます。術野を拡大して詳細に観察することができるため、より精度の高い操作をすることができるのも大きなメリットです。

従来の方法であれば、神経や血管損傷などのリスクが高い手術であっても、繊細な操作を行うことで後遺症や出血などが生じる可能性を軽減できると考えられています。

ロボット手術のデメリットとは?

ロボット手術の最大のデメリットは、熟練した医師でなければ安全な手術を行うことができないため、実施できる施設に限りがあることです。

ロボット手術では、ロボットアームを操作して鉗子などの医療機器を動かして組織を摘まんだり、はがしたり、縫い合わせたりします。つまり、術野に直接触れることはないため感触がわからず、さらに3D画面で術野を見るため距離感覚がつかみにくいとされています。

また、ロボット手術は、従来の手術法よりも明らかに合併症は少ないとされていますが、ロボット手術に特有の合併症が起こることもあります。

代表的な合併症としては、視力障害が挙げられます。ロボット手術では、仰向けに横になったまま頭を30度ほど下げた状態で手術を行います。そのため、目の静脈の圧が上昇することで、視力障害を起こす可能性があるのです。

ロボット手術は、事前にどのような合併症が起こりうる可能性があるのか医師から説明を受け、納得したうえで受けるようにして下さい。

ロボット手術ができるのはどんな人?費用は?

ロボット手術は適応となる病気であっても、受けられる人と受けられない人がいます。最後に、ロボット手術はどんな人ができるのか、費用についても合わせてみてみましょう。

こんな人はロボット手術を受けられる!

現在、ロボット手術は多くの病気に対して保険が適応できるようになっています。しかし、たとえば前立腺がんの場合、前立腺がんと診断されれば必ずロボット手術を受けられるというわけではありません。がんが周辺の組織と強く癒着していると予測できるような場合、ロボット手術では限界があるため、従来の開腹手術がすすめられます。

ロボット手術は、原則的にがんが広範囲に拡がっていないことが適応の条件となります。また、身体への負担が少ないため、従来の手術に耐えうる体力がない高齢者などでも受けることが可能です。

ロボット手術ができないこともある?

上述したように、ロボット手術はがんが広く拡がっているケースでは積極的にすすめられません。

また、ロボット手術は、頭を下げた体位で行うため血流などが通常時と変わるため、身体にはさまざまな変化が生じます。特に頭のなかの圧が高くなるため、神経系に影響を与えることがあり、動脈瘤がある人は、原則的にロボット手術を受けるべきではないとの考えもあります。

このように、病気の進行度や合併症の起こりやすさなどの条件によっては、ロボット手術が受けられないケースは少なくありません。

ロボット手術の費用は?

ロボット手術は精密な機器を用いるため設備に多額の費用がかかり、熟練した医師も必要になります。そのため、手術費用は従来の方法と比べて高額です。

前立腺がんの手術を例に挙げれば、従来の開腹手術ではおよそ120万円程度の費用であるのに対し、ロボット手術をした場合は160万円程度の費用が必要になります。

ただし、保険の適応となるため、ロボット手術をした場合でも3割負担の場合は50万円前後の自己負担となり、高額医療の対象にもなるため収入に応じて費用はさらに低くなります。

ロボット手術を受ける場合は、事前にご自身の費用を確認しておくとよいでしょう。

【まとめ】ロボット手術について

ロボット手術は、最小限の傷口で身体への負担を抑えた治療法です。1999年に現在の元となるロボット手術のシステムが販売開始し、世界中に広く普及しています。日本では2012年に前立腺がんに対するロボット手術が保険適応となり、現在ではさらに多くのがんや心臓弁膜症が保険適応となっています。

ロボット手術は、術野を拡大して詳細に観察しながら繊細な操作を行うことができるため、合併症や出血が少なく、術後の回復も早いとされています。一方で、ロボット手術には視力障害など特有の合併症が生じることもあり、行える施設が限られているのがデメリットでもあります。

ロボット手術を受ける場合は、事前に医師とリスクについて相談し、かかる費用などについても把握しておくようにしましょう。

1.国立がん研究センター東病院「ロボット手術について」
https://www.ncc.go.jp/jp/ncce/clinic/gastric_surgery/050/050/index.html
2.国立がん研究センター中央病院「からだにやさしいがん手術」
https://www.ncc.go.jp/jp/ncch/robot/index.html
3.日本ロボット外科学会「Da Vinciの紹介」
https://j-robo.or.jp/robot/da-vinci/
4.内分泌甲状腺外会誌 31(2):83-86,2014「ロボット支援手術の利点と問題点」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jaesjsts/31/2/31_83/_pdf/-char/ja
5.日臨麻会誌Vol.39 No.1,67-72,2019「泌尿器科ロボット支援腹腔鏡下手術の麻酔管理」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsca/39/1/39_67/_pdf/-char/ja
参照日:2022年05月

成田 亜希子

内科医

2011年医師免許取得。一般内科医として幅広い疾患の患者様の診療を行っている。行政機関に勤務経験もあり、がん対策にも携わってきた。

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