【胃がん手術後のよくあるトラブル集】後遺症や合併症について

【胃がん手術後のよくあるトラブル集】後遺症や合併症について

今回のテーマは胃がん手術後に起こりやすい後遺症や合併症についてです。
食生活に大きく関係する「胃」を切除したあとは、どのような症状が起きて何に気をつけなければ良いのでしょうか。

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目次

胃がんの手術から退院まで

まず、胃がんの手術を受けるときのプロセスを見てみましょう。
手術を安全に受けるため、また術後スムーズに回復するために手術の前後では食事や行動に制限があります。

入院から退院までの流れ

入院から手術前日

  1. 手術を安全に受けるための検査を行う
  2. 前日の夜は飲食の制限あり
  3. 下剤を服用し排便を行う

手術当日

  1. 手術直後は安静に過ごす
  2. 点滴やカテーテルはつけたままなので動くときは看護師を必要とする
  3. 術後数時間後に麻酔が切れると痛みを感じる
  4. 当日は飲食不可

手術翌日

  1. 水分摂取が可能になることもある。
  2. 術後の検査
  3. 手術後数日
  4. 2、3日後には流動食が可能となる
  5. 徐々に歩行練習など動くことが可能になる
  6. およそ1週間後に抜糸を行う
  7. 10日後ころから退院が検討される

手術のための入院から退院まではおよそこのような経過をたどります。
術後は日に日に体調は回復してくるはずですが無理をしないようにしてください。眠れない、痛みがある、食べ物や飲み物が下に落ちないなどの症状がみられる場合は医師に相談してください。

退院許可が出る基準

最近では、入院期間が短く早めに退院できる傾向にありますが

  • 術後の検査に問題がない
  • 体力が徐々に回復している
  • 食事が採れるようになってきた

などを基準に医師が退院を検討します。

退院後、職場復帰などにはもう少し時間がかかる場合が多く、早い人でも1週間ほどは自宅で待機することが多いでしょう。

胃がんの手術後は食事のとりかたが以前とは異なることに注意します。
また、手術による合併症が起こりうることも知っておく必要があります。
これらをきちんと把握しておくことで安心して日常生活を送ることができるでしょう。

合併症とは?

合併症とは手術や検査などが原因で発症する別の病気や症状のことです。
手術の技術などの進歩でその危険性は低下しつつありますが、特に体力が低下している人や高齢者、持病がある人などは合併症を起こしやすいと言われているので注意が必要です。
合併症を起こすと、入院が長引いたり時には命に関わることもあります。

胃がんの手術後に起こりやすい合併症と対策

胃がんの手術後に起こりやすい合併症はいくつかありますが、そのうち比較的重症化しやすいものを挙げます。

膵液漏

胃がんの手術は腫瘍の場所によって切除する範囲が決まります。
ある程度がんが進行していると、すい臓に近いリンパ節や場合によっては膵尾部や脾臓を切除することもあります。

その際に膵液が漏れることを膵液漏といい、重症化する可能性のある合併症の一つです。
漏れる膵液がわずかであれば問題ありませんが、多量になると腹腔内に膿がたまったり出血の原因となります。再手術、抗生物質の投与、患部の洗浄などで処置します。

縫合不全

胃の手術後に縫い合わせた部分が十分にくっつかず消化液や食べ物が漏れ出ることがあります。切除する範囲によって、食道、小腸、十二指腸などとの縫合部で縫合不全が起こります。
手術の翌日に起こることもあれば、数日後に食事が始まってから起こることもあります。
小さな縫合不全の場合は自然にふさがることが多いですが、大きな縫合不全は腹膜炎や感染症をおこし死に至ることもあります。

胸水・腹水

術後に胸やお腹に水がたまることがあります。
リンパ節を切除したことによるリンパ液の漏れや腹部の炎症などが原因です。
水は自然に消失することもありますが、多量にたまった場合、肺を圧迫するため針を刺して抜き取るなどの処置をします。胸水も通常は自然に吸収されますが、多量にたまってお腹が張る場合は管を入れて排出します。

肺炎

術後は全身麻酔の影響で痰が多くなります。

術後の傷の痛みなどで呼吸が浅くなり、痰が十分排出されずにたまってしまうと術後肺合併症を引き起こすことがあります。

肺炎もその一つで、痰がたまったところが感染を起こし炎症が生じた状態です。抗生物質で対処しますが、まれに重症化す.ると呼吸不全を引き起こすことがあり人工呼吸器を必要とすることもあります。高齢者や体力の低下している人、喫煙者などはリスクが高いのでとくに注意が必要です。

手術直後は安静にする必要がありますが、それ以降はできるだけ体を動かすことが回復を早め合併症の防止につながります。
徐々に歩くことができるように体を慣らしてゆくことが必要ですが、体全体を動かすことができなくても手や足先だけでも曲げ伸ばしをしたり振ったりすることが勧められています。

手術の後遺症

合併症は、術後早い時期に発症するものとお伝えしましたが、一方後遺症は手術から回復後、比較的長期間にわたって現れる症状をさします。

胃がんの手術は胃を切除したことにより、食事など日常生活への影響が大きいため上手につきあってゆくことが大切です。

切除した範囲で症状がかわる

胃がんの手術は胃の一部の切除か全摘かに大きく分けることができます。
胃の一部、または全部を切除して食道や十二指腸、小腸などとつなぎあわせるため、後遺症は腸など周辺の部分に見られることが多くあります。
後遺症があらわれても対処法を知っておくことで改善が可能です。
退院後は日常生活のなかでゆっくり取り組んでゆきましょう。

後遺症と対策

胃がんの手術後に起こりやすい主な後遺症

ダンピング症候群

胃を切除したことにより、十分に消化されていない食べ物がすぐに小腸に落ちてしまうことで起こる症状です。

特に、胃の全摘術を受けた場合に起こりやすいとされていますが、症状や頻度は手術の範囲や方法によって異なります。
急激な血糖値の変動やホルモン分泌により冷や汗、動悸、倦怠感などの症状がみられます。
ダンピング症候群は、食後30分以内に起こる「早期ダンピング症候群」と食後2.3時間たってから起こる「後期ダンピング症候群」に分かれますが、食事に際して①ゆっくり②よく噛む③少量ずつ食べる④低血糖低下の場合、間食を取って予防。糖分を含むキャンディや飲み物を取る
これらのことで対処が可能です。

つかえ

胃全摘術や胃の入り口(噴門部)を切除した場合に起こりやすい症状です。
噴門部は食べ物をスムーズに流す働きをしていますが、この部分を切除し食道と小腸が吻合されたことで食べ物の通りが上手くゆかなくなるのです。

胸が苦しく食べ物や飲み物が下りてゆかないので食事が進みません。

吻合部が狭窄しているときは、バルーンで拡張する処置がとられることもありますが、食べ物をよく噛んで少しずつ飲み込んだり、のどを通りやすい粘り気のあるものを食べるなど工夫したり、上半身をそらすなど姿勢を変えることで改善することもあります。

逆流性食道炎

胃の入り口(噴門)や出口(幽門)を切除すると、逆流防止の機能が失われ胃液、胆汁、膵液など刺激の強い物質が逆流するため辛い症状が起こります。

主な症状として、食後のむかつき、胸焼け、気分が悪くなる、喉の痛みがあります。食道の粘膜に炎症や潰瘍ができることもあります。
就寝時に、逆流しないよう枕で頭部の位置を調整することもできますが、基本的に薬で対処しますので医師に相談してください。
薬で改善しないときには再手術が検討されることもあります。

栄養障害・貧血

通常、食べ物は胃で消化され栄養が腸で吸収されますが、手術後それらの機能が低下することで体重減少や栄養不足による貧血が起こることがあります。

めまいやふらつきなどの症状がみられます。

不足した栄養は注射で補うことができる他、貧血予防に鉄分を多く含む食材(ほうれん草やレバーなど)を積極的にとるなどで対処することができますが、それらの食材を食べるのが辛いときは、栄養補助食品や高カロリーの流動栄養剤などで補完することもできます。医師に相談してみてください。

おなら・便秘・下痢

消化管を手術でつなぎ合わせることで腹腔内の環境が変わり腸の動きが低下します。それに伴いさまざまな症状が起こります。

ガスがたまってお腹が張ったような感じがしたり、おならが出やすくなったりすることがあります。胃や腸での消化吸収が十分でないと下痢を起こしやすくなりますし、腸の動きが鈍くなると反対に便秘気味になります。

これらは食事内容に気をつけることで改善します。
それでも症状が継続する場合には、整腸剤や下痢止め、便秘の場合は緩下剤を医師に処方してもらいます。
適度な運動も改善につながると言われています。

おわりに

胃は「食べること」に大きく影響を与えるため、合併症や後遺症によって食事という日常の楽しみが半減してしまうのは非常に残念なものです。
医療的な処置が必要となるものも当然ありますが、自分自身で予防・改善できるものもありますのでこの記事を参考にぜひ取り組んでみてください。

国立がんセンター がん情報サービス 胃がん 

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