抗がん剤は、がんの三大治療のうちの1つです。
残りの2つは手術と放射線ですが、抗がん剤という視点から大別すると、手術や放射線と抗がん剤を組み合わせる場合と抗がん剤単体で行う場合があります。
どうしてこのように治療は異なるのでしょうか。そして抗がん剤によって治療の大きな目標である「完治」までたどりつけるのでしょうか。今回はこれらの点をご説明します。
目次
がんの完治とは
そもそもがんの完治というのは「体からがん細胞がなくなり(おおむね)5年間再発しないこと」を言います。
5年間というのは、初期治療を終え一見がんがなくなったように思えても、がん細胞は微小で検査などでは発見できないため体内に残存している可能性があります。その有無を判断するにはある程度がんが大きくなる時間(その最大が5年)が必要だからです。
5年以内に再発したら「がんが残っていた」ということであり、再発しなかったら「がんを全て排除できていた」ということ。つまり「完治」は5年後初めてわかる初期治療の結果なのです。
完治したかどうかは「待つ」しか方法がありません。
治療の途中や治療後すぐに「完治した」かどうかはわからないのです。今回のテーマである抗がん剤も、治療中や治療後すぐに完治したかどうかは判断できません。
抗がん剤の使いかたの一つとして、抗がん剤を期間を限定せずに行う場合がありますが、そのような場合は完治を目指した治療とは言えません(これについては後述します)。
それを踏まえて抗がん剤の目的を見てゆきましょう。
抗がん剤の目的
抗がん剤は以下の目的で行います。
- 再発予防
- 延命
- 完治
再発予防
「抗がん剤の役割=がんを根絶やしにすること」
再発予防目的の抗がん剤は主に手術のあと補助的に行います。手術で取り切れないがん細胞を根絶やしにすることで再発させないようにするのです。
手術とセットで行うことで、手術で取り切れなかったがん細胞がもし残っていても、それらを抗がん剤で叩くことができれば完治となります。
延命
「抗がん剤の役割=がんの進行を遅くすること」
ステージ4などの進行がんのケースでも抗がん剤を行います。ステージ4は体の複数の箇所にがんが存在していますので、全身に効果が見込める抗がん剤は有効な治療ですが、全てのがん細胞をなくすことは困難であり、その目的はがんの進行スピードを少しでも緩め、延命を図るものです。
上記でご説明した、期間を限定せずに抗がん剤を行う場合というのがこれにあたります。
抗がん剤を順番に時間をかけて使用してゆくことで、がんが悪さをするのを極力抑え込み、がんとは関係ない、本来のその人の寿命にできるだけ近づけることを目的にします。
完治
「抗がん剤の役割=体からがんをなくすこと」
種類によっては、抗がん剤だけで完治が見込めるがんもあります。白血病・悪性リンパ腫といった血液がんと胚細胞腫瘍・柔毛がんです。これらのがんは薬剤感受性が高く、抗がん剤で完治が期待できると言われています。
一方、その他のがんは抗がん剤だけでがんを完治させることは困難です。ゆえに、手術や放射線と共に行うのです。
これらのがんで抗がん剤だけで治療を行う場合、その目的は完治ではなく症状緩和であり、苦しい症状を抗がん剤で緩和させることになります。
抗がん剤は目的によって使い分けられる
同じ抗がん剤でもその目的は異なることがおわかりいただけたと思います。
これをお読みの方の中には、これから抗がん剤を予定している方がいらっしゃるかもしれません。
今回は簡単にご説明しましたが、今後抗がん剤を受けるにあたってさまざまな疑問や不安が出てきた場合は積極的に担当医に相談してみてください。