がん保険は本当に不要?がん保険のメリット・デメリットを解説

がん保険は本当に不要?がん保険のメリット・デメリットを解説

インターネットで、「がん保険は不要」といった記事を目にしたことはありませんか?たしかに、「いつかかるかわからないがん治療のために、毎月お金を支払っていられない」という気持ちもわかります。しかし、本当にがん保険は不要なのでしょうか。

この記事では、がん保険のメリットやデメリットをはじめ、がん保険に入っていない場合にがんになってしまったらどのくらいの費用が必要なのかを解説します。がん保険に入るかどうか迷っている方は、ぜひ参考にしてください。

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目次

がん保険とは

はじめに、そもそもがん保険とはどのような保険なのかをみていきましょう。

がん保険はがんに特化した保険

がん保険とは、文字通り、がんになったときだけに適用される保険です。年齢が上がるとともにがんにかかる確率は高くなるため、毎月の掛け金も上がります。また、女性よりも男性のほうががんにかかる確率が高いことから、一般的に男性の掛け金のほうが高い設定になっています。

例えば、一般的ながん保険だと20代男性の場合、月々の掛け金はおよそ2,000~3,000円程度。それが60代男性になると、月々の掛け金は2~3万円になります。

がん保険はどのようなときに給付される?

がん保険の保険金が給付されるのは、以下の4つのタイミングです。

  • がんと診断されたとき
  • がんで入院したとき
  • がんで手術をしたとき
  • がんで通院したとき

がんと診断されたときに支払われる給付金を「診断給付金」、入院時に支払われる給付金を「がん入院給付金」、手術時の給付金を「がん手術給付金」、通院時の給付金を「がん通院給付金」と呼ぶことが一般的です。

がん保険を知らない人のなかには、「がんで入院したときだけ支払われる保険」と思っている方も多いのではないでしょうか。もちろん、がんで入院したときにも給付金は支払われますが、がんと診断されたときや手術、通院したときにも給付金は支払われます。また、保険によっては、「抗がん剤治療給付金」や「放射線治療給付金」、「先進医療給付金」を付帯しているものもあります。

なお、診断給付金は使い道を選ぶことができ、がんの治療にあてても、貯蓄しても、生活費にあてても問題ありません。

がん保険と医療保険の違い

「もうほかの医療保険に入っているからがん保険は不要」と思う方もいるのではないでしょうか。医療保険は、がんを含むほとんどの病気やケガをカバーする保険です。一方、がん保険はがんに特化した保険で、ほかの病気やケガの際には給付金は支給されません。

がん保険と医療保険の大きな違いは、給付金の“幅”です。前述したようにがん保険の場合は、がんと診断されたときや入院、手術、通院したときに給付金が支払われます。

一方、医療保険でカバーされているのは入院時と手術時など限定的です。さらに、ほとんどの医療保険の入院給付金は、30日や60日など、支払い限度日数が設けられているのに対し、がん保険は基本的に支払い限度日数はありません。

がん保険不要論は本当?

がん保険は、がんと診断されたときに非常に頼りになる保険ですが、不要と考えている人も少なくありません。なぜがん保険は不要と考える人がいるのでしょうか。

がんにかかる確率は必ずしも高くない

“がん保険不要論”の根拠としてよく言われるのが、「がんにかかる確率は必ずしも高くない」というものです。たしかに、全年齢、全性別を考慮すると、がんになる確率は日本人の2人に1人です。しかし、どれくらいの確率でがんに罹患するかは、年齢によって大きく異なります。

国立がん研究センターが発表する「最新がん統計」(2018年)によると、70代男性が10年後にがんにかかる確率は31.7%ですが、20代男性が10年後にがんにかかる確率はわずか0.3%。30代男性で0.6%、40代男性で1.6%です。がん保険は10年更新のものが多く、掛け捨てが一般的です。解約払戻金も受け取れません。

そのため、若い世代のなかには「わずかな確率のために毎月掛け金を支払うのはもったいない」と考える人が多いのです。

一生でがんにかかる確率はどれくらい?

それでは、一生のうちにがんにかかる確率はどれくらいなのでしょうか。国立がん研究センターの「最新がん統計」(2018年)によると、男性が65.0%、女性が50.2%。そして、がんで死亡する確率は、男性が26.7%、女性が17.8%となっています。
(参考:がん情報サービス 最新がん統計 2021年12月参照

がん治療にかかる費用は?

自分にがん保険が必要かどうかを考えるうえで、がん治療にいくらの費用がかかるのかは把握しておく必要があります。

厚生労働省の「医療給付実態調査」を基に計算をすると、胃がんの平均入院費用は約64万円(医療費3割負担者で約19万円)。入院前後の通院治療費用の平均は約4万円(医療費3割負担者で約1万2,000円)です。

もちろん、がん治療にかかる費用はこれだけではありません。個室に入院した場合の差額ベッド代や入院中の食事代、通院の交通費などがこれとは別にかかります。がん保険に入っていない場合、これらのお金はすべて自己負担となります。

がん保険のメリットとデメリット

ここからは、がん保険のメリットとデメリットについてまとめてみていきましょう。

がん保険のメリット

がん保険の一番のメリットは、がんと診断されるとさまざまなタイミングで給付金が受け取れることです。

がんと診断されたときや、がんで入院・通院したとき、がんの手術をしたときに給付金が支払われるほか、抗がん剤治療を受けたときや放射線治療を受けたときも給付金を受けられる保険もあります。

また、一般的な医療保険の場合、入院支払い限度日数が定められており、限度日数を超える入院時には給付金は支払われません。がんはその種類と進行度合いなどによって、入院が長期になることも少なくない病気です。そのため、がん保険は、入院支払い限度日数がないものが一般的です。

さらに、がん保険のなかには、先進医療を受けたときに支払われる給付金を付帯しているものもあります。

先進医療の多くは患者の自己負担で、例えば「陽子線治療」という治療方法は約300万円かかります。一部のがんを除き、陽子線治療は原則、全額自己負担です。つまり、がん保険に入っていないと約300万円をすべて患者が自己負担しなければならないわけです。お金が用意できないばかりに、高い効果が期待できる先進医療を受けられないという可能性もあるでしょう。

がん保険のデメリット

がん保険のデメリットとして、がん以外には適用されない点が挙げられます。がん保険は、がんに特化した保険のため、がん以外の病気やケガをしたときには適用範囲外になり、医療保険の場合は、がんを含むほとんどの病気やケガの入院、手術時に給付金が支払われます。

また、がん保険には注意しなければならないポイントがあります。それは、がん保険には免責期間がある点です。がん保険の多くは、契約期間が始まったときから起算して90日あるいは3カ月など一定期間、免責期間が定められています。この免責期間中にがんと診断された場合、給付金は支払われません。

がん保険が不要なのか必要なのか

がん保険が不要なのか必要なのか、さまざまな角度から検証しました。がん保険不要論が根強くあるように、たしかにがん保険は結果的に掛け金が無駄になってしまうケースがあります。がん保険の多くが掛け捨てで、せっかく掛け金を支払っても給付金を受け取ることなく、契約期間が満了したという人も少なくありません。

預貯金が多い人や、手厚いがん特約を付帯している医療保険に入っている人のなかには、がん保険が不要な人もいるでしょう。しかし、がん治療には、多額の費用がかかります。また、がんと診断されると「この先、自分や家族、仕事はどうなってしまうのだろう」と不安でいっぱいになります。

ただでさえ不安ななか、医療費にも不安があると安心して治療に専念できません。さらに、お金がないばかりに先進医療を受けられない、といったことも考えられるでしょう。少なくとも現時点で、がんの治療費に不安がある人は、がん保険の加入を考えてみてはいかがでしょうか。

大塚 真紀

医師|総合内科専門医・腎臓内科専門医・透析専門医

東京大学大学院医学系研究科卒。医師、医学博士。博士号は、マウスを用いた急性腎障害に関する研究で取得。専門は、腎臓内科、透析。都内の大学病院勤務を経て、現在は夫の仕事の都合でアメリカ在住。医療関連の記事の執筆や監修、医療系動画監修、企業戦略のための医療系情報収集、医療系コンテンツ制作など幅広く行なう。保有資格:医学博士、総合内科専門医、腎臓内科専門医、透析専門医

プロフィール詳細

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