がんで退職を余儀なくされる人は非常に多いものです。
退職の声がかかる、いわゆる「肩叩き」を受けると泣く泣く自分から退職の道を選ぶがん患者さんがたくさんいます。傍から見ると、労働者からの退職希望という形で双方が同意した退職ですが、これは会社からの一方的な解雇と変わりありません。
がんが原因で仕事をクビになったら会社を訴えることは出来るのでしょうか。
会社を訴えるにあたって知っておきたいこと
まず、退職や転籍などは就業規則に基づいて行われるべきもので、それ以外のケースは双方の同意があることが条件となります。
がんになったからといって、それだけの理由で会社が簡単に社員を解雇することはできません。会社には社員を解雇する正当な理由が必要となります。
会社は社員の状況を把握しているか
がんという理由で一方的に解雇を促された場合、会社側はあなたの情報をきちんと把握しているでしょうか。
第一に治療計画をもとにして、ご自身の体力の回復など今後どこまで会社に貢献できるのか、産業医が在籍している職場でしたら産業医の力を借りてきちんと説明し、理解を得ましょう。
がんに対する医学的な認識がないのに、がんになったということだけで先の見通しを考慮することなく職務遂行が不可能と判断され、退職を勧められている場合があります。
それでももし、不当に解雇された場合は弁護士を通じて訴えるという手段を講じることができます。
従業員の解雇は妥当かどうか
弁護士を通じて会社を訴えようとする際は、会社側が解雇という方法を選択するのが妥当かどうかがポイントとなります。
会社が労働者を解雇する理由として妥当だとみなされるのは、労働者の能力が著しく低下し改善の見込みがない、無断欠勤や遅刻を繰り返す、職務命令に従わない、などです。
さらに、会社が社員に対し適切な指導や仕事内容を変えるなどの改善努力を行っていなかった場合には不当解雇にあたります。
がん治療が仕事へ及ぼす影響
治療が及ぼす影響で考えられるのは、職務遂行能力の低下です。
これに関しては、治療によって以前と同じ内容・量の仕事をこなすことが一時的に困難になったとしても、今後改善が見込まれ、さらに社員側にも働く意思があるにもかかわらず会社側が退職を勧めたとしたら不当な解雇だと言えます。
また無断欠勤や遅刻は論外ですが、治療のために仕事の時間を削る必要があったとしても、治療計画を提出し休職制度を利用しながら働くのは労働者の権利になりますので、解雇の理由として適当ではありません。
相談先としては、弁護士以外にも労働局や労働基準監督署などに設置されている「総合労働相談コーナー」があります。これらは解雇や不当な配置転換などについての相談窓口です。
なお会社を訴えた結果、かりに解雇が無効だと証明された場合も社員は元の会社に戻るのではなく金銭的な保証で決着をする、あるいは判決が出る前に和解で解決する場合が多いようです。
まずは、弁護士や労働局などに相談し解決への一歩を踏み出してください。
国立がん研究センター がん情報サービス がんと診断されたらはじめに見るQ&A第1章Q18https://ganjoho.jp/data/public/qa_links/brochure/cancer-work/cancer-work.pdf