手術数で分かる食道がんの名医がいる病院ランキングトップ10

食道がんと診断を受けたらどの病院で治療を受けるのか考えなければなりません。だれでも評判のいい病院で治療を受けたいと考えますが、いい病院はどうやって探せばいいのでしょうか?

食道はのどや胸、お腹にまたがる臓器で、治療方法によって担当する科が内科や外科、放射線科など異なる場合もあります。手術を行うにしてもどの範囲まで切除するのか、胸を開いて手術するのか胸腔鏡を使うのかといった手術方法も考えなければなりません。選択肢の多い食道がんの治療はやはり、食道がんを多く診ている病院で相談するのが安心です。

ここではDPCデータを基に食道がんの症例が多い病院や手術をたくさん行っている病院をランキングにしました。病院選びの参考にしていただければと思います。

目次

食道がんの手術が適応となる症例

食道がんは治療ガイドラインがあり、基本的には病気のひろがり具合によって治療方針が決まります。食道がんで手術適応となるのは基本ステージ0から3までです(ただし、全身状態や病変の部位により化学放射線療法が選択されることもあります)。

食道がん手術数トップ10

厚生労働省が集計し公表している平成30年度のDPCデータをもとに、食道がんに関連した手術件数の多い病院トップ10です。

DPCとは病名や治療ごとに決められた医療費の定額支払い制度で、大きな病院のほとんどがこのDPC制度を取り入れています。病院が医療費を請求する場合、主となる病名や行った治療などを報告しなければならないため、そのデータを分析することにより、どの病院でどんな病気の患者が多く治療を受けているかがわかります。

食道がん手術のデータ

食道がん全摘出術の多い病院

DPCデータでは通常の食道がん治療である「食道悪性腫瘍手術」「胸腔鏡下食道悪性腫瘍手術」「非開胸食道抜去術」のほかに「食道切除後2次的再建術」や「頚部郭清術」などの症例も含んでいます。

  1. 社会医療法人 恵佑会札幌病院(151例)
  2. 国立研究開発法人 国立がん研究センター東病院(150例)
  3. 国立研究開発法人 国立がん研究センター中央病院(138例)
  4. 昭和大学病院(110例)
  5. 公益財団法人 がん研究会 有明病院(110例)
  6. 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪国際がんセンター(93例)
  7. 大阪大学医学部附属病院(80例)
  8. 愛知県がんセンター(76例)
  9. 岡山大学病院(74例)
  10. 東海大学医学部付属病院(64例)

※数字は年間症例数

食道がん内視鏡的食道粘膜切除術等の多い病院

DPCデータでは胃カメラで病変を切除する「内視鏡的食道粘膜切除術」「食道腫瘍摘出術(内視鏡によるもの)」のほかに「内視鏡的表在性食道悪性腫瘍光線力学療法」「気管ステント留置術」「食道ステント留置術」「内視鏡的消化管止血術」などの症例も含んでいます。

  1. 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪国際がんセンター(299例)
  2. 国立研究開発法人 国立がん研究センター東病院(287例)
  3. 公益財団法人 がん研究会 有明病院(284例)
  4. 国立研究開発法人 国立がん研究センター中央病院(234例)
  5. 社会医療法人 恵佑会第2病院(215例)
  6. 静岡県立静岡がんセンター(190例)
  7. 東京都立駒込病院(128例)
  8. 神戸大学医学部附属病院(125例)
  9. 東京医科歯科大学医学部附属病院(117例)
  10. NTT東日本関東病院(117例)

※数字は年間症例数

食道がん症例数のデータ

食道がん(手術なし)の多い病院

DPCデータでは手術の有無で大分類されており、正確な薬物療法・放射線療法の症例数はわかりません。しかし食道がんで手術なしの症例数が多ければ、薬物療法・放射線療法の症例数が多いと推測されます。

  1. 国立研究開発法人 国立がん研究センター中央病院(629例)
  2. 国立研究開発法人 国立がん研究センター東病院(603例)
  3. 東京都立駒込病院(601例)
  4. 社会医療法人 恵佑会第2病院(575例)
  5. 愛知県がんセンター(504例)
  6. 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪国際がんセンター(465例)
  7. 昭和大学病院(424例)
  8. 静岡県立静岡がんセンター(412例)
  9. 神奈川県立がんセンター(410例)
  10. 公益財団法人 がん研究会 有明病院(363例)

※数字は年間症例数

参考データ

ランキングに出てきた病院のホームページを参考に内視鏡手術(内視鏡)、鏡視下手術(鏡視下)、縦隔鏡手術(縦隔鏡)、放射線治療(放射線)、光線力学療法(PDT)の5つの治療に対応しているかどうかを一覧にしました。(〇が対応しているもの、×は非対応もしくはホームページに記載のないもの)(五十音順)

愛知県がんセンター
〇内視鏡〇鏡視下〇縦隔鏡〇放射線×PDT

NTT東日本関東病院
〇内視鏡×鏡視下〇縦隔鏡〇放射線×PDT

大阪大学医学部附属病院
〇内視鏡〇鏡視下×縦隔鏡〇放射線×PDT

岡山大学病院
〇内視鏡〇鏡視下〇縦隔鏡〇放射線×PDT

神奈川県立がんセンター
〇内視鏡〇鏡視下×縦隔鏡〇放射線×PDT

公益財団法人 がん研究会 有明病院
〇内視鏡〇鏡視下×縦隔鏡〇放射線×PDT

神戸大学医学部附属病院
〇内視鏡〇鏡視下〇縦隔鏡〇放射線×PDT

国立研究開発法人 国立がん研究センター中央病院
〇内視鏡〇鏡視下〇縦隔鏡〇放射線×PDT

国立研究開発法人 国立がん研究センター東病院
〇内視鏡〇鏡視下〇縦隔鏡〇放射線〇PDT

静岡県立静岡がんセンター
〇内視鏡〇鏡視下×縦隔鏡〇放射線〇PDT

社会医療法人 恵佑会札幌病院
〇内視鏡〇鏡視下×縦隔鏡〇放射線〇PDT

社会医療法人 恵佑会第2病院
〇内視鏡〇鏡視下×縦隔鏡〇放射線〇PDT

昭和大学病院
〇内視鏡〇鏡視下×縦隔鏡〇放射線×PDT

東海大学医学部付属病院
〇内視鏡〇鏡視下×縦隔鏡〇放射線×PDT

東京医科歯科大学医学部附属病院
〇内視鏡〇鏡視下〇縦隔鏡〇放射線×PDT

東京都立駒込病院
〇内視鏡〇鏡視下×縦隔鏡〇放射線×PDT

地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪国際がんセンター
〇内視鏡〇鏡視下×縦隔鏡〇放射線〇PDT

手術数以外にも注目したいポイント

ここでは病院を選ぶ目安に手術数と患者数を取り上げましたが、そのほかにも病院を選ぶ目安がいくつかあります。病院によってはホームページなどで情報公開を行っていますが、ただ単に数字を比べるだけではなく、正しく納得のいく病院が選べるように、それぞれのデータについて正しい知識を得ましょう。

がん診療連携拠点病院

がんに関する専門的な医療を提供したり、地域内での連携協力体制を整備などを担う病院で、原則各都道府県に1つ指定されている「都道府県がん診療連携拠点病院」と、各地域で中心的な役割を果たす「地域がん診療連携拠点病院」があります。これらの病院は専門的な知識をもった医療者が所属し、病状に応じた病院間の連携を行ったり、緩和ケアの提供を行ったり、セカンドオピニオンに対応したりします。

食道がんと診断されたけれども、どの病院に受診したらいいかわからない場合は、がん診療連携拠点病院にある「がん相談支援センター」に相談することもできます。

治療開始までの期間

一般的に評判のいい病院は患者が集まり、場合によってはすぐに手術や入院ができないことがあります。
また食道がんは胸とお腹にまたがる手術になることもあり、消化器内科、胸部外科、腹部外科、放射線科など複数の科が連携して治療方針を決定したり、実際の治療を行うこともあるため、治療に入るまでに時間がかかることもあります。病院にこだわるばかりに治療のタイミングを逃すと診断されたステージよりも進んでしまうことがあるため注意が必要です。

治療に入るまでの期間を公表している病院の平均的な待ち時間は以下の通りです。

手術:3週間
内視鏡手術:3週間
化学療法(抗がん剤):2週間
放射線治療:1週間

検診のシーズンなどには患者が増え、待ち時間がさらに長くなる可能性があります。

各病院の5年生存率は良い病院の目安になるのか?

一部の病院ではその病院で治療をうけた患者の5年生存率が公表されています。5年生存率とは、食道がんになった人が治療を受け、5年後に生存している確率ということになるので、一般的には数字が大きいほうが良い病院に見えるかもしれません。しかし、この5年生存率にはからくりがあります。

例えば他の病院で「手術はできません」と言われた患者が、別の病院で「非常に厳しいですが、手術してみましょう」ということになった場合、その病院の5年生存率は低くなりがちです。評判の良い病院には他の病院で治療が難しいといわれた患者が紹介されて集まることも多く、結果、名医がいる病院であるにも関わらず5年生存率は他の病院の比較して厳しい結果になることがあります。あくまで5年生存率は目安と考えたほうが良いでしょう。

厚生労働省 平成30年度DPC導入の影響評価に係る調査「退院患者調査」の結果報告について
国立がん研究センター がん情報サービス | がん診療連携拠点病院
地方独立行政法人 神奈川県立病院機構 神奈川県立がんセンター 検査・治療待機期間
聖路加国際病院 がん種別治療待ち日数、入院日数の目安
参照日:2021年4月

春田 萌

日本内科学会総合内科専門医・日本消化器内視鏡学会専門医