食道がんのステージ別生存率と平均余命

食道がんの治療方針は各種検査から病気のひろがりを判断し、進行度(ステージ)を診断して決定します。がんと診断されると「私はあとどれだけ生きられるのだろう」と思われるかもしれません。この「あとどれだけ生きられるか」は”余命”といい、その病気の状態の人の50%が亡くなる時期を”平均余命”といいます。

この平均余命はがんであってもどの部分のがんかによって異なりますし、同じ食道がんであってもステージによって異なります。そして”平均余命”とはあくまで目安で、かなり幅があるものです。

病院の説明でよく使わるのは”平均余命”よりも”生存率”です。特に”5年生存率”はその病気の治療効果を比較するためによく使われます。簡単に表現すると5年生存率はその病気になった人が5年後生きている確率です。生存率が高い場合は治療効果が得られやすいがんと考えられます。食道がんの5年生存率はがんの中では低めな数字になっていますが、病気が発見されたときのステージが進んでいれば進んでいるほど5年生存率は下がるため、早期発見が重要です。

目次

食道がんの種類と進行度について

食道がんの種類

日本人の食道がんの約9割は扁平上皮がんで、残りの1割は腺がんです(そのほかに非常にまれなタイプの食道がんもあります)。

扁平上皮がん

もともと食道の内側の粘膜は扁平上皮という細胞でできています。そこから発生するのが扁平上皮がんです。扁平上皮がんは食道のどの部位からでも発生します。扁平上皮がんの発生は飲酒や喫煙と関連しています。

腺がん

主に胃に近い下部食道に発生します。なぜなら腺がんは食道胃逆流症から発生するバレット食道に現れやすいタイプだからです。バレット食道になりやすい人は胃酸の分泌が多くなりやすいヘリコバクターピロリ陰性の人、逆流の原因となりやすい肥満の人、そして食事内容が欧米化している人と考えられています。

食道がんの進行度(ステージ)

進行度とは食道がんの病気のひろがり具合を表します。食道がんのステージは0から4までがあります。さらにステージ4はaとbの2つに分けれます。一般的に数字が大きくなるにつれ病気のひろがり具合が進んでいることを表しています。

ステージを判断するためにはがんが食道の内側の粘膜から発生し食道の壁にどのくらい深く入り込んでいるか(がんの深達度)、周りのリンパ節のどの部分に転移しているのか(リンパ節転移)、そして食道から離れた臓器に転移しているかどうか(遠隔転移)で評価します。

日本では食道がんのステージ分類は日本食道学会が定めた「食道癌取り扱い規約」と海外で主に使用されている「UICC TMN分類」があります。この2つはリンパ節転移に対する評価が大きく異なっており、UICC TMN分類ではいくつのリンパ節に転移があるのか、食道癌取り扱い規約ではがんが発生した部位から転移しやすいリンパ節を4つのグループに分け、最初に転移しやすいリンパ節から1群、2群、3群、4群と呼び、どの群まで転移しているのかで評価しています。

ここでは「食道癌取り扱い規約」を紹介します。

遠隔転移がある場合はステージ4bとなります。
遠隔転移は無いものの、がん病変が食道の壁を突き抜けて大動脈や気管など手術で切除できない範囲までひろがっている場合、もしくは4群リンパ節まで転移がある場合がステージ4aです。

ステージ3は以下のいずれかに当てはまる場合です。

  • 3群リンパ節に転移がある場合
  • リンパ節転移が2群までで、がんが固有筋層もしくはそれ以上深い位置まで進んでいる
  • リンパ節転移が1群までで、がんが食道外膜もしくはそれ以上外まで進んでいる・リンパ節に転移はないが、がんが切除可能な食道周囲の臓器までひろがっている状態

ステージ1はリンパ節転移がなく、がんが粘膜下層までにとどまっている場合、ステージ2はステージ3とステージ1の間です。
ステージ0はリンパ節転移がなく、がんが粘膜内にとどまっている場合です。

食道がんのステージ別5年生存率

5年生存率とは

5年生存率は正式には5年相対生存率といいます。病気ごとの治療効果を表現するための数値で、性別や年齢の条件を同じにそろえた上で、交通事故などほかの事故や病気で亡くなる数を取り除き、食道がんのある人とない人の5年後の生存数を比較したものです。5年生存率が100%に近ければ近いほど治療効果の高い病気、0%に近ければ近いほど治療効果が出にくい病気ということになります。

がん全体の5年生存率は男性で62.0%、女性で66.9%、全体では64.1%でした(2009~2011年のデータ)。

食道がんの5年生存率はどのくらいあるか

2009~2011年の食道がんの5年生存率は男性で40.6%、女性で45.9%、男女合計では41.5%とがん全体と比較して低い数字になっています。ただしステージ別にすると病気が食道の中だけにとどまっている状態では5年生存率は80.4%まで高くなります。

手術を行うことができた症例に限ってみると、5年生存率はステージ1で約70%、ステージ2で約50%、ステージ3で30%、ステージ4で15%という報告もあります。

参考:https://www.gifu-hp.jp/esophageal_cancer/#point08

ステージ4の平均余命とは

平均余命とは同じ病気の人が100人いたとき、半分の50人が亡くなる時期を示します。100人の患者の生存期間をすべて足して人数で割った「平均」ではないことに注意が必要です。患者や家族にとっては平均余命はとても気になる数字ですが、がんに対する治療効果を判断するのは平均余命ではなく5年生存率です。平均余命はあくまで目安であり、かなり幅がある数字であることを知っておきましょう。

ステージ4の平均余命

食道がんステージ4の平均余命は九州大学病院のグラフによると約7カ月です。このデータは食道がん以外で死亡した人も含んでいます。手術を受けることができた人に限定するとステージ4の平均余命は約1年、ステージ3で約2年4カ月、ステージ1と2では7年以上と報告されています。

罹患数と死亡数の推移

罹患数の推移

国立がん研究センターの報告によると、1980年を基準とした場合1998年の罹患率は約2倍、2015年は約3.2倍と増加傾向にあります。将来の予測データでは今後も2039年までは食道がんの罹患率は増加していくと推測されています。

死亡数の推移

1958年には10万人あたりの死亡者数は3.6人でしたが、その後増加傾向にあり1996年には倍の7.3人、2006年には9.0人を超えました。しかしその後2018年までは9.1~9.5人の間を推移し、横ばいになっています。

食道がんの末期症状とケアに関して

食道がんの末期症状

食道がんの末期になると食べ物がつかえるようになり、さらに進行すると液体や唾液までも通らなくなります。結果口から栄養を摂ることが難しくなり、栄養不足や体重減少も見られるようになります。

病変が食道の壁を突き抜けて周囲の臓器に及ぶと、のどを動かす神経を傷つけて声がかすれるようになったり、気管に触って咳が出ることもあります。肺炎や胸に水が溜まることもあります。

転移先の症状が現れることもあります。骨に転移した場合は痛みが出たり、脳に転移した場合は麻痺が出ることもあります。

食道がん末期のケアについて

食道に対する処置 

食道で食べ物がつかえるようになった場合には、筒のような形をしたステントという管を病変部に入れて食べ物が通るようにしたり、別に食べ物の通り道を手術で作るバイパス術や、腹壁から胃に直接栄養の管をつける胃ろうといった方法を行うことがあります。

全身に対する処置

栄養状態が悪いときには中心静脈栄養や末梢点滴などで水分や栄養を補います。
痛みについてはほかのがんと同様に、医療用麻薬などを用いて痛みを取り除く治療が行われます。
そのほか精神的な不安が強い場合は、不安を和らげる薬を使うこともあります。

https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=13334
https://www.jfcr.or.jp/hospital/cancer/type/esophagus.html#:~:text=%E9%A3%9F%E9%81%93%E3%81%8C%E3%82%93%E3%81%AF%E9%A3%9F%E9%81%93,%E3%81%AF%E6%89%81%E5%B9%B3%E4%B8%8A%E7%9A%AE%E7%99%8C%E3%81%A7%E3%81%99%E3%80%82
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/dl/index.html#survival
https://www.gifu-hp.jp/esophageal_cancer/
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春田 萌

日本内科学会総合内科専門医・日本消化器内視鏡学会専門医