食道がんになりやすい人の特徴や原因リスクについて

食道がんは男性に多い疾患で、特に飲酒や喫煙により危険性が増えるということが分かっています。食道がんは初期症状がないことが多く、しかし早い段階から転移しやすい病気であり、さらに食道という臓器がのどから胸、お腹へとつながっている臓器であることから切除する場合は広範囲な手術になることもあります。

ここでは食道がんがどんな病気なのか、食道がんになりやすいのはどんな人なのか、そして食道がんの予防について紹介します。

目次

食道がんとは

食道とは

食道はのどと胃をつなぐ管状の臓器で、口から入った食事を胃に運ぶ役目をしています。食道の壁はとても薄く、内側から粘膜、粘膜下層、固有筋層、外膜の4層になっており、がんは粘膜から発生して外膜に向かってひろがっていきます。

食道は左右の肺の間にある縦隔(じゅうかく)という部分を通っていますが、縦隔にはそのほかに大動脈や気管など重要な臓器がある場所です。

食道がんの種類

食道がんは増殖する細胞の種類により分類されます。

扁平上皮がん

日本人では最も多くみられるタイプで、扁平上皮がんは約9割の食道がんを占めています。食道の内側の粘膜は扁平上皮でできており、そこから発生したがんです。扁平上皮がんの危険因子は飲酒やタバコ等があります。

腺がん

欧米では半数以上を占めるタイプですが、日本人での発症は1割程度です。しかし、日本人でも食事の欧米化や肥満の増加によって腺がんは増加傾向にあると報告されています。腺がんになりやすいのはバレット食道の人です。

食道がんの頻度

2017年にがんと診断された人の中で食道がんは男性の第7位(10万人あたり38.1人)、女性の第17位(10万人あたり7.5人)、全体では第11位(10万人あたり22.4人)でした。

また2018年がんで死亡した人の中で食道がんは男性の第7位(10万人あたり15.5人)、女性の第16位(10万人あたり3.1人)であり、全体では8位(10万人あたり9.1人)でした。

食道がんの主な原因とリスクファクター

アルコール

海外でもアルコールは食道がんの原因であると報告されていましたが、海外では日本と異なり腺がんタイプの食道がんが多いことや、アルコールの種類が異なることから、日本人でも同様にアルコールにより食道がんが発生しやすいかどうかの調査が行われました。

その結果、日本人においてもアルコールは食道がんの原因であると結論づけられ、飲酒者では飲まない人と比較して2.76倍食道がんになりやすいという報告もあります。アルコールの種類と食道がんの危険性については明らかにされていませんが、一般的に飲酒量が増えると食道がんになりやすい傾向がみられています。

タバコ

飲酒も喫煙もしない人の食道がんになる危険性を1とした場合、喫煙者では2.77倍食道がんになりやすいという結果が報告されました。

さらにアルコールとタバコ、両方たしなむ人ではさらに相乗効果により食道がんになりやすく、喫煙者でかつ飲酒者は、どちらもたしなまない人と比較して食道がんの発生率は8.32倍でした。

この報告から計算された結果では日本人男性の食道がんの81.4%は喫煙または飲酒が原因で発生しており、喫煙は55.4%、飲酒の61.2%が食道がんの原因とされています。言い換えると日本人男性の食道がんの80%は禁煙と禁酒により予防が可能ということです。禁酒だけでも約60%、禁煙だけでも約55%の食道がんが予防できると推測されています。

熱い飲食物

海外で熱いお茶を飲む習慣がある地域に食道がんの発生率が高いことから、熱い飲み物や食べ物も食道がんの危険因子であると考えられています。

1日に60℃以上の熱いお茶を700ml以上飲む人は食道扁平上皮がんになる危険性が90%増加するという報告もあります。この調査ではお茶の好みを聞いたところ、「とても熱い」お茶が好きな人は、「冷たい、もしくはぬるい」お茶が好きな人と比較して2.4倍食道扁平上皮がんになりやすかった、と報告されています。

食道には熱さを感じる神経が少ないので、熱いものを飲み込んでも食道で痛みを感じることは少ないですが、熱による粘膜の障害ががんを発生するきっかけになると考えられています。

食道がんになりやすい人の特徴

食道がんは40歳を過ぎると発症者数がだんだんと増え、ピークは男女ともに75-79歳です。ピーク時の性差を見てみると、男性の罹患は10万人あたり146.2人、女性は21.2人と約6.9倍の違いがあります。この性差はただ単に性別の違いだけではなく、男性は喫煙者やアルコールを飲む人が多いことも影響していると考えられます。

逆流性食道炎と食道がんの関連性

逆流性食道炎は消化液である胃液や十二指腸液が食道に逆流して食道粘膜に炎症を起こした状態です。逆流性食道炎になれば胸やけや胸痛、ゲップや口の中が酸っぱくなるといった症状が出ることもありますが、全く無症状で胃カメラの検査で逆流性食道炎を指摘される場合もあります。

逆流性食道炎の状態が長く続くと、炎症を起こした部位にバレット上皮という細胞が出現することがあります。そもそも胃酸や十二指腸液は消化液であり、胃や十二指腸の壁はその消化液に耐えられるようにできていますが、食道はその機能がありません。そのため消化液によって炎症が起きてしまうのです。その状態が長く続くと、体は防御反応として、食道に胃に似た細胞を発生させます。これがバレット上皮です。

バレット上皮は消化液にさらされやすい胃と食道のつなぎ目に発生し、その範囲が長さ3㎝以上になるとバレット食道と診断します。バレット食道からは腺がんタイプの食道がんが発生しやすいと考えられていますが、一旦バレット食道と診断されるとバレット食道を治療する薬は無いので、がんが発生していないか定期的に内視鏡検査をうけるしかありません。

海外のデータではバレット食道の人に定期的に胃カメラを行って経過を見たところ、年間1000人あたり1.2~2.9人の食道がん発生が見つかったという報告もあります。そのため、統一した見解はないものの、バレット食道と診断された人は1年に1~2回の胃カメラによる検査が勧められています。

本来バレット食道に発生しやすい食道腺がんは日本でも食事の欧米化や肥満の増加、胃酸を減らすヘリコバクターピロリの感染率減少に伴い増加すると推測されています。

予防と早期発見のコツ

食道がんの予防

食道がんの危険性を下げるには禁煙と禁酒が重要です。また、熱いものを好んで飲んだり食べたりする人はさましてから飲食するようにしましょう。

また、腺がんタイプの食道がんも増加傾向にあります。逆流性食道炎があると診断されている人や、逆流性食道炎になりやすいと言われている洋食の好きな人、肥満の人は食事の内容を見直したりダイエットに取り組みましょう。

早期発見のためには

食道がんを見つけるために勧められる検査は胃カメラ(内視鏡検査)です。胃カメラではバリウム検査で見つけにくい平らなタイプの食道がんも見つかりやすくなります。

食道がんは初期には症状がないことが多いため、自覚症状がないからといって安心してはいけません。

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https://www.jstage.jst.go.jp/article/gee/59/1/59_70/_html/-char/ja
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春田 萌

日本内科学会総合内科専門医・日本消化器内視鏡学会専門医