ベージニオが適応となるがんの種類と治療効果・副作用一覧

ベージニオは、乳がんの患者さんに対してホルモン治療薬と併用して投与される抗がん剤で、ホルモン治療薬と併用することでより高い治療効果を示すことが証明されています。

ベージニオは「CDK4/6」という酵素を標的としていますが、CDK4/6阻害薬自体が最近開発された薬剤の為、乳がんの患者さんの治療において今非常に期待されている薬剤なのです。

このページでは、抗がん剤「ベージニオ」について詳しく解説していきますので、治療を検討されている方はぜひご覧ください。

目次

ベージニオ(一般名:アベマシクリブ)とは

ベージニオはイーライリリー社が開発した薬剤で、2017年に米国で承認されてから約30か国で承認され使用されており、日本においては2018年に承認されています。ベージニオの国際誕生年(2017年の米国での誕生)が直近ですので、現在世界で承認申請中の国が多数あり、今後承認国が増加していくことが予想されます。

ベージニオが適応となるがんの種類

ベージニオは「進行・再発乳がん」に適応を持つ抗がん剤で、経口投与で治療を行う錠剤となっています。

ベージニオはフェソロデックスやフェマーラ、アリミデックスなどのホルモン治療薬と併用して治療を行い、投与方法は1日2回150㎎を服用します。飲み忘れに気づいた場合は2回分を一度に飲むことは避け、1回飛ばして次の決められた時間に服用するようにしましょう。

効能効果、及び用法用量に関連する使用上の注意

・ベージニオは手術補助療法としての有効性と安全性は確立していません。

手術補助療法には「術後補助化学療法」と「術前補助化学療法」があります。術後補助化学療法とは、手術によるがん細胞摘出後に体内に残っているかもしれない微小ながん細胞を完全に排除することを目的として、また、再発のリスクを下げるために術後一定期間抗がん剤が投与される治療法です。術前補助化学療法とは、乳房温存手術を目的として手術前に抗がん剤を投与する治療方法です。

ベージニオに期待される治療効果

ベージニオは、がん細胞に特異的に発現している因子を標的とし、効率の良い治療が期待できる「分子標的薬」というグループに属する抗がん剤です。

ベージニオが標的とする「CDK4/6」は1つの細胞が2つに分裂して増殖していく細胞周期に関わっており、細胞周期の制御を不能に陥らせるためがん細胞が無制限に増殖してしまうという特徴を持っています。

ベージニオはこのCDK4/6を阻害しますので、がん細胞の増殖を抑制し乳がんの治療成績向上に寄与する薬剤なのです。

尚、同じ作用機序を持つ薬剤には「イブランス」という抗がん剤があり、ベージニオと同じようにホルモン治療薬と併用して乳がんの患者さんの治療に用いられます。

ベージニオの効果は、ホルモン治療薬との併用で治療成績が向上することが証明されています。日本人を含む国際共同臨床試験においてベージニオとフェソロデックス(一般名:フルベストラント)との併用が検証されており、治療開始よりがんの増悪がなく生存した期間を示す「無増悪生存期間」は16.4か月という結果が示されています。比較対照群に設定されたプラセボ群(疑似薬で有効性が含まれていないもの)は9.3か月であり、ベージニオの群が優位であったことが証明されています。

主な副作用と発現時期

通常分子標的薬は標的とされる因子に作用するため、化学療法でみられるような重い副作用の発現頻度が低いとされています。しかし、ベージニオは細胞周期に作用する薬剤ですので、化学療法で用いられる殺細胞性抗がん剤と同じような副作用が現れる事が報告されています。副作用の発現頻度も低くないため、事前に主な副作用の内容をしっかり確認しておきましょう。

主な副作用

進行・再発乳がんの患者さん441例を対象とした、日本人を含む国際共同治験で報告された主な副作用は以下の通りとなります。

  • 下痢:86.4%
  • 好中球減少症:46.0%
  • 悪心:45.1%
  • 感染症:42.6%
  • 疲労:39.9%

ベージニオの安全性と使用上の注意

ベージニオを使用するにあたり、事前に知っておくべき事と使用上の注意をまとめましたので参考にしてください。

治療出来ない患者さん

・ベージニオの成分に対して過敏症の既往をお持ちの患者さん:再度使用することで、重い過敏症を発症する可能性がありますので使用することができません。

重要な基本的注意

  • ALT(GPT)増加、AST(GOT)増加などを伴う肝機能障害が現れる事がありますので、ベージニオの投与開始前から投与中は定期的に肝機能検査が行われます。
  • 間質性肺疾患が現れる事がありますので、呼吸困難や咳嗽(がいそう)、発熱などの初期症状が現れたら速やかに医療機関を受診しなければなりません。
  • 骨髄抑制が現れる事がありますので、ベージニオの投与開始前と投与中は定期的に血液検査を行い、臨床検査値の変動に注意しなければなりません

使用上の注意

  • 重度の肝機能障害をお持ちの患者さん:ベージニオの代謝が遅れ、血中濃度が上昇する可能性があります。血中濃度の上昇により副作用の発現や、副作用が重症化する場合もありますので注意が必要です。
  • 間質性肺疾患のある患者さん、またはその既往をお持ちの患者さん:間質性肺疾患が増悪する可能性があります。
  • 高齢の患者さん:一般に高齢の方では生理機能が低下していますので、慎重に投与されます。
  • 妊婦、産婦、授乳婦の患者さん:ベージニオの妊娠中の治療に関しては安全性が確立していませんので原則投与は避けられますが、やむを得ない場合は治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合に投与されます。また、動物実験で催奇形性が認められていますので、妊娠する可能性のある女性の患者さんは治療中及び最終投与後一定期間は適切な避妊を行う必要があります。
  • ベージニオの乳汁中の移行は不明ですが、授乳中の患者さんは治療中授乳を中止しなければなりません。
  • 小児等の患者さん:小児等の患者さんに対する使用経験がありませんので、安全性は確立されていません。

ベージニオは新しい作用機序の薬剤で、同じ作用機序を持つイブランスに引き続いて直近で発売が開始された新薬となります。この2つの薬剤は同じ作用を示しますが、用法用量が異なり副作用の現れ方も全く同じではありませんので、治療前は使用する薬剤の特性を十分に理解する必要があります。

特に新薬は十分な副作用データが集まっていない場合が多く、未知の副作用というリスクも潜んでいますので、ご自身の体調に少しでも変化を感じる場合にはすぐに主治医の先生に報告するようにしましょう。

最後に、これからベージニオの治療を検討されている方や、現在治療中の患者さんにとってもこの記事が参考になれば幸いです。

ベージニオ添付文書
http://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/530471_4291054F1026_1_04
ベージニオインタビューフォーム
http://www.info.pmda.go.jp/go/interview/1/530471_4291054F1026_4_1F.pdf
ベージニオ患者向医薬品ガイド
http://www.info.pmda.go.jp/downfiles/ph/GUI/530471_4291054F1026_2_00G.pdf
乳がんNCCNガイドライン
https://www2.tri-kobe.org/nccn/guideline/breast/japanese/breast.pdf

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薬剤師

将来に迷っていた高校生の頃に身内が数人がんで亡くなる経験をしたことで、延命ではなく治癒できる抗がん剤を開発したいと考えるようになり、薬剤師を目指しました。
大学卒業後は製薬メーカーに薬剤師として勤務し、抗がん剤などの薬剤開発に約18年携わって参りました。
現在は、子育てをしながら医療系の執筆を中心に活動しており、今までの経験を生かして薬剤の正しい、新しい情報が患者様に届くように執筆しております

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