精巣がんはほぼ全例が手術を行うにも関わらず、全体の症例数が少ないことから、最も手術を行っている病院でも年間手術数は20例未満です(平成30年のデータ)。そのため、手術を行っている病院が少なく、精巣がんの治療が可能な病院探しは難しいかもしれません。
基本的に精巣がんは「泌尿器科」の病気であり、どこの泌尿器科に受診しても診断は可能ですが、治療では病院が限られます。
どの病院で治療を受けるか迷った場合、その病院では精巣がんの手術をどのくらいおこなっているかという情報は1つの参考になります。精巣がんの患者が多い病院は経験値の高い医者が集まりやすいからです。ここではDPCデータをもとに、精巣がんの手術件数が多い病院をランキングで表しました。その他に病院選びの際に注目すべきポイントも紹介しています。病院選びの参考にしていただければと思います。
目次
精巣がんの手術が適応となる症例
基本的に精巣がんの可能性があれば、すべての症例に対して「高位精巣摘除術」により精巣や精索を切除します。病気のひろがりによっては後腹膜リンパ節郭清術、転移巣切除術が追加されます。
精巣腫瘍手術数トップ10
厚生労働省が集計し公表している平成30年度のDPCデータをもとに、精巣腫瘍に関連した手術件数の多い病院をランキングにしました。
DPCとは病名や治療ごとに決められた医療費の定額支払い制度で、大きな病院のほとんどがこのDPC制度を取り入れています。病院が医療費を請求する場合、主となる病名や行った治療などを報告しなければならないため、そのデータを分析することにより、どの病院でどんな病気の患者が多く治療を受けているかがわかります。
精巣腫瘍手術のデータ
精巣腫瘍手術の多い病院:数字は年間症例数
- 日本医科大学付属病院(19例)
- 東北大学病院(16例)
- 東京慈恵会医科大学附属病院(13例)
- 杏林大学医学部付属病院(13例)
- 岡山大学病院(13例)
- 千葉県がんセンター(13例)
- 東京慈恵会医科大学附属柏病院(13例)
- 公益財団法人 がん研究会 有明病院(13例)
- 日本赤十字社東京都支部 武蔵野赤十字病院(13例)
- 愛知県厚生農業協同組合連合会 安城更生病院(13例)
精巣腫瘍は症例数が少ないため、精巣腫瘍の手術を行っている病院は少なく、各都道府県内に1つもない場合もあります。上記のランキングベスト10に入っていない都道府県で、精巣腫瘍の手術を行っている病院(複数ある場合は症例数の多い病院)は以下の通りです。
栃木県
獨協医科大学病院(12例)
神奈川県
公立大学法人 横浜市立大学附属市民総合医療センター(12例)
福岡県
医療法人 原三信病院(12例)
群馬県
国立大学法人群馬大学医学部附属病院(11例)
伊勢崎市民病院(11例)
京都府
国立大学法人京都大学医学部附属病院(10例)
大阪府
地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪国際がんセンター(10例)
北海道
社会福祉法人 函館厚生院 函館五稜郭病院(10例)
兵庫県
神戸大学医学部附属国際がん医療・研究センター(10例)
手術数以外にも注目したいポイント
手術までの待機時間
精巣がんは進行が早いため、多くの病院では診断後1週間以内に根治的高位精巣摘除術が行われています。精巣がんは進行がはやいことや、手術をして細胞のタイプなどを診断して、はじめて予後やその後の治療を決めるため、できるだけ早く手術できることが重要です。
各病院がホームページ上で公開されている治療までの待機時間の目安です。
手術:1-4週間
薬物療法:1-3週間
放射線治療は可能か
精巣がんの治療では放射線治療も重要な役割を担います。しかし、放射線治療はすべての病院で整っている設備ではなく、放射線治療のない病院で治療を開始した場合、途中で病院を転院しなければならなくなるかもしれません。そのため、可能であれば最初から放射線治療に対応している病院で治療が開始できるとよいでしょう。
がん診療連携拠点病院
がんに関する専門的な医療を提供したり、地域内での連携協力体制の整備などを担う病院で、原則各都道府県に1つ指定されている「都道府県がん診療連携拠点病院」と、各地域で中心的な役割を果たす「地域がん診療連携拠点病院」があります。これらの病院は専門的な知識をもった医療者が所属し、病状に応じた病院間の連携を行ったり、緩和ケアの提供を行ったり、セカンドオピニオンに対応したりします。
精巣がんと診断されたけれども、どの病院に受診したらいいかわからない場合は、がん診療連携拠点病院にある「がん相談支援センター」に相談することもできます。
平成30年度DPC導入の影響評価に係る調査「退院患者調査」の結果報告について
がん研有明病院 | 精巣がん
参照日:2021年4月