精巣がんの初期症状と検査方法、検診に掛かる費用とは

多くの精巣がんは初期症状として精巣の腫大がみられます。がんになれば痛みが出てくるだろうと思いがちですが、精巣がんでは痛みがないほうが一般的であり、注意が必要です。

精巣がんが疑われれば確定診断を兼ねてできるだけ早く手術を行います。そのほかに病気のひろがりを診断する画像検査や予後を判断するための腫瘍マーカーを測定します。

精巣がんは発症する年齢が他のがんと比較して若いため、精巣がんを見つけるための検診や人間ドックはほとんど行われていません。これは言い換えると早期発見のためには自分自身で気をつける必要がある、ということです。ここではどのような時に精巣がんを疑って受診すべきか、そして精巣がんが疑われた場合どのような検査が行われるのかについて紹介します。

目次

精巣がんの主な初期症状

精巣がんの主訴で最も多いのは無痛性陰嚢内腫瘤で約70%です。その他に初期の症状として多いものには下腹部の鈍痛(30-40%)や急性の精巣痛(10%)があります。

進行すると腫瘍が産生するホルモンの影響で乳首の痛みや腫れがおきたり、転移先特有の症状が現れます。

精巣がんの自己診断チェック

多くの精巣がんは陰嚢にしこりが触れまず。陰嚢にしこりがあってもすべてが精巣がんとは限りませんが、精巣がんであった場合は他のがんと同様に早期に受診することで治療の選択肢がひろがり、予後も良好です。
以下に記載した多くの項目に当てはまる場合は、早期の検診や病院受診をお勧めします。

  • 陰嚢が腫れている
  • 陰嚢に硬いところがある
  • 左右の精巣の大きさが違う
  • 停留精巣がある(あった)
  • 胎児の間に母親に女性ホルモンが投与された
  • 低出生体重児で生まれた
  • 早産で生まれた
  • 父親や兄弟に精巣がんの人がいる
  • 精巣をぶつけたり、精巣炎になったことがある
  • 男性不妊と診断されている

検診と検査項目

精巣がんは他のがんと比較して患者数が少ないことや発症時期が若い世代であることから、住民を対象とした検診がありません。精巣がんの好発年齢は人間ドックを勧められる世代よりも若い年代であるため、人間ドックでも精巣がんを発見するための診察や検査を行うところはほとんどありません。

精巣がんは進行が早く転移しやすいので、ほかの検査で異常が見つかり、精密検査をおこなったところ精巣がんが見つかるということがあります。

精巣がんの疑いから確定診断まで

ファーストステップ(精巣がんの可能性があるかどうかを見る検査)

視触診

医師が直接陰嚢を目で見て、左右の大きさや表面の皮膚の変化などを確認します。その後左右の陰嚢に触れて、精巣の重さや硬さを確認します。

精巣エコー

陰嚢にゼリーを塗って機械をあてて中の様子を観察します。精巣の大きさや形、中の様子のほかに精巣周囲の精巣上体や精巣に栄養を送る血管などをみることができます。

腫瘍マーカー 

精巣がんが疑われたときに血液検査で調べるのはAFP、hCG-β(もしくはhCG)、LDHです。精巣がんであっても3項目すべてが正常値ということもあり診断には補助的に行われる検査ですが、数値がどの程度上がっているかと治しやすさには関連性が見られます。また治療により数字が低下するかどうかによって治療効果を判定することも可能です。

  • AFP:胎児性がんや卵黄嚢腫で増加することがある
  • hCG-β(もしくはhCG):セミノーマや絨毛がんで増加することがある
  • LDH:セミノーマで増加することがある(奇形腫に特異的なマーカーは存在しない)

hCGは胎盤で作られるホルモンで、hCG-αとhCG-βがくっついてできています。一部のhCG-βはhCG-αとくっつかずに単体で存在しフリーhCG-βと呼ばれます。

hCGは通常妊娠中の血液にしか現れませんが、精巣腫瘍や肺がん、胃がんの一部にはhCGを産生する腫瘍があり、これらは異所性hCG産生腫瘍と呼ばれています。

hCGの検査には以下の3通りがあります。

  • hCG:hCGだけを測定する
  • hCG-β:hCGとfree hCG-βの両方を測定する
  • free hCG-β:フリーhCG-βだけを測定する

約10%のセミノーマではhCGではなくhCG-βだけを産生するものもあるため、できればhCGでなくhCG-βを測定するのが理想的です。

セカンドステップ(精巣がんかどうか確定診断する検査)

細胞診・組織診 

精巣がんが疑われれば、手術により病気側の精巣を摘出します。これは治療と病理検査を兼ねた処置です。精巣がんは転移しやすいがんのため、がんが疑われる精巣の一部だけを切り取る方法は行わず、精巣は丸ごと精索もつけて切除します。この検査により画像検査では判断できないセミノーマか非セミノーマかを判断することができます。

サードステップ(精巣がんのひろがり具合を見る検査)

転移の可能性がある場合は、各種の画像検査を行って、病変のひろがりをチェックします。

腹部超音波検査(エコー検査)

空腹状態でお腹にゼリーを塗り、機械をあててお腹の中の状態を見ます。放射線を使用せず行うことができる点が利点ですが、お腹にガスがたまったりしているとうまく見えないこともあります。そのほかに検査を行う人の技能により検査の正確度が異なる、検査の記録が一部しかできないため客観性に劣る、といった点がデメリットとしてあります。

単純/造影CT検査

放射線を用いた検査です。頭部、胸部、腹部など転移の可能性がある部位を撮影します。血管や病変を見やすくするために血管から造影剤を注入する造影CTが行われることもあります。

単純/造影MRI

磁気を用いた検査です。検査部位は状況により頭部、胸部、腹部などに対して行います。場合によっては血管を見やすくするために造影剤を用いた造影MRIが行われることもあります。

超音波・CT・MRIは見やすい臓器が異なるので、同じ部位に複数の検査を行うこともあります。

PET検査

がん細胞が取り込みやすい物質に放射線物質をくっつけた検査薬を体内に注射して、その分布を調べる検査です。全身を一度に調べることができます。糖尿病で血糖値のコントロールが不安定な人はこの検査で正しい結果が出ないことがあります。

骨シンチグラフィ

放射性物質を注射し、骨への取り込み具合を撮影して、骨への転移の有無を調べます。

検診にかかる平均費用

基本的に精巣がんを疑って行われる検査はすべて保険診療で受けることができます。

保険適応で受ける検査(目安)

  • 精巣エコー検査 3割負担 1600円、1割負担 530円
  • 腫瘍マーカー
    AFP 3割負担300円、1割負担100円
    βhCG 3割負担450円、1割負担150円
    LDH 3割負担30円、1割負担10円
  • 精巣摘出術(入院費込み) 3割負担260000円、1割負担60000円
  • 腹部エコー検査 3割負担 1600円、1割負担 530円
  • 単純CT検査(1部位) 3割負担 4000円、1割負担 1500円
  • 造影CT検査(1部位) 3割負担 9000円、1割負担 3000円
  • 単純MRI検査(1部位) 3割負担 9000円、1割負担 3000円
  • 造影MRI検査(1部位) 3割負担 16000円、1割負担 5000円
  • PET検査 3割負担 30000円、1割負担 10000円
  • 骨シンチグラフィ 3割負担 17000円、1割負担 6000円

https://osaka.hosp.go.jp/cancer/cancer-type/seisousyuyou/index.html
https://www.jfcr.or.jp/hospital/cancer/type/spremary.html
https://www.med.nihon-u.ac.jp/department/urology/static_main/disease/disease_007.html
https://www.diagnostics.jp.tosohbioscience.com/immunoassay/aia-reagents/a-z/h/hcg/hcg_bhcg
http://www.tmch.or.jp/hosp/examination/hospitalization/expenses.html
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春田 萌

日本内科学会総合内科専門医・日本消化器内視鏡学会専門医