精巣がんのステージ別生存率と平均余命

精巣がんの特徴の1つは他のがんと比較して若い世代に発症しやすいことです。15~39歳はAYA世代とよばれ、この世代の代表的ながんである精巣がんの治療は、ただ単に病気を治すだけでなく、仕事や学業との両立、将来子供を持つための準備などを行いながら行う必要があります。

精巣がんと診断されるとその予後は気になるかもしれません。精巣がんは大きくセミノーマと非セミノーマに分類されます。この腫瘍の種類と病気のひろがり具合を示すステージや腫瘍マーカーの数値により5年生存率といった予後を推測することができます。5年生存率はがんの治療効果を比較するために使われる目安で、その病気になった人が5年後に生きている確率です。生存率が高い場合は治療効果が得られやすいがんと考えられます。
精巣がんは症例数が少ないため大規模なデータはありませんが、近年では効果の高い抗がん剤が判明し予後は改善してきています。

目次

精巣がんの種類と進行度について

精巣腫瘍の種類

精巣にできる腫瘍の95%は胚細胞腫瘍で、胚細胞腫瘍はさらに約7割のセミノーマとその他の非セミノーマに分類されます。非セミノーマは胎児性がん、奇形腫、絨毛がん、卵黄嚢腫瘍があります。非セミノーマのうち奇形腫だけが良性腫瘍です。
胚細胞腫瘍以外の精巣腫瘍には悪性リンパ腫や肉腫などがあります。

精巣がんの進行度(ステージ)

進行度とはがんのひろがり具合を表します。精巣がんのステージは1から3までがあり、一般的に数字が大きくなるにつれ病気のひろがり具合が広いことを表しています。さらにステージ2は2段階、ステージ3は5段階に分けられています。

ステージ 1

転移がない状態

ステージ 2

横隔膜(胸とお腹の間にある膜)より下のリンパ節だけに転移がある

2A 後腹膜の転移巣が5cm未満
2B 後腹膜の転移巣が5cm以上

ステージ3

遠隔転移あり

30 腫瘍マーカーが陽性だがどこに転移しているかわからない状態
3A 横隔膜より上のリンパ節に転移がある
3B 肺に転移がある
3B1 片方の肺にある転移が4個以下で、かつ2cm未満
3B2 片方の肺にある転移が5個以上、または2cm以上
3C 肺以外の臓器に転移がある

国際胚細胞腫瘍予後分類

画像所見と腫瘍マーカーの数値から予後を予測して治療方針を決定するための国際胚細胞腫瘍予後分類(IGCCC)があります。

セミノーマの場合

予後良好
肺以外に転移がなく、AFPが正常範囲内

予後中程度
 肺以外に転移があるが、AFPは正常範囲内
(セミノーマには予後不良に該当するものはない)

非セミノーマの場合

予後良好
肺以外に転移がなく、AFP<1000ng/ml、hCG<5000IU/L、LDH<正常上限の1.5倍のすべてを満たす。

予後中程度
肺以外に転移がなく、1000ng/ml≦AFP≦10000ng/mlまたは5000IU/L≦hCG≦50000IU/Lまたは正常上限の1.5倍≦LDH≦正常上限の10倍である。

予後不良
 肺以外に転移があるか、10000ng/ml<AFPまたは50000IU/L<hCGまたは正常上限の10倍<LDH。

精巣がんのステージ別5年生存率

5年生存率とは

5年生存率は正式には5年相対生存率といいます。病気ごとの治療効果を表現するための数値で、性別や年齢の条件を同じにそろえた上で、交通事故などほかの事故や病気で亡くなる数を取り除き、精巣がんのある人とない人の5年後の生存数を比較したものです。5年生存率が100%に近ければ近いほど治療効果の高い病気、0%に近ければ近いほど治療効果が出にくい病気ということになります。

がん全体の5年生存率は男性で62.0%、女性で66.9%、全体では64.1%でした(2009~2011年のデータ)。

精巣がんの5年生存率はどのくらいあるか

ステージ別の5年生存率ではステージ1が99%、ステージ2が95.2%、ステージ3が75.1%という報告があります。セミノーマのIGCCC別では予後良好86%、予後中程度72%、非セミノーマではIGCCC別に予後良好94~96.5%、予後中程度82.7~83%、予後不良68~71%と報告されています。

罹患数の推移

罹患数の推移

精巣腫瘍は症例数が少ないことから大規模なデータがありません。ある県の報告では調査が開始された1973年から1995年までは緩やかに罹患数が増えているものの、1995年以降はほぼ横ばいの数字となっています。

組織型としては1995年まではセミノーマが増加していますが、1995年以降は混合型やリンパ腫が増加傾向にあります。

AYA(あや)世代とは

がんを発症した年齢で分類した場合0~14歳で多く発症する病気を「小児がん」、40歳以上で発症するがんを「成人がん」とよびます。そしてその間の15~39歳を「Adolescent & Young Adult(思春期と若年成人)」の頭文字をとってAYA世代と呼びます。この世代で多いがんには白血病や精巣腫瘍、骨腫瘍、脳腫瘍などがあります。

AYA世代のがんはただ単にがんの治療を行うだけではなく、学校や仕事との両立、結婚や出産・子育てを考えながら治療をしていくことが必要になります。

精巣がんの末期症状とケアに関して

全身に対する処置

痛みについてはほかのがんと同様に、医療用麻薬などを用いて痛みを取り除く治療が行われます。

食欲不振や吐き気についてはその症状を和らげる薬が使われます。
栄養状態が悪いときには点滴で栄養を補うこともあります。
そのほか精神的な不安が強い場合は、不安を和らげる薬を使うこともあります。

日本泌尿器科学会、日本病理学会編「泌尿器・病理・精巣腫瘍取扱い規約2005年3月【第3版】」(金原出版)
ライフライン21 がんの先進医療 蕗書房 | 精巣がん
Mindsガイドラインライブラリ | 精巣腫瘍診療ガイドライン 2015年版
がん研有明病院 | 精巣がん
グラフで見る1973~2007年の精巣腫瘍 | 広島県腫瘍登録における精巣腫瘍の解析
がんの先進医療|蕗書房 | 精巣がん
国立がん研究センター中央病院 | AYA世代のがんについて
参照日:2021年4月

春田 萌

日本内科学会総合内科専門医・日本消化器内視鏡学会専門医